【10月30日 東方新報】2026年のノーベル文学賞(Nobel Prize in Literature)が10月8日に発表され、カナダの女性詩人アン・カーソン(Anne Carson)氏が受賞した。毎年、ノーベル文学賞の有力候補として名前が挙がる日本の作家、村上春樹(Haruki Murakami)氏は今年も受賞を逃した。しかし、受賞を逃したこと以上に注目を集めたのが、「村上春樹の生活習慣が健康的すぎる」という話題だ。10月9日には、中国のSNS「微博(ウェイボー、Weibo)」の検索ランキングで一時1位となった。

早寝早起き、仕事が終われば休む

話題の投稿では、村上氏が何十年にもわたって続けてきたという一日のスケジュールが紹介されている。午前4時に起床して朝食をとり、コーヒーを飲む。午前4時から10時までは執筆に没頭する。その後は運動や日常の用事、食事、休息、人との交流などに時間を充て、午後9時には就寝する。

朝の時間帯は、コルチゾールの分泌が増加し、集中力が高まりやすいとされる。こうした時間を創作に効率よく活用し、執筆を終えた後は仕事から離れる。この「短時間で集中して取り組み、終わったら休み、早寝によって翌日に備える」という生活スタイルが、村上氏の安定した創作活動を何十年にもわたって支えてきた。心身の健康を保ちながら長く創作を続ける、まさに「健康を重視した持続可能な創作スタイル」といえる。

クリエーティブ業界における「理想的な健康習慣」ともいえるこの生活スタイルが話題になると、多くのクリエイターや会社員の間でも関心が高まった。

中国のネットユーザーの多くは、創造的な仕事で大切なのは、一時的に力を発揮することではなく、長期にわたって創作活動を続けることだと指摘する。体内時計に合わせて早寝早起きをし、仕事が終わったらしっかり休む村上氏の生活スタイルは、一般の人にとっても長く実践できるものだという。夜更かしによる心身の消耗を避け、体のリズムに合わせて生活することが、仕事と私生活のバランスを保ち、安定した成果を出し続けることにつながる。

同じような生活習慣を実践している中国のネットユーザーからは、こんな声も寄せられた。「若い頃に『走ることについて語るときに僕の語ること』を読んで、ランニングと村上春樹の生活習慣に憧れるようになりました。今では16年間ランニングを続けています。子どもが小学校に入学してからは、起床時間も午前4時40分に早まりました。以前、時々仕事をしなければならないことがあり、その際も朝が最も効率よく作業できると感じました。コーヒーを一杯飲み、頭が少しずつ目覚めるのを待つ。誰にも邪魔されず、静かに過ごせる時間です」

繰り返すこと自体に意味がある

世界の文学界を見渡すと、早朝の執筆を実践してきた著名な作家は少なくない。

米国の作家アーネスト・ヘミングウェイ(Ernest Hemingway)氏も、いつも早朝に執筆していた。彼は、朝は寒いこともあるが、書いているうちに体が温まってくると語っている。午前6時に書き始め、正午まで執筆を続けた。筆を置いた後に感じる、空っぽでありながら満たされているような感覚に、ヘミングウェイは満足感を覚えていたという。

米国の作家トニ・モリスン(Toni Morrison)氏にとって、夜明け前の執筆は必要に迫られて始めた習慣だった。彼女は幼い子どもを育てながら執筆していたため、子どもたちが起きる前の時間を利用していたという。また、まだ暗いうちに起きてコーヒーを入れ、夜が明けていくのを眺めることを習慣にしていた。彼女にとって、光は執筆へと気持ちを切り替える合図だった。大切なのは光の中にいることではなく、光が訪れる前からそこにいることだったという。

中国の近現代の随筆家、梁実秋(Liang Shiqiu)氏も「早起き」について深い思いをつづっている。「思い切って布団から飛び出すことは、特に北方のように寒い地域では、決して容易なことではない。だからこそ、早起きは『人として一日を始める最初の行為』と呼ばれるのだ。布団にくるまったまま出てこなければ、それは一日の始まりにして最初の敗北となる」

起床時間だけでなく、愛飲する飲み物にも作家それぞれのこだわりがある。

「近代フランス小説の父」と称されるオノレ・ド・バルザック(Honore de Balzac)氏は、執筆中にコーヒーを飲むことを好んだ。研究者の推計によると、その生涯で飲んだコーヒーは少なくとも5万杯に上るという。米国の作家トルーマン・カポーティ(Truman Garcia Capote)氏はコーヒーやミントティー、シェリー酒などを好んだ。一方、中国の現代作家、林清玄(Lin Qingxuan)氏はお茶をこよなく愛し、日々の暮らしを一杯のお茶になぞらえながら、何よりも大切なのはお茶を飲むときの心持ちだと考えていた。

生活習慣は人それぞれである。しかし、こうして作家たちの暮らしを振り返ると、共通点が見えてくる。起床時間が何時であれ、彼らは一日のスケジュールを定め、毎日欠かさず創作のための時間を確保している。

村上氏もこう語っている。「毎日、同じ生活を繰り返し、決して変えません。この繰り返し自体が重要になっていきます。それは一種の催眠術のようなもので、自分自身に深く入り込み、意識のより深いところへと入っていくのです」

日々の習慣を守り、地道に積み重ねていくことが、やがて成果につながる。(c)東方新報/AFPBB News