【3月10日 AFP】将来アルツハイマー病を発症するかどうかを予測する血液検査の試験版を開発したと、米研究チームが9日の英医学誌「ネイチャー・メディスン(Nature Medicine)」に発表した。血中内の脂質を「バイオマーカー」とする初の検査方法で、現在健康な人が3年以内にアルツハイマー病を発症するか否かを90%の精度で予見できるという。

 アルツハイマー型認知症は、脳細胞を破壊する有害なタンパク質によって引き起こされる。現在は治療法がなく、致命的な変性疾患だ。世界保健機関(WHO)によると患者は世界で約3500万人に上り、2050年までに1億1500万人に達すると予想されている。

 米ジョージタウン大学メディカルセンター(Georgetown University Medical Center)のハワード・フェデロフ(Howard Federoff)教授(神経学)は声明で、新たな血液検査法はアルツハイマー病リスクのある人を特定し、患者本人や家族、医師らの治療計画策定や病気への対処方法を変える可能性を秘めていると説明した。治療そのものにも効果をもたらし得るという。

 フェデロフ氏は、アルツハイマー病治療薬を開発する試みがこれまで成功していないのは、症状がかなり進行してしまってから試験薬が使われていたからではないかと指摘。もっと早期から病気を追跡していれば、同じ治療でも進行を阻止・逆行できるかもしれないと述べている。

 今回、研究チームは70歳以上の健康な高齢者525人の血液を採取。3年後、初期のアルツハイマー病または健忘型軽度認知機能障害(aMCI)の症状を発症した53人について、血液サンプルを健康な53人の血液サンプルと比較した。その結果、アルツハイマー病の兆候となる脳細胞膜の代謝残留物とみられる10種類の脂質を突き止めたという。(c)AFP