【11月6日 CNS】中国では最近、スポーツやトレーニング、観光、交流を組み合わせた新しい旅行スタイルが、運動で思い切り汗を流すことを好む「暴汗族」と呼ばれる人びとの間で広がっている。江蘇省(Jiangsu)と浙江省(Zhejiang)に境界にある太湖を一周するサイクリング、広西チワン族自治区(Guangxi Zhuang Autonomous Region)陽朔県でのロッククライミング、寧夏回族自治区(Ningxia Hui Autonomous Region)の賀蘭山でのトレイルランニング、海南省(Hainan)万寧市(Wanning)でのサーフィンなど、休暇中も体を動かし、心身をリフレッシュしようとする若者が増えている。「スポーツ旅行」が、新たな休暇の楽しみ方として注目されている。

中国で「スポーツ旅行(Sportcation)」とは、スポーツを主な目的として、トレーニングや旅行、交流を組み合わせた旅行スタイルを指す。今年10月までに、中国のSNSでは関連する話題の閲覧数が4000万回を超え、若者に人気の旅行スタイルとなっている。中心となるのは20~35歳の若者だが、55歳前後の比較的若いシニア世代にも広がり始めている。また、2~3日間の短期旅行が予約全体の半数以上を占めるなど、週末を利用した「プチ旅行」として会社員の生活にも定着しつつある。

北京市在住の石娜麗(Shi Nali)さんは、「スポーツ旅行は普通の休暇とは違います。思い切り汗をかいた後の高揚感は、体の疲れをはるかに上回ります」と話す。2023年に市民向けのランニングイベントに参加したことをきっかけに、「マラソンを走り、その街を観光する」という旅行スタイルに魅了された。これまでに西安市(Xi'an)やアモイ市、成都市(Chengdu)など、中国の有名観光都市でマラソンに参加してきた。

マラソンだけでなく、トレイルランニングにも夢中だという。「週末しか時間がなくても走りに行きます。決して自分を苦しめているのではなく、心を癒やしているのです」と語った。

これまで一部の愛好者に限られていたスポーツの人気が広がったことも、スポーツ旅行の選択肢を増やしている。中国のネット上では、「海南省万寧市の『体育学校』に通う」という表現が流行している。これは、万寧市でさまざまなスポーツを体験しながら休暇を過ごすことを指す。

公式統計によると、2026年上半期に万寧市を訪れた観光客は延べ634万人を超え、そのうち70%が若者だった。また、観光客の約7割がスポーツ活動に参加している。朝はランニングやトレーニングを行い、日中はサーフィンやスタンドアップパドルボードを楽しみ、夕方には夕日を眺め、夜は友人や旅先で知り合った人たちと食事やお酒、ダンスを楽しむ。仕事の日よりも予定が詰まった休暇を過ごす人もいる。

スポーツ旅行の魅力は、運動そのものだけではない。若者同士の交流のあり方にも変化をもたらしている。

1995~1999年生まれのバドミントン愛好者、劉安(Liu An)さんは、自ら立ち上げたバドミントンの交流グループに130人以上が参加しており、休日に集まってプレーすることが日常になっていると話す。運動で汗を流した後は、仲間と旅行や食事に出かけることも多い。

劉さんはソフトボールも好きで、かつて仲間と江蘇省昆山市の大会に参加し、試合後には一緒に上海などを観光したという。「試合に出ながら新しい友人と出会い、その仲間と一緒に旅行するのは、とても楽しいことです」と語る。スポーツを通じて自然に交流が生まれるスポーツ旅行は、若者に精神的な充実感や仲間としての一体感をもたらしているという。

ベテランの旅行プランナー、楊薇(Yang Wei)氏は、「スポーツ旅行は一時的なブームではなく、都市生活者のライフスタイルが長期的に変化していることの表れです」と指摘する。

楊氏によると、スポーツ旅行が人気を集める背景には、若者の旅行に対する考え方の変化がある。スポーツを好む若者は、観光名所を巡って写真を撮るだけの旅行では満足しなくなり、山や川などの自然の中で体を動かし、実際に体験することを重視するようになっている。

以前は旅行中の楽しみの一つにすぎなかったスポーツが、今では旅行先や宿泊日数、さらには旅程全体を決める中心的な目的になっているという。

政策面でも、こうした動きを後押しする取り組みが進んでいる。中国政府が発表した「スポーツ強国建設第15次5カ年計画」では、商業、観光、文化、スポーツ、健康分野の融合的な発展を促進し、スポーツ産業の成長分野を広げる方針が示された。

中国国家統計局のデータによると、2025年末時点で、日常的に運動する人の割合は40%近くに達している。また、中国国家体育総局は2026年、国民の運動習慣に関する定期調査を開始し、スポーツ関連消費の実態をさらに詳しく把握する方針だ。

専門家は、「暴汗族」の間でスポーツ旅行が広がっていることは、中国の若者の生活観の変化を反映していると指摘する。

休暇は横になって休むものという考え方から、汗を流して心身をリフレッシュする過ごし方へ。観光名所を訪れることから、自分自身の挑戦や体験を重視する旅行へ。中国では、スポーツを休暇の中心に据え、運動を通じて世界を知るとともに、自分自身を見つめ直す若者が増えている。(c)CNS/JCM/AFPBB News