【10月21日 AFP】中国の井泉駐フィリピン大使が中国はフィリピンと戦えば「楽勝」だと発言した問題で、フィリピン外務省は19日、同大使を召喚し、抗議した。フィリピンでは上院議員らが同大使の国外追放を求めている。

フィリピン外務省の声明によると、マリア・テレサ・ラザロ外相は井大使に対し、「武力を行使すると脅す2026年10月15日の公式な発言について、深刻な懸念と強い異議」を表明した。

同省は「必要と判断した場合、さらなる外交措置を講じる権利を留保する」と表明。ラザロ氏は井大使の発言について「挑発的で容認できない」と伝えたという。

これに対し井大使は、フィリピンに対して武力を行使すると脅したとの指摘には「同意できない」と述べる一方、台湾問題をめぐってフィリピンが「好ましくない動き」を見せていると非難した。

国連海洋法条約に基づくオランダ・ハーグの仲裁裁判所は2016年、南シナ海の広範な海域で「歴史的権利」を主張する中国の立場には、国際法上の根拠がないと判断した。それにもかかわらず、中国は判断を受け入れず、南シナ海のほぼ全域に対する領有権を主張し、フィリピンなどとしばしば衝突している。

井大使の発言は、フィリピンのギルベルト・テオドロ国防相が中国を地域の「トラブルメーカー」と呼んだ翌日に飛び出した。

テオドロ国防相は14日、同国のサラ・ドゥテルテ副大統領がフィリピンを東南アジアのトラブルメーカーと呼んだことに異議を唱え、「トラブルメーカーは中国だ。南太平洋にまで干渉し、ミサイルまで発射している」と述べ、太平洋諸国の反発を招いた中国軍による7月のミサイル発射実験に言及した。

井大使はこの発言に反発し、「この地域で中国のような隣国を持てて幸運に思うべきだ」と述べた。

さらに「武力に訴えようと思えば、楽勝だろう。しかし、そうはしない。われわれは武力を選ばない。平和を愛しているからだ」と続けた。

この発言を受け、上院議員少なくとも2人を含むフィリピンの政治家らが同国政府に対し、井大使を国外追放するよう求めた。

中国大使館の公式フェイスブックページへの投稿によると、井大使は19日夜、発言の趣旨について「われわれには能力があるが、武力を行使する意図はないということだ。われわれは友人であり、近しい隣国だからだ。武力に訴える必要はない」と釈明した。

井大使はまた、台湾問題をめぐるフィリピンの「好ましくない動き」を非難した。中国政府は台湾を自国の領土とみなし、台湾を孤立させるため、各国に台湾との関係を断つよう組織的に圧力をかけている。

井大使は具体的な内容には触れず、「中国側はこれを強く懸念し、厳正な申し入れを行った。フィリピン側が中国の核心的な懸念を尊重しないのであれば、どうして中国から同様の尊重を期待できるのか」と述べた。

中国政府は19日、「フィリピンの一部の人物が中国に関する問題を悪意を持って騒ぎ立て、中比関係を損なっている」と主張した。

中国外務省の毛寧報道局長は定例記者会見で、「フィリピン側は一部の政治家による無責任な言動を効果的に抑制すべきだ」と述べた。

これに先立ち、フィリピンのアーウィン・トゥルフォ上院議員の事務所は19日、井大使を「ペルソナ・ノン・グラータ(好ましからざる人物)」に指定するよう求める決議案を提出した。(c)AFP