【12月6日 AFP】マラリア治療薬の偽造薬や粗悪品の流通により、東南アジアの一部でマラリアの薬剤耐性が強化されていると、米国の専門家らが5日、米下院外交委員会アフリカ・グローバル保健・人権小委員会(House subcommitee on Africa, Global Health, and Human Rights)で証言した。

 慈善財団ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団(Bill and Melinda Gates Foundation)の感染症部門主任、レジーナ・ラビノビッチ(Regina Rabinovich)氏は、同小委員会の公聴会で「マラリア原虫には薬剤や殺虫剤に適応してきた歴史がある。アルテミシニンをベースにした併用療法は現在最も効果的な薬剤療法だが、これに対する薬剤耐性の拡大が東南アジアで確認されている」と述べた。

 世界保健機関(World Health OrganizationWHO)は前月、アルテミシニンに対する薬剤耐性が、2009年に初めて確認されたカンボジア・タイ国境周辺で広がっており、ミャンマーにまで拡大している可能性があると発表していた。

 WHOによると世界人口の半数が、蚊を媒介とするマラリアの危険にさらされており、毎年86万人がマラリアにより死亡している。

 米シンクタンク「アメリカンエンタープライズ研究所(American Enterprise InstituteAEI)」のロジャー・ベイト(Roger Bate)氏によると、品質管理試験で失格したマラリア治療薬のうち約半数がアルテミシニンを含んでいたという。

 ベイト氏は、マラリア治療薬の粗悪品の正確な流通量は不明だが「無視できる量ではないことは確かだ」と述べ、問題が難しいのは、これらの治療薬が関係各国で違法化されていない点だと指摘し、「市場に出回っている抗マラリア薬を、医療規制当局に管理させることが重要だ」と語った。

 単剤療法はマラリアの耐性を強化することが知られているため、専門家は時間のかかる併用療法のほうを推奨している。

 ベイト氏は、アフリカの市場から単剤療法をなくすための協調行動は一定の成果をあげていると評価しながらも「中国やインド、ベトナムの企業ではまだ、単剤が製造されており、これがマラリアの薬剤耐性を高める主要な原因となっている」と指摘した。

 専門家たちはまた、関係当局の規制強化にあわせて、研究者が新薬開発に注力するとともに、新薬が単剤で流通しないよう禁止することが重要だと訴えた。(c)AFP/Kerry Sheridan