【10月3日 AFP】世界遺産の世界最大のサンゴ礁グレートバリアリーフ(Great Barrier Reef)で、海底を覆うサンゴの半分以上が過去27年間で失われたとする研究結果が、2日の米科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of SciencesPNAS)に発表された。サンゴの白化現象やサイクロン、サンゴを食べるヒトデの大発生が主な原因で、いずれも気候変動が背景にあるという。

 研究を行ったオーストラリア海洋科学研究所(Australian Institute of Marine SciencesAIMS)とウロンゴング大学(University of Wollongong)の科学者チームは、この傾向が続けばグレートバリアリーフのサンゴ礁は2022年までにさらに半減すると警告している。

■214のサンゴ礁のうち無傷はたった3つ

 研究によると、サンゴ礁が破壊された原因の48%は強大なサイクロンで、42%がサンゴを食べるオニヒトデの大量発生、10%が海水温上昇に伴って1998年と2002年に起きたサンゴの白化現象だった。また、破壊の3分の2が1998年以降に起きており、34万5000平方キロメートルにわたって広がるグレートバリアリーフの214のサンゴ礁のうち、無傷だったのは3つだけだった。

 研究チームのヒュー・スウェットマン(Hugh Sweatman)氏は、サンゴ礁が自力で回復するには10~20年かかるが、現状では十分に回復する前に新たに破壊され、死滅してしまうサンゴが多いと指摘している。

■温暖化対策が未来を左右する

 サイクロンは世界の海洋の水温上昇とともに強大化しており、サンゴに影響を及ぼす大きなものは1985年以来、34件発生したという。白化現象も、気候変動の影響で「ほぼ間違いなく増加する」という。

   「近年、大規模白化現象が頻度と激しさを増していることが特に懸念される。直接の原因は大気中の温室効果ガスの増加だ」と論文は述べている。「グレートバリアリーフの未来には、地球温暖化と海洋酸性化の緩和が不可欠だ」

■ヒトデ大量発生防止が回復のカギ

 AIMSのジョン・ガン(John Gunn)氏は、サイクロンと白化減少を阻止するのは難しいとして、短期的にはサンゴのポリプ(サンゴ虫)を食べるオニヒトデの大発生を防ぐことを提言している。

 研究論文によると、カギとなるのは水質改善だ。グレートバリアリーフに近いオーストラリア沿岸部で肥料などを含む農業廃水の流出量が増えたため藻が大発生し、ヒトデの幼生の餌になっているというのだ。

   「サイクロンは阻止できなくても、ヒトデを食い止めることは可能だ。それができれば、サンゴが海水温上昇や海洋酸性化に適応する可能性が高くなる」とガン氏は指摘。ヒトデの周期的な大発生の予測精度を高め、発生回数を減らすことに力を注ぎつつ、排除手段を講じることを勧めている。

 論文によると、ヒトデの被害がなくなるだけでもサンゴ礁の回復率は年0.89%に上がる。「サイクロンや白化によってサンゴが減少しても、緩やかな回復が見込める」とガン氏は語っている。(c)AFP/Amy Coopes