【9月6日 AFP】アマゾン川流域での森林伐採継続により、壊滅的な降雨量の減少につながる恐れがあるとした研究論文が5日、科学誌「Nature」に掲載された。

 英リーズ大学(University of Leeds)とエセックス大学(University of Exeter)などの研究者からなるチームは、森林被覆(面積)や降雨パターンに関する衛星データを基にしたコンピューターモデルから、アマゾン流域の降雨量が雨期で12%、乾季では21%減少すると予測した。これにより流域の農業が受ける損失は天文学的な数字に上るうえ、アマゾン川の水量が減るために水力発電にも影響が及ぶという。

 雨が降って地面へと浸み込んだ水分は、樹木により吸い上げられて葉から蒸発(蒸散)し、再び雨となる。そのため、樹木が密集するアマゾン流域の大気は通常の2倍の水分を含んでおり、これにより密林の湿度を一定に保ち、またさらなる降雨にも貢献してきた。

 アマゾン川流域では2000年ごろから森林伐採が盛んになり、この傾向が続けば2050年までには森林の40%が失われると、チームは警告する。

 論文主筆者の1人、エセックス大のルイス・アラガオ(Luiz Aragao)氏は、特にアマゾン東部および南部における降雨パターンの変化が懸念されるという。

 多くの気候学者による仮説では、21世紀末までに地球の気温は産業革命以前との比較で約3度上昇するとされており、その影響は「非常に大きい」とアラガオ氏は指摘する。

 アラガオ氏によると、地域の気候が変化することで干ばつが進み、樹木の立ち枯れが拡大するという。その結果、樹木が吸収・貯蔵する二酸化炭素の量が減少するだけでなく、森林火災のリスクは高まり、さらに生物多様性も失われていくという。

 論文は、こうした変化によってアマゾン川流域の農業が直接受ける被害額を150億ドル(約1兆1800億円)と試算する。またブラジル国内電力需要の約65%を担う水力発電にも大きな影響が出ると警告した。

 しかしその一方でアラガオ氏は、研究チームの予測は最も悲観的なモデルであるとし、ブラジル政府が2020年までにアマゾン流域での森林伐採を80%削減すると約束していることから、明るい材料もあると付け加えた。(c)AFP