北朝鮮のキム・ヨジョン(金与正)朝鮮労働党総務部長=2022年8月11日、朝鮮中央テレビの放送画面(c)news1
北朝鮮のキム・ヨジョン(金与正)朝鮮労働党総務部長=2022年8月11日、朝鮮中央テレビの放送画面(c)news1

【10月20日 KOREA WAVE】北朝鮮のキム・ヨジョン(金与正)朝鮮労働党総務部長は19日、軍事境界線(MDL)付近で韓国軍が北朝鮮兵士に警告放送や警告射撃を繰り返していると非難し、対抗措置として韓国向け拡声器放送の再開を検討していると明らかにした。戦術的打撃手段の増強配備も示唆し、軍事的圧力を強める姿勢を示した。

キム・ヨジョン氏は朝鮮中央通信を通じて発表した「われわれは主権を守るために言葉だけで対応することはない」と題する談話で、韓国軍が8月1日から10月17日まで、北朝鮮側の国境封鎖工事に従事する兵士らに対し、軍事境界線を越えたとの「根拠のない言いがかり」をつけ、自動小銃や大口径機関銃で警告射撃を加えていると主張した。

韓国軍は、北朝鮮が2024年4月から進めている鉄条網や対戦車障害物の設置、地雷埋設などの国境要塞化工事で、北朝鮮兵士が軍事境界線を越えた場合、警告放送や警告射撃で対応している。南北間では、休戦協定で設定された軍事境界線の位置を巡って認識に違いがある。

キム・ヨジョン氏は、8月1日から10月17日までに韓国軍が警告放送を2870回、警告射撃を201回実施したと主張。特定の監視所だけでも10月1~17日に警告放送998回、警告射撃91回があり、15~17日にはそれぞれ約350回、約60回に集中したと訴えた。

また、韓国のイ・ジェミョン(李在明)政権について「発足当初から和解と平和を掲げ、融和的な姿勢を演出していたが、反共和国的な対決策動は、露骨に反共をあおったユン・ソンニョル(尹錫悦)政権をはるかに上回っている」と強く批判した。

そのうえで「軍指導部は先制的かつ制圧的な措置として、南部国境線全域への戦術的打撃手段の増強配備と、韓国向け拡声器放送の再開を検討している」と表明。必要と判断すれば、追加措置も講じる可能性があると警告した。さらに「ソウルは軍部の無謀な行動によって、後悔しても対処しきれない危険に直面することになる」と威嚇した。

北朝鮮は2025年6月、イ・ジェミョン氏の指示で韓国軍が北朝鮮向け拡声器放送を停止したことを受け、翌日から韓国向け騒音放送を中止していた。今回、約1年4カ月ぶりに放送再開の可能性に言及したことで、南北境界地域の軍事的緊張が再び高まる懸念が出ている。

専門家らは、北朝鮮が韓国軍の通常の警戒活動を「挑発」と位置付けることで、国境の要塞化を正当化するとともに、将来の軍事衝突の責任を韓国側に転嫁しようとしていると分析する。韓国・慶南大学極東問題研究所のイム・ウルチュル教授は「韓国軍の警告放送と警告射撃が、北朝鮮の国境要塞化工事を完成させるうえで妨害要因になっていることを示している」と指摘した。

一方、北韓大学院大学のヤン・ムジン碩座教授は、キム・ヨジョン氏が軍事的対応について「検討」「考慮」という表現を使った点に注目。「緊張の度合いを調整し、事態の悪化を防ぎながら段階的に圧力を強める意図がある」と分析した。ただ、南北間の連絡・対話ルートが途絶えている状況では、緊張を高める行為が軍事衝突につながる恐れがあると警告。前線部隊の警戒強化による兵士の疲労蓄積も、偶発的な衝突の危険を高める要因になると懸念を示した。

(c)news1/KOREA WAVE/AFPBB News