海上のいけすに設置された「UMITRON CELL」=シーフードレガシータイムズ掲載=UMITRON(c)news1
海上のいけすに設置された「UMITRON CELL」=シーフードレガシータイムズ掲載=UMITRON(c)news1

【10月27日 KOREA WAVE】飼料費の高騰、人手不足、気候変動に直面する水産養殖業で、人工知能(AI)や衛星データを活用するスマート養殖が広がっている。韓国でも関連拠点の整備が進むが、専門家は装置の普及にとどまらず、現場の経験をデータとして蓄積・共有する基盤が必要だと指摘する。

国連食糧農業機関(FAO)によると、世界の養殖生産量は2022年に初めて漁獲量を上回り、2024年には水産物生産全体の53%を占めた。一方、養殖現場では飼料費の上昇や漁村の高齢化に加え、水温変化、赤潮、台風への対応が課題となっている。韓国海洋水産開発院の分析では、世界のスマート養殖市場は2016年の約13兆ウォン(約1兆5400億円)から2023年には約43兆ウォン(約5兆800億円)に拡大。2030年には約137兆ウォン(約16兆2000億円)となり、養殖市場全体の40.7%を占める見通しだ。

ノルウェーはサーモン養殖の大規模企業化と遠隔監視を進め、欧州連合(EU)は海洋衛星観測データを民間に開放している。日本もAI給餌技術の脱炭素実証や量産化を支援し、韓国海洋水産省は各地にスマート養殖クラスターを整備している。

先行事例として注目されるのが、日本とシンガポールに拠点を置くウミトロンだ。2016年に宇宙航空研究開発機構(JAXA)で衛星研究に携わっていた藤原謙代表らが創業した。主力の自動給餌装置「UMITRON CELL」は、水中カメラで魚群を撮影し、独自の「魚類食欲指数(FAI)」で食欲を分析。餌の量と供給速度を自動調整する。導入した養殖場では飼料費を10~20%削減し、食べ残しによる水質汚染も抑えた。成育改善による出荷期間の短縮や燃料費削減に加え、温室効果ガス排出量も製品100グラム当たり約20%減らしたという。

同社は衛星データによる水温などの監視、エビの状態把握、既存カメラに対応するソフトウエア、陸上養殖用給餌機、クラウド経営管理にも事業を拡大。環境に配慮した養殖水産物のブランド展開で、生産から流通までを手掛けている。

韓国は世界上位5位圏の養殖生産国だが、現場のデジタル化は初期段階にある。国内企業も水質監視や魚の成育画像分析、病気の判読などを支援しているものの、小規模で分散した生産構造とデータ標準化の不足が普及を妨げている。

国立釜慶大学のキム・ドフン教授は「ウミトロンの本質は給餌機という装置ではなく、現場の経験知をデータに変え、それがAIの資産となる循環構造だ」と指摘。クラスター事業を国家的な養殖データ基盤の整備として再設計し、産学研でデータを蓄積すべきだと提言した。さらに、機器製造だけでなく、AI開発や定額利用型ソフトウエアへの事業転換、海外進出も必要だとした。具体策として、小規模養殖業者への低価格センサー導入、大企業参入による規模拡大と既存業者との共存、ヒラメやアワビなど主要養殖種向けAIの開発、環境・スマート認証を生かした高付加価値流通を挙げた。キム・ドフン氏は「データに基づくスマート養殖への転換は、韓国水産業の衰退と飛躍を分ける分岐点であり、生存の問題だ」と強調。政府、企業、研究機関が連携し、若者が戻る水産業を実現するよう求めた。

(c)news1/KOREA WAVE/AFPBB News