【11月5日 CNS】使われなくなったたばこ工場が、中国最大級のショートドラマ撮影施設に生まれ変わった。

江西省(Jiangxi)上饒市(Shangrao)広豊区では、敷地面積120ムー(約8ヘクタール)余りの旧たばこ工場を改修し、延べ床面積8万平方メートルの遊休工場施設を、セット面積6万6000平方メートルの大型撮影施設に転用した。

施設内には、さまざまな時代の街並みや現代の生活空間、時代劇用の建物、ヨーロッパ風の海外ロケセットなどが設けられ、最大50組の撮影チームが同時に制作を進められる。2025年6月の試験運営開始以来、制作されたショートドラマは累計1000作品を超え、インターネット上での総再生回数は100億回を突破した。

かつての工業施設を新たな映像産業の拠点に転換した広豊区の取り組みは、江西省が進める地域経済の発展と産業転換の一例だ。

2026年の国慶節連休中、江西省贛州市(Ganzhou)于都県では、于都河沿いの東門渡口にある大きなガジュマルの木の下で、革命を題材にした野外劇『告別』が上演された。歌声とともに、かつて革命根拠地の住民が紅軍の兵士たちを送り出した場面が再現された。

江西省では、中国革命に関する史跡や歴史を生かした「紅色観光」の振興が進められている。従来の史跡見学を中心とする観光から、宿泊や体験型プログラムを組み合わせた滞在型観光への転換を図っている。

2025年、于都県を訪れた観光客は延べ1864万6800人に達し、前年比12.13%増加した。観光関連の総収入は179億9800万元(約4251億8295万円)で、同12.78%増となった。紅色観光は、地域経済の発展や長征の歴史を伝える取り組み、住民の所得向上を支える重要な産業となっている。

江西省では、こうした歴史資源に加え、豊かな自然環境を生かした観光振興にも力を入れている。

その代表例が、上饒市婺源県に生息するカンムリガビチョウの一種、ブルークラウン・ラフィングスラッシュ(学名:Pterorhinus courtoisi)だ。この鳥は国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストで「深刻な危機(CR)」に分類されており、江西省婺源県に生息する希少な鳥として知られている。

2000年に研究者によって再発見された当時、野生個体数は50羽余りだったが、長年の保護活動によって600羽以上に増加した。

婺源県では、生息環境の保護を前提に、全長110キロのバードウオッチングルート「翼境婺源」を整備した。複数の観察コースを設けるとともに、10か所の生態観察モデル拠点を育成している。

かつて貧困に悩まされていた山間部の石門村でも、希少な鳥の保護をきっかけに観光産業が発展している。

村に新設された野鳥観察小屋には、周囲の自然に溶け込む迷彩ネットが使われ、高倍率の望遠鏡や野鳥観察ガイドブックが備えられている。訪問者が自然の中で野鳥を観察できる体験型プログラムを提供している。

住民の暮らしも、山の資源を直接利用する従来の生活から、野鳥の保護と観光を組み合わせた収入の確保へと変化している。

一方、江西省では歴史的建造物を活用した観光振興も進んでいる。

婺源県理坑村では、300年以上の歴史を持つ明・清代の徽州様式の古民家が宿泊施設に改装された。建物には、れんが彫刻を施した門楼や青石造りの門構え、精巧な彫刻が残る扉や窓があり、梁や中庭の周囲にも人物をかたどった装飾が施されている。

婺源県には現在、3810か所余りの伝統建築が残っており、中国歴史文化名村に指定された村が7カ所、中国伝統村落に選ばれた村が30か所ある。

今年の国慶節連休には、篁嶺地区で収穫物を天日干しする伝統行事「晒秋」をテーマにしたパレードや、農村の無形文化遺産を紹介する夜間イベントが開催された。こうした催しが古村落観光の人気を高め、連休中の観光客数は延べ18万100人に達した。

歴史的建造物を活用した地域振興の取り組みは、ほかの地域にも広がっている。

江西省金渓県では、上海市で働いていた若者の南宮琦(Nan Gongqi)さんが仕事を辞めて故郷に戻り、自宅の伝統的な古民家を特色ある宿泊施設に改装した。

さらに、地元の郷土料理を紹介する動画をSNSに投稿して観光客を呼び込み、地域振興に取り組む若手起業家の一人となっている。

若者が故郷に戻り、古い建物を新たな事業に活用することは、歴史ある村落を将来にわたって維持する上でも重要だ。明・清代の古民家を単なる保存対象とするのではなく、宿泊や飲食、観光などに活用することで、歴史的な景観を守りながら地域経済の活性化につなげている。

江西省では、革命の歴史を生かした「紅色観光」、自然環境を生かした「緑色観光」、伝統文化や歴史的建造物を生かした観光を組み合わせ、地域の魅力を高める取り組みが進められている。

革命史跡を目的に訪れた観光客に自然体験や古村落での宿泊を楽しんでもらうことで、滞在時間の延長や観光消費の拡大が期待される。

旧たばこ工場を活用したショートドラマ制作、希少な野鳥の保護を通じた観光振興、伝統的な古民家を利用した若者の起業など、江西省では地域の既存資源を新たな産業や雇用につなげる動きが広がっている。(c)CNS-三里河中国経済観察/JCM/AFPBB News