【9月28日 AFP】マダガスカル(Madagascar)沖でイルカの一種、カズハゴンドウ75頭が死んだ原因はおそらく、海面下で不快な高周波音を放つ、石油探査の海洋マッピング技術だったとする報告書が26日、国際捕鯨委員会(International Whaling CommissionIWC)から発表された。

 科学者5人から成る独立調査団が明らかにしたところによると、米石油大手エクソンモービル(ExxonMobil)が2008年5月末に実施したソナー(音波探知機)調査により、カズハゴンドウ約100頭が突然、同海域から追われ、そのうち少なくとも4分の3が死んだという。

 IWCの報告書は「比較的高周波のマッピングソナーシステムと密接に関連する海洋哺乳類の集団座礁事件は、知られている限りこれが初めてだ。(だが、)これ以前の同様の事件は、詳細な調査が行われなかったために発覚してこなかった可能性がある」と指摘している。

■MBESの使用が引き金で潟湖に進入か

 2008年の5月と6月、マダガスカル北西部のローザ潟湖(Loza Lagoon)系の浅瀬でこのカズハゴンドウたちは座礁した。研究者らはこれを「極めて特異な出来事」と表現した。この原因として挙げられたのが、最初に座礁が発見された場所から約65キロ沖合のエクソンモービルの船で5月29日に作動していた12キロヘルツの高出力マルチビーム音響測深器(MBES)だ。

 独立調査団によると、このMBESが「最初に同潟湖系に進入したカズハゴンドウにとって、最も妥当で可能性が高い行動誘因」だったという。MBESの音は「カズハゴンドウの深海の生息域の数百平方キロにわたって、はっきりと聞こえる」ものだったと思われる。

 報告書によると、海洋生物に危害を与える可能性があるとして環境保護団体が長年反対している「地震探査エアガン」は、今回の事件の原因ではないという。

 海洋保護団体オセアナ(OCEANA)によると、高周波音響測深器は海底のマッピングを行うために使用されることが多く、小型のクジラやイルカに危害を及ぼす恐れがある。一方、その後に使用される人工震源のエアガンの爆音は周波数が低く、大型のクジラに危害を及ぼす可能性があるという。

 OCEANAの海洋科学者、マット・ヒュルゼンベック(Matt Huelsenbeck)氏は「MBESが最初に使用され、これにおびえたカズハゴンドウが潟湖に進入し、その後にエアガンが使用された」と説明する。「もしエアガンが最初に使用されていたら、こうした事件は起きなかっただろうというわけではない。エアガンの音はMBESよりもさらに大きい」

 報告書は、海底の地形を解明したり、魚を見つけたりするためにソナーマッピングは頻繁に使用されるが、「こうしたソナーの運用が海洋哺乳類の座礁を誘発する可能性は非常に低いと想定されており、動物たちはほとんどの場合、それらを単に回避したり無視しているのだろう」と述べている。

 ヒュルゼンベック氏は「今やわれわれは(ソナーによる)かく乱がこれまで想定されていたよりもさらに重要だとみている」と述べている。

 一方、エクソンモービルの広報担当パトリック・マクギン(Patrick McGinn)氏は、今回の調査結果に異論があるとして、AFPに対し「MBESに関する調査団の調査結果は、2008年の出来事を受けた活動の中で記録された情報と観測結果であって確実性を欠き、正当ではないとわが社は考える」と電子メールで述べた。

 今回の証拠は、IWC、米海洋哺乳類委員会(US Marine Mammal Commission)、米海洋大気局(US National Oceanic and Atmospheric AdministrationNOAA)、米海洋エネルギー管理局(US Bureau of Ocean Energy Management)、エクソンモービル、国際動物福祉基金(International Fund for Animal WelfareIFAW)、米国の自然保護団体「野生生物保全協会(Wildlife Conservation SocietyWCS)」、マダガスカル政府の協力によってまとめられた。(c)AFP/Kerry SHERIDAN