【1月21日 AFP】(1月25日 写真追加)南極大陸西部の氷床下で約2000年前に大規模な噴火を起こした火山が現在も活動中で、海面上昇の要因となっている南極の氷の融解に影響している可能性があるとの研究が20日、英科学誌「ネイチャー・ジオサイエンス(Nature Geoscience)」(電子版)に発表された。

 英南極調査所(British Antarctic SurveyBAS)の研究チームが行った調査によると、この火山はハドソン山脈(Hudson Mountains)にあり、紀元前207年の前後240年ほどの期間に大噴火したとみられる。

 この噴火は過去1万年で最大規模だったとみられ、火山の規模を示す国際基準の火山爆発指数(Volcanic Explosive IndexVEI)は「3(やや大規模)」から「4(大規模)」。氷床に巨大な裂け目を作り、約1万2000メートルの高さまで火山灰や火山ガスを吹き上げたと推定されるという。

 研究チームは2004-05年、米英の飛行機にレーダーを搭載し、氷床下の地勢の詳細調査を行った。その結果、2万3000平方キロの範囲に特異な反応を確認した。0.31立方キロの火山灰、岩石、溶融石英から形成されたガラスの厚い層の分布とみられるとしている。

 南極大陸の氷床下で火山が発生した証拠が得られたのは今回が初めて。南極大陸は大部分で地震活動が安定した状態にあるが、西部沿岸は時おり火山活動や地熱が観測される地殻上にある。

 また、大噴火が起きたとされる場所の付近には、近年氷河流が加速しているパインアイランド氷河(Pine Island Glacier)がある。

 BASは今回の研究を「たぐいまれ」な発見として、南極大陸の火山活動地域を約500キロ拡大するとともに、氷床下の火山活動が海面上昇の原因である南極の氷の融解の一因となっている可能性を指摘した。

 ただし、研究を主導したデービッド・ボーガン(David Vaughan)教授は、「火山からの熱が融解加速の一因である可能性はあるが、より大きな原因は地球温暖化だ。火山の熱だけで、年間0.2ミリの海面上昇を引き起こすほどの南極西部の氷河流を説明することはできない。広範囲での融解現象は、海水温度の上昇によるところが大きい」とも述べている。(c)AFP