【6月11日 AFP】米国の政府研究機関は8日、2001年9月11日にニューヨーク(New York)で起きた同時多発テロで倒壊した世界貿易センター(World Trade Center)の倒壊現場に居合わせたために、がんを発症した人々を公的支援の対象とするべきと勧告した。

 同時多発テロ発生直後、数千人に上る住民や救助隊員らは、ビル倒壊で生じた粉じんを何週間にもわたって吸い込むことを余儀なくされており、数十種に及ぶがんについては、事件に直接関係していることを認定すべきとした。

 健康を害した人々の大半は呼吸器系の疾患を患った人々で、被害者救済のために43億ドル(約3400億円)の支援金が用意されている。しかし数百人存在するとされるがん患者らについては、これまで対象となっていなかった。

 米国立労働安全衛生研究所(National Institute for Occupational Safety and HealthNIOSH)による公式の勧告が遅れたのは、ビルの倒壊と発がんとの直接的な関連を示す証拠が少なかったことが背景にある。

 勧告では、一部を除く14カテゴリーのがん患者について、無償での治療や補償を受ける資格が与えられるべきとしている。支援金の拡充については行わない予定。

 ただ世界貿易センター健康プログラム(World Trade Center Health Program)の担当者、ジョン・ハワード(John Howard)氏により、「公式発表はこれから」との声明が出されているため、この勧告に関する政府の方針はまだ確定していないとみられている。

 ニューヨーク州選出の連邦議会議員3人は、この勧告を歓迎する共同声明を発表し、ビル倒壊による有害物質の拡散とがん発症との関連性は疑いのない事実であると述べた。

「現場に居合わせた人々の間で悲劇的ながんの発症事例を幾度も目にしてきた。支援を必要とし、受け取る資格のある全員を救済できるよう、最大限の努力を続けるべきだ」

(c)AFP

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