韓国・京畿道坡州市の接境地域から見えた北朝鮮側の拡声器=10月22日(c)news1
韓国・京畿道坡州市の接境地域から見えた北朝鮮側の拡声器=10月22日(c)news1

【10月23日 KOREA WAVE】北朝鮮が軍事境界線付近の緊張への対抗措置として、韓国向け拡声器放送の再開を持ち出した。韓国の接境地域で住民の不安や不満を高め、政府の対応力を弱める狙いがあるとみられる。ただ、先に放送を再開すれば国際的な批判や韓国軍の対抗措置を招く可能性があり、北朝鮮にとっても利益の大きい選択とはいえない。

専門家は、北朝鮮がキム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党総書記の命令である「国境線の要塞化」の完遂を急ぎ、作業の妨げとなる韓国軍の警告放送や警告射撃に極めて敏感になっていると分析する。韓国のイ・ジェミョン(李在明)大統領に直接介入させ、軍の対応を抑えようとする苦肉の策という見方だ。

北朝鮮は2023年12月、南北を「二つの国家」とする路線を確定し、翌年4月から軍事境界線全域でコンクリート壁や鉄条網の設置、地雷埋設などを進めている。朝鮮中央通信が21日に公開した写真では、高さ2メートルを超えるとみられる壁も確認された。

キム・ヨジョン(金与正)党総務部長は21日、軍事境界線一帯を視察。「敵対国家との国境線を最も恒久的な線にせよ」とのキム・ジョンウン氏の命令に言及し、要塞化を「聖業」「大業」と位置付けた。さらに21、22日の談話では、要塞化が完成すれば南北の軍事衝突の危険は大きく低下すると主張した。物理的な分離が軍事的安定につながるという論理で、韓国にも利益がある以上、作業に干渉するなと訴えていると受け止められる。当面は南北が「別々に暮らす」状態を国家の方針として追求する姿勢がうかがえる。

キム・ヨジョン氏は韓国大統領府の側近や政府当局者を激しく非難する一方、イ・ジェミョン氏本人への直接的な非難は抑えている。専門家は、側近らの判断を退け、大統領自身が決断するよう促す意図があるとみる。2025年の政権発足から1週間でイ・ジェミョン氏が対北朝鮮拡声器放送の停止などに踏み切ったように、今回も軍の対応方針の調整を引き出そうとしているという。

北韓大学院大学のヤン・ムジン碩座教授は、同じ主張を繰り返すのは、韓国軍の警告放送や警告射撃で北朝鮮軍の危機感が高まり、作業が進みにくくなっていることの表れだと指摘。「韓国側が自制すれば、対応態勢の引き上げも拡声器放送も必要ないというのが本音」と分析した。

慶南大学極東問題研究所のイム・ウルチュル教授も、北朝鮮は要塞化を急ぐため、逆に韓国軍との物理的衝突を避けなければならないと説明する。キム・ヨジョン氏も、新たな射撃陣地や戦術的打撃手段の増強に触れつつ、撃ち返せば情勢が著しく悪化するとして「高い自制力」を強調した。放送再開には追加要員が必要なうえ、韓国軍の対抗措置への対応や、偶発的衝突による工事中断のリスクも伴う。イム・ウルチュル氏は、接境地域の不安を刺激してイ・ジェミョン政権を圧迫する手段である一方、北朝鮮軍の疲労や衝突の危険を増す「自縄自縛」になり得ると指摘した。

北朝鮮は2000年代に入ってから、先に拡声器放送を始めたことはないとされる。今回の予告も、放送再開そのものより、要塞化に対する韓国政府と軍の対応を変えさせることが主眼の可能性がある。

(c)news1/KOREA WAVE/AFPBB News