【10月23日 CNS】コーヒーといえば、オフィス街で働く人びとの定番の飲み物というイメージが強い。しかし現在、中国ではコーヒー店の約4店に1店が県級行政区域に出店している。

中国メディアとデータプラットフォームが共同で発表した「中国コーヒーヒートマップ」によると、過去3年間で県級行政区域のコーヒー店は103.41%増加し、北京市や上海市などの一線都市、二線都市の増加率を大きく上回った。店舗総数は6万5519店に達し、新一線都市の店舗数の合計を超えた。

また、チベット自治区(Tibet Autonomous Region)ラサ市(Lhasa)や雲南省(Yunnan)麗江市(Lijiang)などでは、人口1万人当たりのコーヒー店の数を示す店舗密度が、北京市、上海市、広州市(Guangzhou)といった一線都市を上回っている。

コーヒー店の密度で首位となったラサでは、伝統的な甘いミルクティーを提供する茶館とカフェが隣り合っている。地元のコーヒーは大都市のスタイルをそのまま取り入れたものではなく、チベットの特産品である青稞(ハダカムギ)や地域独特の食文化を生かしたアレンジが特徴だ。

地元ブランド「檸渡咖啡」は、チベット伝統の木製の器で提供する「ラサラテ」を考案した。ヤクの乳から作られる乳製品「奶渣」やバターをラテに加え、地元で親しまれるチベット式の甘いミルクティーとコーヒーの要素を融合させている。

北京から訪れた観光客の王思聞(Wang Siwen)さんは、「奶渣やバターによってバター茶のような風味が感じられるが、基本はコーヒー。ラサの日常的な食文化を取り入れていて、とても独創的だ」と驚きを語った。

この高原ならではの味わいは、観光客だけでなく海外でも注目を集めている。2025年5月には「ラサラテ」がロンドン・コーヒー・フェスティバルに出品され、独特のチベット風味が海外の消費者から好評を得た。

一方、南西部の雲南省大理市(Dali)は、県級行政区域のコーヒー店数で全国首位となっている。

大理では、コーヒーは単なる飲み物ではなく、蒼山や洱海の美しい風景、ペー族の文化や暮らしと結び付き、ゆったりとした生活スタイルの一部になっている。

広州から訪れた観光客の呉沢豊(Wu Zefeng)さんは、「旧市街の石畳の路地や黄金色の麦畑のそば、洱海沿いのテラスなど、至る所にコーヒーの香りが漂っている」と話す。「ここでコーヒーを買うことは、ゆっくり過ごす時間を買うことでもある。雲の流れを眺めながら特製コーヒーを味わっていると、仕事で張り詰めていた気持ちがすぐにほぐれる」という。

ただし、大理のコーヒー文化は観光需要だけに支えられているわけではない。地域には独自のコーヒー栽培の歴史がある。雲南省で広く栽培されている小粒種コーヒーの発祥地とされるのが、大理市に近い賓川県の朱苦拉村だ。

同村には樹齢100年以上のコーヒーの木が20本以上、平均樹齢70年の古木が1000本以上残されており、古くからのコーヒー林を形成している。このため、朱苦拉村は「中国コーヒー第一村」と呼ばれ、朱苦拉コーヒーは中国のコーヒー栽培の歴史を伝える「生きた化石」として国内外で知られている。

鉄鍋で豆を焙煎し、石臼でひき、土製の容器で煮出す伝統的なコーヒーの製法は、雲南省級無形文化遺産の代表的な継承事業に指定されている。

地元のカフェの多くは、朱苦拉村や雲南省各地で生産されたコーヒー豆を使ったハンドドリップコーヒーを提供している。観光客は美しい風景を楽しむだけでなく、地域に根付いたコーヒー文化の歴史にも触れることができる。

一方、コーヒーの生豆を生産していない江蘇省(Jiangsu)昆山市(Kunshan)でも、コーヒー店が急増している。店舗数は雲南省大理市に次いで多い。

昆山市では、中国全体のコーヒー生豆焙煎量の約6割、生豆輸入量の6割以上を占めている。

エチオピアなど30か国以上から輸入されたコーヒー生豆が昆山に集まり、焙煎された後、中国各地のカフェへと出荷される。中国国内に8000店以上あるスターバックスの店舗で使用されるコーヒー豆も、その大部分が昆山で焙煎されている。

世界各地から集まったコーヒー豆が、江南地方の水郷の風景と結び付いている。

昆山市では、こうした産業基盤を生かして、コーヒー文化を農村部へ広げる取り組みも進めている。世界各地のコーヒー豆を農村のカフェに取り入れるとともに、コーヒーをテーマにした特色ある村づくりを模索し、農村のカフェを中心とした観光振興から、村全体をコーヒーの特色ある地域へと発展させようとしている。

現在、中国の大手コーヒーチェーンの出店地域は拡大を続けている。東は黒竜江省(Heilongjiang)撫遠市(Fuyuan)、西は新疆ウイグル自治区(Xinjiang Uighur Autonomous Region)カシュガル市(Kashgar)、南は海南省(Hainan)三亜市(Snaya)、北は黒竜江省漠河市(Mohe)まで、コーヒー文化は全国各地に広がっている。

専門家の分析によると、今後の中国コーヒー業界の発展を測る上では、より多くの都市や県級行政区域で安定的にコーヒーを提供できるか、そして地域の日常生活や消費文化にどれだけ定着できるかが重要な指標になるという。(c)CNS/JCM/AFPBB News