【3月21日 AFP】人間の鼻は少なくとも1兆種類のにおいを嗅ぎ分けることができるとの研究が、20日の米科学誌サイエンス(Science)に掲載された。これまで考えられていたよりもはるかに多かったという。

 長年にわたって科学者たちは、人間の鼻は1万種類程度しか嗅ぎ分けることができないと考えてきた。

 論文の共著者で米ロックフェラー大学(Rockefeller University)神経遺伝・行動学研究室のレスリー・ボシャール(Leslie Vosshall)氏は「われわれの分析は、においを嗅ぎ分ける人間の能力がこれまでに誰もが予期していたよりもはるかに高いことを示している」と述べた。

 前回同様の研究が行われたのは1920年代で、データの裏付けもなかった。

■「最低1兆種類、現実にはもっと多い」

 研究チームは128種類のにおい分子から作った混合物(ただし最高で混ぜ合わせたのは30種類)のにおいを実験参加者26人に嗅ぎ分けてもらった。

「はっきり認識できるようなにおいにしたくなかったので、混合物(のにおい)はどれもかなり不快で奇妙なものだった」と、ボシャール氏は語った。

 実験参加者たちは、3つの小瓶に入れられたにおいをそれぞれ嗅ぎ、1つだけ異なるにおいが入れられた瓶を当てなければならない。参加者たちはこのにおいの嗅ぎ分けを264回行った。

 研究チームは実験の成否の結果を基に、128種類のにおい分子から作ることが可能な全ての組み合わせで実験した場合、平均的な人間が嗅ぎ分けることができたにおいは何種類になるかを推測し、「最低で1兆種類」という結論を導き出した。

 研究責任者でロックフェラー大のアンドレアス・ケラー(Andreas Keller)氏は、現実世界では数え切れない方法でさらに多くのにおいが混ぜ合わさっていることを考えると、この1兆種類という数字でも人間の嗅ぎ分けられるにおいの数としては間違いなく少ないだろうと述べた。(c)AFP/Jean-Louis SANTINI