【三里河中国経済観察】南昌や石家荘など、中国の省都がGDP1兆元突破を目指す
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【10月30日 CNS】中国では、域内総生産(GDP)1兆元(約23兆6723億円)を超える都市の仲間入りを目指す動きが、新たな局面を迎えている。特に、その目標をまだ達成していない省都で、経済成長を加速させようとする動きが強まっている。
このほど、新たに選出された江西省(Jiangxi)南昌市(Nanchang)の党委員会書記は、「できるだけ早く域内総生産1兆元の大台を突破する」との目標を掲げた。河北省(Hebei)石家荘市(Shijiazhuang)や雲南省(Yunnan)昆明市(Kunming)も同様の目標を打ち出しており、石家荘市は省都の経済力を強化する「強省都戦略」を積極的に推進し、早期の1兆元突破を目指す方針を示した。
表現こそ異なるものの、各都市に共通するのは強い危機感だ。前進しなければ後退し、成長が遅れても競争から取り残されるという認識が背景にある。2006年、中国で初めてGDPが1兆元を突破した都市は上海だった。当時、1兆元は国内有数の大都市だけが達成できる水準だった。しかし、それから20年足らずで、GDP1兆元を超える都市は30近くに増えた。近年は省都や国の計画で独自の発展を進める「計画単列市」だけでなく、一般の地級市も相次いで仲間入りしている。
こうした地級市にとって、GDP1兆元突破は大きな飛躍を意味する。一方、省都にとっては、より高いレベルの都市間競争に参加するための重要な条件となりつつある。経済規模が小さければ、企業誘致で都市としての存在感を示しにくく、政策支援の獲得や人材確保でも不利になりかねない。GDP1兆元は最終目標ではないものの、都市の競争力を高めるうえで重要な節目となっている。
南昌、石家荘、昆明のGDPはいずれも8000億元(約18兆9378億円)台にある。1兆元という目標は決して遠すぎるわけではないが、容易に達成できる距離でもない。最後の1000億元(約2兆3672億円)を積み上げることは、それまでの9000億元(約21兆3050億円)を積み上げる以上に難しい場合もある。
こうした都市が本当に急いでいるのは、単なる経済規模の拡大ではない。省内における中心都市としての存在感と影響力を高めることだ。南昌は中国中部の省都の中で、省全体の経済に占める割合が必ずしも高くない。石家荘は河北省内で長年、経済規模の大きい唐山市の存在感に押されてきた。昆明も中国南西部で、成都や重慶といった大都市への産業や人材の集中という課題に直面している。
省都に十分な経済力がなければ、省全体が地域間競争を進めるうえで強力な拠点を欠くことになる。資源や人材が流出し、産業も集積しにくくなれば、地域の発展は不利な立場に置かれる。
つまり、これら3都市が表面的に目指しているのはGDP1兆元の達成だが、その本質は省内の中核都市としての地位を確立することにある。省都の強化は単なる体裁の問題ではなく、省全体の競争力に関わる重要な課題なのだ。
では、GDP1兆元突破をどのように実現するのか。かつて中国の都市が経済規模を拡大する方法は、主に二つあった。一つは投資による成長のけん引、もう一つは行政区域の再編・統合だ。
大型インフラ整備や不動産開発、大規模プロジェクトへの投資は、以前は短期間で経済規模を拡大する有効な手段だった。しかし現在、不動産市場は新規開発中心から既存物件の活用を重視する段階へと移り、土地売却収入に依存した地方財政の仕組みも転換を迫られている。大型インフラ投資も、かつてのような急速な拡大は難しくなった。
行政区域の統合による都市の拡大も、かつては近道の一つだった。安徽省(Anhui)合肥市(Hefei)、四川省(Sichuan)成都市(Chengdu)、山東省(Shangdong)済南市(Jinan)、吉林省(Jilin)長春市(Changchun)などは、その恩恵を受けてきた。しかし、現在は行政区域の再編に対する姿勢が慎重になっており、周辺地域を単純に編入する方法は、どの都市でも再現できるものではない。
今後、GDP1兆元を達成するには、産業そのものの競争力を高めることが不可欠となる。南昌の強みは製造業にある。電子情報、航空、新素材、新エネルギーなどの分野で一定の産業基盤を持つ。ただし、産業チェーンをどこまで拡充できるか、有力企業をどれだけ育成できるか、技術革新をどこまで進められるかが、安定した成長を維持する鍵となる。
石家荘は、バイオ医薬品、電子情報、設備製造などを重点産業に位置付けている。北京市・天津市(Tianjin)で研究開発を行い、その成果を石家荘で事業化するという構想も明確になりつつある。課題は、北京と天津に近いという地理的な優位性を、自らの産業競争力にどう結び付けるかだ。
一方、昆明は工業の割合が比較的低く、観光業やサービス業への依存度が高いという課題を抱える。工業による力強い下支えがなければ、GDP1兆元の達成は容易ではない。昆明は産業振興、とりわけ工業の発展に力を入れる方針を示しているが、重要なのはその実行力だ。
今回、南昌や石家荘などが掲げる省都強化の方針は、従来の「強省都戦略」とは異なるものになる必要がある。これまでの省都強化策は、場合によっては資源を省都に過度に集中させ、周辺地域の発展を妨げる結果を招いてきた。今後、省都に求められるのは、周辺地域から資源を吸い上げる存在ではなく、省全体の成長をけん引する役割だ。
その参考となるのが合肥の取り組みである。合肥は新興産業の育成や、投資資金を活用した企業誘致を通じて、自らの経済成長を実現するとともに、安徽省全体の発展にも波及効果をもたらしてきた。
省都を強化する本来の目的は、周辺地域の資源を集めることではなく、産業全体の規模を拡大し、その成長効果を省内各地に広げることにある。南昌や石家荘にとって、GDP1兆元はあくまで段階的な目標にすぎない。より重要なのは、1兆元を突破した後、省全体の発展をけん引できるか、そして中国の都市間競争の中で、より高い地位を確立できるかという点だ。
GDP1兆元を超える都市は今後も増えるとみられ、地域間競争が止まることはない。南昌は「できるだけ早く」、石家荘は「早期に」、昆明は「持続的な成長」を掲げる。言葉は違っても、その背景にある危機感は共通している。
この競争は表面的にはGDPの数字をめぐる争いだが、その背後には都市の競争力、産業基盤、地域経済における影響力をめぐる争いがある。危機感を持つこと自体は悪いことではない。しかし、危機感だけでは目標を達成できない。今後は、それぞれの都市がどのような具体策を講じ、成長につなげていくかが問われる。(c)CNS-三里河中国経済観察/JCM/AFPBB News