【2月15日 AFP】2つの言語を使う家庭で育つ子どもは、言葉を話せるようになる前の生後7か月程度でも、2言語を区別する特別な能力が身につくとする研究結果が14日の米科学誌「ネイチャー・ニューロサイエンス(Nature Neuroscience)」に発表された。

 この新研究によれば、2言語を同時に習得した子どもは、音が伸びる長さや音調、それらが一文の中で現れる位置などからどの言語かを特定するという、1言語使用者にはない能力を発達させることが明らかになった。

 研究は、英語と日本語のように語順が真逆の2言語の中で育っている生後7か月の乳児を対象とした。

 まず乳児たちに、真逆の2言語にそれぞれ似た「おとり」言語(英語系の音韻を持つ言語と日本語系に近い言語)2種類のうち、どちらか1種類を繰り返し聞かせ、慣れさせた。その後、話者は姿を見せずに、子どもに慣れさせた「おとり言語」と聞かせなかった「おとり言語」の両方のフレーズを聞かせ、それぞれの言葉が聞こえた方向を子どもが見る時間を計測した。

 すると、2言語環境で育っている子どもの方が、自分が触れたことのある言語の聞こえた方を見る時間が数秒長かった。一方、英語だけの1言語家庭で育っている子どもを対象に同じ実験を行った場合には、2種類の言語で子どもが顔を向ける時間の長さに違いはなかった。

 論文の共著者ジャネット・ワーカー(Janet Werker)氏は「異なる語順をもつ2言語で育っている乳児は、言葉の長さや調子を手がかりにすることができ、一方、1言語環境で育っている乳児はそれができないことが、この研究で示された」と述べた。

 2言語環境で育つ乳児に関する研究が、言語習得の仕組みを解明できることを示していると、論文は主張している。さらに「現在の世界人口の大多数が、生まれたときから複数の言語に触れている中で、認知発達の早期に関する理解を深めることは、世界中の社会・教育政策に大きな影響を及ぼすかもしれない」と述べている。

 研究結果は米ボストン(Boston)で開催中の米国科学振興協会(American Association for the Advancement of ScienceAAAS)年次総会で14日発表された。(c)AFP