検察へ送致されるチャン・ユンギ被告(c)news1
検察へ送致されるチャン・ユンギ被告(c)news1

【10月29日 KOREA WAVE】韓国政府が、凶悪犯罪者を社会から永久に隔離するため、「仮釈放のない終身刑」の導入を進める。無期懲役を言い渡された受刑者が仮釈放される可能性をなくし、被害者や遺族の人権を守る狙いだ。一方、更生の機会を閉ざすことへの懸念や、死刑制度との整合性など、憲法上の議論も予想される。

法務省は10月23日、イ・ジェミョン(李在明)大統領が主宰した安全対策に関する政府横断会議で、制度導入を積極的に推進すると報告した。出席したチョ・ウォンチョル法制処長も、死刑に代わる有効な対応策として賛意を示した。導入には刑法改正が必要となる。現行刑法第72条では、無期刑の受刑者は改悛の情が明らかな場合、20年経過後に仮釈放の対象となり得る。2026年に仮釈放された無期刑の受刑者は計13人だった。

凶悪犯罪者の仮釈放に反対する世論を背景に、関連法案は以前から提出されてきた。政府は2023年10月、仮釈放を認めない無期刑を新設する刑法改正案を国務会議(閣議)で決定した。当時のハン・ドンフン(韓東勲)法相は、被害者と遺族の苦痛を踏まえ、「善良な国民を守るために必要な制度だ」と説明した。しかし、法案は第21代国会の任期終了で廃案となった。

最近の凶悪事件を受け、議論は再び活発になっている。10月20日の国政監査では、光州の女子高校生殺害事件で無期懲役を言い渡されたチャン・ユンギ被告について、仮釈放すべきではないとの指摘が出た。与党「共に民主党」のパク・チウォン議員は「遺族が仮釈放のない無期懲役で満足するだろうか」と述べ、最高刑である死刑の適用を求めた。国会では、共に民主党のソ・ヨンギョ議員が2024年に提出した刑法改正案が審議待ちとなっている。法務省は、改正論議に積極的に協力する方針を示しており、議論の本格化が見込まれる。

一方、更生の可能性を一律に排除する制度は、人間の尊厳を侵害するとの批判もある。欧州人権裁判所やドイツ連邦憲法裁判所は、更生の程度を審査して釈放を検討する「最低限の現実的な機会」さえ奪う終身刑は、人間の尊厳を侵害すると判断している。韓国は事実上の死刑廃止国でありながら、法律上は死刑を存置している。そこに永久隔離という点で同様の効果を持つ終身刑を加えれば、刑罰体系の整合性を損なうとの指摘もある。韓国最高裁も2023年、死刑を廃止し、その代替として導入することを前提に議論すべきだとの意見を示した。

法曹界の見方も分かれる。現職検事の一人は、仮釈放の可能性がなくなることで刑罰の厳しさが増し、犯罪抑止効果が期待できると話した。

西江大学法科大学院のパク・ヨンチョル教授は、社会と被害者を守る方策として検討できるとしつつ、「社会復帰を生涯にわたり閉ざす以上、更生の可能性や誤判からの救済策を慎重に検討すべきだ」と指摘した。さらに、適用対象や量刑・再審査の基準、再審査の時期などを精密に設計し、憲法と刑事政策の両面から十分に検討する必要があると強調した。

(c)news1/KOREA WAVE/AFPBB News