北朝鮮のキム・ヨジョン(金与正)朝鮮労働党総務部長=労働新聞より(c)news1
北朝鮮のキム・ヨジョン(金与正)朝鮮労働党総務部長=労働新聞より(c)news1

【10月23日 KOREA WAVE】北朝鮮が、9月の非武装地帯(DMZ)での地雷爆発事故を機に高まった南北間の緊張を、国内の住民には伝えていない。韓国向け拡声器放送の再開や軍事力の増強を示唆する一方、国内向けの宣伝を控えており、専門家は「国境線の要塞化」を静かに完遂したい意図があると分析している。

北朝鮮は地雷爆発について、北朝鮮軍が埋設した地雷によるものだとする韓国軍と国連軍司令部の調査結果を否定した。その後、要塞化作業に伴う休戦協定違反に韓国軍が警告放送や警告射撃で対応すると、拡声器放送の再開や軍事境界線付近への部隊増強を示唆した。

こうした立場は主にキム・ヨジョン(金与正)朝鮮労働党総務部長の談話で発信されている。しかし、事故後に発表した7回の談話は、一度も労働新聞や朝鮮中央テレビで報じられていない。北朝鮮住民が接する主な国営メディアは、この新聞とテレビだ。朝鮮中央通信がインターネットで談話を公開しても、両媒体が転載・放送しなければ、住民が自由に内容を知る手段はない。

キム・ヨジョン氏は9月30日と10月2日に地雷爆発への関与を否定。8、9日には韓国側の「自作自演」と非難し、韓国政府の医療支援計画も批判した。19日には拡声器放送再開の可能性に触れ、21、22日にも放送や軍事力増強を巡る威嚇を続けたが、いずれも国内向けには報じられなかった。

過去の対応とは対照的だ。2020年6月、脱北者団体による北朝鮮向けビラ散布に反発した際は、キム・ヨジョン氏の談話を労働新聞に掲載し、平壌や開城などで大規模な韓国非難集会を開いた。労働者らの反応や論説も連日掲載し、住民の結束を図った。この局面では、開城工業団地内の南北共同連絡事務所の爆破にまで至った。2024年10月の「平壌への無人機侵入」問題でも、韓国の無人機が侵入したとする外務省声明を朝鮮中央通信で発表した翌日、労働新聞1面に声明全文と強硬な姿勢を示す記事を掲載。その後も住民の報復感情を強調した。

今回は軍事衝突の懸念がある措置まで言及しながら、住民の非難集会や大規模な宣伝は見られない。専門家は、北朝鮮の最優先課題が対立の激化ではなく、最高指導者の命令である要塞化の完了にあるとみる。キム・ヨジョン氏も作業を「聖業」「大業」と位置付け、完成すれば南北の軍事衝突の危険が下がると主張している。実際に拡声器放送を再開すれば接境地域の住民にも知られ、韓国側の対抗放送や偶発的衝突によって工事が滞る恐れもある。このため、放送再開の可能性を低くみる見方も出ている。

年末の経済成果に力を注ぐ中、全国規模で韓国への敵対感情をあおる活動を展開するのは負担だとの分析もある。北韓大学院大学のヤン・ムジン碩座教授は「要塞化をできるだけ静かに終えようとしている」と指摘。労働新聞に掲載すれば各職場などで韓国への敵対心を高める活動が必要となり、国力の集中に役立たないと判断した可能性を挙げた。慶南大学極東問題研究所のイム・ウルチュル教授は、韓国との関係を断つよう求めながら韓国の情報を逐一伝えることは「敵対する二つの国家」という政策方針に逆行すると説明。韓国関連の報道を最小限に抑える方が、内部結束に役立つと判断していると分析した。

(c)news1/KOREA WAVE/AFPBB News