【11月6日 AFP】英国籍のシーク教徒(インドで始まった宗教)の男が白人男性を刺殺した事件で、英国の控訴院は5日、ビクラム・ディグワ被告に対し、終身刑の最低服役期間を一審判決の21年から25年に引き上げる判決を言い渡した。当初の最低服役期間21年は不当に短かったと判断した。

事件は昨年発生。被害者の学生ヘンリー・ノバクさん(当時18)はディグワ被告に何度も刺され、瀕死(ひんし)の状態で横たわっていたにもかかわらず、警察官に手錠を掛けられた。ディグワ被告が、ノバクさんから人種差別的な暴言を浴びせられたとうその説明をし、警察官がそれを信じたためだった。

この事件は大きな注目を集め、暴力的なデモを引き起こした。反移民を掲げる右派政党「リフォームUK」のナイジェル・ファラージ党首や米実業家イーロン・マスク氏らが、英国に白人差別が存在する証拠としてこの事件を取り上げ、デモをあおった。

ディグワ被告の母親は、儀礼用ナイフを犯行現場から自宅に持ち帰ったとして、証拠隠滅等罪で拘禁3年を言い渡された。

政府側の法務担当者は控訴院に刑の加重を求めた一方、ディグワ被告側は減刑を申し立てていた。

スー・カー裁判長は判決を読み上げ、「最低服役期間21年という量刑は、殺人事件全体の重大性を十分に反映していなかった」と指摘。「単に軽いものではなく、不当に軽いものだった」と述べた。

さらに、最低服役期間21年の判断を破棄し、25年に変更すると説明した。ただし、ディグワ被告が勾留中に過ごした175日間は差し引かれる。

弁護人のイムラン・カーン氏は、6月の量刑判断には「誤り」があり、最低服役期間21年は「重すぎる」と主張していた。

しかし、控訴院は逆に、一審はディグワ被告がシーク教の儀礼用の短剣「キルパン」を使用したことを、より重く考慮すべきだったと結論付けた。キルパンは信仰上の装身具として合法的に携帯することが認められている。

控訴院はまた、ディグワ被告が負傷して地面に横たわるノバクさんを撮影したことや、救急隊員らにうその説明をしたことについて、「意図的な残虐行為、さらなる苦痛、司法の妨害」をもたらしたと指摘した。

量刑の見直しを求めていたエリー・リーブス法務長官は、刑の加重を歓迎した。

リーブス氏は声明で「この事件の残虐さと冷酷さに私は戦慄(せんりつ)した。英国民も同じ思いを抱いていると確信している」と述べた。(c)AFP