【三里河中国経済観察】広東省、AI産業の発展を加速
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【10月29日 CNS】中国の国慶節連休明け初日の10月8日、広東省(Guangdong)党委員会の黄坤明(Huang Kunming)書記は深セン市(Shenzhen)を視察し、インターネット大手の騰訊(テンセント、Tencent)本社を訪れた。
座談会では、テンセントの馬化騰(Pony Ma)董事会主席兼最高経営責任者(CEO)が発言した。その隣には、同社の首席AI科学者を務める28歳の姚順雨(Yao Shunyu)氏が座っていた。この場面は、広東省とテンセントが人工知能(AI)の発展を重視していることを象徴するものと受け止められている。
中国最大の経済規模を持つ広東省は、AIを今後の重点産業の一つに位置付けている。
広東省は2025年の春節(旧正月、Lunar New Year)明けに開かれた最初の重要会議で、AIとロボットの2分野に重点的に取り組む方針を示した。現在は、第15次5か年計画(2026~2030年)およびそれ以降の長期的な重点発展分野としてAIを位置付け、関連産業の育成と技術の実用化を加速させている。広東省のAI産業はすでに一定の規模を持つ。2025年には省内のAI中核産業の規模が3000億元(約7兆491億円)を超え、全国の約4分の1を占めた。
一方、AI技術の進歩は速く、広東省はさらなる産業競争力の強化を目指している。広東省の経済を支える主要産業は製造業だ。世界的に製造現場のスマート化が進む中、同省も豊富な製造業の現場をAI技術の実証・導入の場として活用し、生産工程の効率化や課題解決につなげようとしている。
10月9日に開かれた広東省先進製造業大会では、AIを先進製造業に幅広く、かつ高度に導入する方針が示された。これに先立つ4月には、「広東省におけるAIの全地域・全時間帯・全業種への高度な応用を加速する行動計画」が発表された。
この計画は、AIの活用を特定の業種や地域に限定せず、製造業をはじめとする幅広い産業や社会のさまざまな場面に広げることを目的としている。ただし、政策の策定だけではAIの普及は進まない。実際の導入を担う企業の役割が重要となる。
その中でも、広東省が大きな期待を寄せているのがテンセントだ。
広東省は同社に対し、省内のAIインフラ整備への積極的な参加や、AIの計算処理能力を支える設備への投資拡大を求めている。さらに、汎用大規模言語モデルと業種別の専門モデルの開発・高度化、AI技術の実用化と普及を通じて、産業全体のスマート化を支援することを期待している。
一方、テンセント自身もAI事業の強化を急いでいるが、その取り組みは必ずしも順調に進んできたわけではない。
2026年5月の株主総会で、馬CEOはAI事業の現状について、次のように語った。「1年前は、すでに船に乗れたと思っていたが、後になってその船に水漏れがあることに気付いた。今はようやく船に乗れた感覚はあるものの、まだ落ち着いて座れる状態ではない。船の速度がもっと上がってほしいと思っている」
この発言からは、AI分野での競争が激化する中、同社が事業の進展を急いでいる様子がうかがえる。
実際、テンセントはAI関連投資を大幅に拡大している。2026年第2四半期の設備投資額は528億元(約1兆2406億円)となり、前四半期比65%増、前年同期比176%増を記録した。
投資の主な対象は、AI向けの計算処理設備やデータセンターなどのインフラだ。また、AI人材の確保にも力を入れている。その中心人物の一人が、1998年生まれの姚順雨氏だ。姚氏は清華大学(Tsinghua University)のコンピューター科学分野の特別教育プログラム「姚班」を卒業し、2019年に米プリンストン大学(Princeton University)の博士課程に進学した。
2024年に博士号を取得した後、米オープンAI(OpenAI)に入社し、「Operator」や「Deep Research」などの開発プロジェクトに携わった。2025年末にテンセントへ移籍し、CEO・総裁室の首席AI科学者に就任した。同時に、AIインフラ部門と大規模言語モデル部門の責任者も兼務し、AI関連事業の開発と推進を担当している。
なお、馬CEOが1998年にテンセントを創業した当時の年齢は27歳で、姚氏がテンセントに入社した際も同じ27歳だった。姚氏が開発を主導する中、テンセントはAIモデル「混元Hy3」を発表した。公開初週の利用回数は68倍以上に増加したという。
また、AIを活用した業務効率化サービス「WorkBuddy」や、AIプログラミング支援ツール「CodeBuddy」も利用を伸ばしている。2026年は、テンセントのAI事業が投資段階から商業化へ移行する重要な年と位置付けられている。
今後の課題は、大規模AIモデルを工場や小売店、病院などの実際の業務に導入し、継続的な収益につなげることだ。製造業をはじめ、多様な産業が集積する広東省は、こうしたAI技術の実用化を進める上で重要な市場となる。
間もなく55歳を迎える馬CEOと、28歳の首席AI科学者である姚氏がそろって広東省トップとの会合に出席したことは、テンセントがAI事業を重視している姿勢を示すものといえる。(c)CNS-三里河中国経済観察/JCM/AFPBB News