【3月4日 AFP】ミツバチなどの花粉を媒介する野生の虫の減少が、世界の農業に打撃を与えているとの研究論文が、2月28日の科学誌「サイエンス(Science)」に掲載された。

 カナダ・カルガリー大学(University of Calgary in Canada)の主導で行われた研究によると、虫の個体数を人為的に管理しても、野生の個体に比べて受粉の効果が薄いとされ、単に個体数を増やしても野生の個体が減少している問題を解決することはできないという。

 同大研究者のローレンス・ハーダー(Lawrence Harder)氏は「ミツバチの個体数を増やしても問題が解決しないことは多々あるが、野生のミツバチの活動が増えれば(問題解決に)一役買うだろう」と述べる。

 花粉を媒介する虫(ポリネーター)は通常、森のはずれや生け垣、緑地といった自然環境やそれに近い環境に生息している。これら生息地は、農地が開拓されるたびに失われ、作物の生産に必要な野生の花粉媒介虫の数も減少する。多様性も同様に低下しているという。
 
 研究チームは果物や穀物、ナッツ、コーヒーといった作物について世界各地41種類の生産体制を分析し、作物生産に対する野生の花粉媒介虫の影響を調べた。ハーダー氏は「矛盾するようだが、農地の拡大や殺虫剤の散布といった農業生産の効率化とともに広く行われている行為が、生産性を高める力を持った野生の花粉媒介虫の生息規模や多様性を引き下げている」と指摘。また野生の花粉媒介虫の減少で打撃を受ける公算が大きい主な作物として、トマトやコーヒー、スイカを挙げた。

 各国の研究者ら約50人が携わった調査では、20か国の農地600か所からデータを採集した。研究論文は、ミツバチをはじめとする野生の花粉媒介虫が生息する自然環境の保護と回復に向け、新たな取り組みを呼びかけている。(c)AFP