アモイの海洋保全、4つの取り組みから見る中国の海洋管理
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【11月3日 CNS】中国・福建省(Fujian)アモイ市で海を楽しむなら、環島路で潮風を感じたり、下潭尾のマングローブ林でシラサギを撮影したりするのが定番だ。運が良ければ、フェリー航路付近の海でシナウスイロイルカが水面から跳び上がる姿に出会えることもある。多くの観光客にとって、アモイの海は美しい景色を楽しむ場所だ。しかし、その海では、海洋生物の保護や生態系の回復、漁業と環境保全の両立など、さまざまな取り組みが進められている。
まず、注目されるのが、地元で「媽祖魚」と呼ばれるシナウスイロイルカの保護だ。アモイは、中国でも市街地に近い海域でこのイルカを観察できる数少ない都市の一つで、独自の保護体制を整えている。
研究者は、イルカの背びれの輪郭や模様、欠けた部分、傷痕などを識別の手掛かりに、個体ごとの「身分証」を作成している。そこには愛称、性別、推定年齢、初めて確認された日時、過去の目撃地点のGPS情報、行動を共にする子イルカ、血縁関係などが記録され、長期的な個体識別に役立てられている。
こうした個体別データベースと連動しているのが、AIを活用した監視ネットワークだ。船舶自動識別装置(AIS)の情報を取り込み、イルカの生息域に電子的な境界線を設定している。船舶が主要な生息海域に進入するとシステムが警報を発し、保護担当者が海事当局や海警当局と連携して、船舶に減速や騒音の抑制を促す。これにより、水中の騒音がイルカに与える影響を減らしている。
次に、マングローブ林の再生によるブルーカーボンの蓄積だ。
十数年前、アモイの下潭尾一帯にはエビの養殖池が広がり、干潟には泥が堆積して生態環境が悪化していた。そこで研究者らがマングローブの苗を植え、長年にわたり補植や管理を続けた結果、現在では約85ヘクタールに及ぶマングローブ林が形成されている。
満潮時には木々の一部が海水に浸かり、干潮時には複雑に絡み合った根が干潟に姿を現す。泥の上をシオマネキが歩き回り、トビハゼが跳び、枝にはシラサギが羽を休める。観光客にとっては、遊歩道から眺める美しい「海の森」だ。
一方、研究者にとっては、長い時間をかけて炭素を蓄積する重要な場所でもある。評価報告によると、マングローブの炭素固定効率は陸上の生態系の5~7倍に達し、炭素を数十年から数百年にわたって蓄えることができるという。蓄積された炭素は短期間で大気中に戻りにくい。
さらに、マングローブ林の水路は小魚やエビの繁殖場所となり、沿岸の魚類を育むことで、シナウスイロイルカを頂点とする食物連鎖も支えている。
3つ目は、ナメクジウオやカブトガニなど、古くから生き続けてきた海洋生物の保護だ。
アモイの黄厝ビーチや嘉庚ビーチは、一見すると普通の砂浜だ。しかし、黄厝の細かな砂の下にはナメクジウオが生息し、嘉庚ビーチの干潟には爪ほどの大きさのカブトガニの幼体が見られる。
いずれも数億年前から続く古い系統の生物で、生息環境の変化に敏感だ。干潮時に海辺で生き物を探す観光客が何気なく踏み込むだけでも、生息地を傷つける可能性がある。
ただし、アモイ市はこうした海辺での活動を一律に禁止しているわけではない。水辺で遊べる区域と、希少な生物の生育を守る区域を明確に分けている。砂浜では海洋保護ボランティアの巡回活動も行われている。ボランティアは砂を掘ったり生き物を捕まえたりする観光客に注意を促し、その理由を丁寧に説明している。
アモイの海洋生物多様性保全は、シナウスイロイルカのような注目度の高い動物だけを対象としているわけではない。砂や泥の中に生息する小さな生物も、重要な保護対象となっている。
4つ目は、漁業の発展と生態系の保全を両立させる取り組みだ。
海上養殖は初期投資が大きく、経営上のリスクも高い。稚魚や稚貝の購入、飼料の準備などが必要な時期には、漁業者が資金不足に直面することも少なくない。
こうした課題に対応するため、「網漁貸」や「漁排託管貸」といった漁業向けの融資商品が登場した。融資審査では不動産だけでなく、漁業者が保有する海域の利用・経営権や、養殖中の水産物なども評価対象に含められる。
注目されるのは、こうした金融支援が養殖密度の引き上げを目的としているのではなく、環境負荷の少ない養殖への転換を促している点だ。地元では、海藻と貝類を組み合わせた低密度の生態系に配慮した養殖が推進されている。
海中では、海藻の一種であるオゴノリとカキが共に育てられている。これらは食材として利用できるだけでなく、成長する過程で水中の炭素を取り込み、養殖によるブルーカーボンの蓄積にもつながる。
アモイ産権取引センターには、中国初の海洋炭素吸収・貯留量の取引サービスプラットフォームが設置されている。現在、漁業養殖によって生み出される環境価値について、権利を明確にし、取引につなげる仕組みの構築が模索されている。
中国は2026年、アモイ市を「海洋生物多様性協定」の事務局設置都市として立候補させた。
この協定が対象とするのは、各国の管轄権が及ばない公海などの海域だ。人類共通の海洋資源が存在する一方で、資源利用と生物多様性の保全をどう両立させるかという課題も抱えている。
アモイ市が沿岸海域で進めてきた生態系の回復や保全の取り組みは、世界の海洋管理にも参考となる実践例を示している。(c)CNS/JCM/AFPBB News