【11月2日 CNS】米ニューヨーク州北部の小さな町、イーストフィッシュキルはこのほど、今後3年間にわたりデータセンターの新設を禁止する措置を発表した。米IBMが50年間にわたって半導体を製造してきたこの町は、技術産業の発展にいったんブレーキをかけることになった。町が発展を望んでいないわけではない。深刻な電力不足が、米国の人工知能(AI)産業の発展を制約しているためだ。

一方、地球の反対側に位置し、ほぼ同じ緯度にある中国・内モンゴル自治区(Inner Mongolia Autonomous Region)の草原では、対照的な光景が広がっている。山のふもとでは風力発電の風車が回り、太陽光パネルが地平線まで広がる。再生可能エネルギーによる電力がデータセンターに供給され、膨大なデータの計算処理が絶え間なく行われている。同じく計算能力(算力)の拡大に取り組みながら、かつてジャガイモを主要産業としていたウランチャブ市(Ulanqab)は、今やAI時代の電力需要を成長の原動力に変え、急速に発展している。

華為技術(ファーウェイ、Huawei)、阿里巴巴集団(アリババグループ、Alibaba Group)、アップル(Apple)、快手(Kuaishou)、字節跳動(バイトダンス、ByteDance)などの大手企業が相次いで進出し、計算処理拠点に関する契約済みプロジェクトは累計109件に達した。

2026年8月時点で、計算能力の規模は19万(ペタフロップス)に達している。米金融大手ゴールドマン・サックス(Goldman Sachs)は、ウランチャブがアジア太平洋地域で最大規模かつ成長速度が最も速いAI計算処理拠点の一つに成長したと評価している。

かつてジャガイモの産地として知られた草原は、今や計算能力を生み出す拠点へと姿を変えた。風力、冷涼な気候、広大な土地を競争力に変えたウランチャブの発展には、三つの戦略がある。

第一は、資源を生かす戦略だ。電力は、計算処理拠点を整備する上で欠かせない基盤となる。

ウランチャブは陰山山脈の北麓に位置し、風力や太陽光の資源が豊富だ。市内の再生可能エネルギー発電設備の系統接続容量は2000万キロワットを超え、再生可能エネルギーによる電力の割合は約67%に達している。

豊富なエネルギー資源は、電力料金の安さにもつながっている。ウランチャブの計算処理関連プロジェクトに適用される電力料金は、1キロワット時当たり約0.32~0.36元(約7〜8円)で安定している。北京市、上海市、広州市(Guangzhou)、深セン市(Sheanzhen)の工業用電力料金が約0.7~0.8元(約16〜18円)であるのと比べると、ほぼ半額だ。

第二は、産業を育成する戦略だ。豊富な電力を確保したウランチャブは、気候や立地の優位性も生かして産業の発展を進めている。

年間平均気温は4.3度で、年間約10か月は外気を冷却に利用できるため、データセンターの冷却コストを大幅に削減できる。また、北京から約240キロという立地も強みだ。データ伝送の片道遅延時間は、実測で2.1ミリ秒に抑えられている。

こうした条件により、中国東部で増加する計算処理需要を比較的近い場所で受け入れられるようになった。AIモデルの学習、クラウドストレージ、自動運転のシミュレーションなど、大量の電力を必要とする事業が次々と進出し、計算能力の規模は19万Pにまで拡大した。

第三は、付加価値を高める戦略だ。AI産業の発展が進む中、ウランチャブは発電やデータセンターの整備にとどまらず、電力の販売やサーバー設備の設置スペースの貸し出しだけに依存しない事業構造を目指している。

2025年11月、ウランチャブは「トークンの都」を建設する3か年行動計画を正式に始動した。風力・太陽光発電から、再生可能エネルギーを活用した計算処理、さらにAIのトークンを通じた価値の創出までを一体化した産業構造の構築を目指す。

第15次5か年計画(2026~2030年)の期間中には、トークンの生成、計量、評価、安全管理などに関わる産業を育成するとともに、トークン取引プラットフォームの整備を進める方針だ。トークンとは、大規模言語モデルが文章などを処理する際に用いる基本単位のことだ。

2024年以降、中国における1日当たりのトークン利用量は、1000億から500兆へと急増した。資源を売る段階から計算能力を提供する段階へ、さらにトークンを通じて価値を生み出す段階へと進むことで、ウランチャブはAI産業の付加価値をより多く取り込もうとしている。

計算資源ネットワークは、中国が国家レベルで整備を進める「六つのネットワーク」の一つであり、計算能力に関連する産業は現在、急速な発展段階にある。ウランチャブは2013年にデータセンターの整備に着手し、2022年には中国東部のデータ処理需要を西部の計算資源で支える国家プロジェクト「東数西算」の拠点に指定された。そして現在は「トークンの都」の建設を進めている。

かつてジャガイモや牛、羊などの農牧業を主な産業としていた小都市は、世界のAI計算能力をめぐる競争の舞台へと徐々に進出している。これは、一つの都市が新たな産業によって発展する姿を示すとともに、中国が地域の特性を生かして質の高い経済発展を進めていることを象徴している。

ウランチャブから中国全体に目を向けると、「東数西算」プロジェクトでは、すでに全国8カ所の国家計算処理拠点と10か所の国家データセンター集積地区が整備対象となっている。

貴州省(Guizhou)には中国初の国家級ビッグデータ総合試験区が設けられ、広東省(Guangdong)韶関市(Shaoguan)では国家級データセンター集積地区の整備が進む。寧夏回族自治区(Ningxia Hui Autonomous Region)中衛市(Zhongwei)では、再生可能エネルギーによる電力を大規模に直接供給するプロジェクトが推進されている。

各地域がそれぞれの資源や条件を生かし、新たな発展の道を切り開いている。

地球の両側では、異なる選択が異なる結果を生んでいる。一方では電力不足によって新興産業の発展にブレーキがかかり、もう一方では豊富な電力を生かし、草原に計算処理産業が根付き始めている。

米国が小さな町の電力供給問題への対応に苦慮する一方、中国の草原ではAI時代の新たな成長エンジンが急速に形成されつつある。(c)CNS-三里河中国経済観察/JCM/AFPBB News