【5月21日 AFP】食料品の棚にある一見まったく縁のなさそうな品物――「コーンスターチ」を使って、鉱石から金を抽出する方法を発見したとの研究論文を、国際科学者チームが14日、英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に発表した。

 有毒のシアン化物を使用し、鉱石中の金を溶解させて抽出する従来の方法については、環境を汚染するため、賛否も分かれている。この方法を禁止している国も数か国あるが、全世界の金の80%以上がいまだにこの方法で抽出されている。

■実験失敗で新手法「偶然」発見

 科学者チームによると、これに代わる新しい方法を、試験管で簡単な化学実験を行っている最中に「偶然」発見したという。

 チームの1人、Zhichang Liu氏は、何らかの3次元の立方構造を作成するつもりで、コーンスターチを原料とする「α-シクロデキストリン」と呼ばれる糖と金塩溶液とを混ぜ合わせた。同氏は最初、実験が失敗に終わって落胆していたが、やがてもっと有益な可能性のあるものを発見したかもしれないことに気付いたという。

 この方法は、例えば、家電ごみから金を取り出すのに使用できるかもしれない。金の価格が過去10年で4倍に上昇している現状では、利益につながる見込みがある。

■危険はらむシアン化物による抽出

 近年、シアン化物による抽出を行っている採掘現場からの流出事故が数件報告されており、人命と環境が危険にさらされてきた。

 欧州では採鉱でのシアン化物の使用は認められているが、ドイツ、チェコ、ハンガリーなど一部の国はこれを禁止した。2010年には欧州議会(European Parliament)が、これらの国家による禁止措置を大陸全体に拡大するよう呼び掛けた。

 研究チームを率いる米ノースウエスタン大学(Northwestern University)化学科のフレーザー・ストッダート(Fraser Stoddart)氏はAFPの取材に、「金業界からシアン化物をなくすことが、環境保護の面で最も重要だ」と話す。

 この新しい代替物質のα-シクロデキストリンが「非常に安価で扱いやすい」と述べる同氏は、「最も重要なことは、環境保護の面で計り知れないほどの恩恵がわれわれと未来の世代にもたらされることだ」と語った。(c)AFP