暗号資産交換所バイナンス(c)Reuters/news1
暗号資産交換所バイナンス(c)Reuters/news1

【11月02日 KOREA WAVE】世界最大の暗号資産(仮想通貨)交換所バイナンスから60億ドル(約9450億円)以上が盗まれた事件で、米連邦捜査局(FBI)が北朝鮮の関与を指摘した。制裁下でもサイバー攻撃によって巨額の外貨を得る実態が浮かび上がり、核・ミサイル開発の資金遮断を目指す制裁の実効性に懸念が強まっている。FBIは10月31日(現地時間)、事件の背後に北朝鮮がいると発表。「トレイダートレイター」と呼ぶ北朝鮮のハッキング活動によるものとした。同名称の活動は、2025年に約15億ドル(約2360億円)が盗まれたバイビットの事件でも関与を指摘されている。

米ブロックチェーン分析企業TRMラボによると、ハッカーは10月29日にバイナンスの暗号資産ウォレットを攻撃し、10のブロックチェーンから約63億6000万ドル(約1兆円)を盗み出した。大半の資産は、わずか20分で移されたという。少なくとも36時間前から準備し、資産の移転を承認するシステムに侵入した可能性があると分析した。

FBIは、盗まれた資産が主にイーサリアムへ交換され、分散型金融サービスなどを使った資金洗浄が続くと予想。交換所や関連企業に、ハッカーのウォレットに関連する取引の遮断を求めた。

北朝鮮が暗号資産窃取に力を入れる背景には、制裁による外貨不足がある。国連安全保障理事会は、石炭などの輸出制限や海外派遣労働者の送還義務、関係者の資産凍結などを実施してきた。それでも北朝鮮は核・ミサイル能力の高度化を続けている。2026年は弾道ミサイル発射を18回実施し、最近は極超音速滑空体の試験発射成功も発表した。国際的な監視下にある銀行間の金融網に比べ、暗号資産取引には監視の目が届きにくい。窃取した資金が兵器開発を支えることで、従来の輸出規制や金融制裁だけでは資金流入を防ぎ切れないとの指摘が出ている。

北朝鮮の攻撃は「ラザルス」などが主導するとされる。米財務省は2019年、ラザルス、ブルーノロフ、アンダリエルの3集団を偵察総局の統制下にあるとして制裁対象に指定した。金融機関や交換所への攻撃に加え、軍事・産業技術情報の窃取にも関与してきたとされる。

米分析企業チェイナリシスによると、2026年の世界の暗号資産ハッキング被害額の約89%が北朝鮮関連と分析される。過去5年間の窃取額は132億4000万ドル(約2兆800億円)と推計され、世界全体の59%に相当する。攻撃手法も高度化し、相手を欺く社会工学的手法やシステムの脆弱性、スマートコントラクトの悪用などが使われている。盗んだ資産を多数のウォレットに分散し、追跡をかわしているという。

慶南大学極東問題研究所のイム・ウルチュル教授は、少人数・低コストで数億~数十億ドルを直ちに得られるサイバー攻撃が、長年の制裁効果を瞬時に相殺していると指摘する。同教授は、暗号資産窃取が不足する外貨を補う犯罪手段を超え、経済封鎖下でも先端兵器の開発と体制維持を可能にする「国家レベルの戦略的資産」になったと評価した。

米財務省外国資産管理局(OFAC)も、ハッカー集団や資金洗浄に関与する個人・団体、暗号資産関連サービスへの制裁を強化している。ただし、北朝鮮は迂回経路を開拓し、AIによる自動化も取り入れており、資金を完全に遮断するのは難しいとみられる。

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