【10月21日 CNS】中国では最近、投資関連の統計や動向に関心が集まっている。今年1~8月の全国固定資産投資(農家を除く)は前年同期比7.2%減少し、一部で懸念が広がった。しかし、現在の投資減少を捉えるには、数字だけでなく、その構造的な変化にも目を向ける必要がある。従来の成長エンジンの調整に伴う減少と、新たな成長エンジンの台頭による増加を見極め、新旧の成長エンジンが転換する仕組みを客観的に理解することが重要だ。

現在の投資成長率の低下は、中国の投資構造が大きな転換期を迎えていることを示している。かつて投資の急成長を支えてきた不動産、従来型インフラ、従来型製造業という「三本柱」は、いずれも調整局面に入っている。

不動産開発投資は2021年の14兆7600億元(約348兆7758億円)から2025年には8兆2800億元(約195兆6547億円)へと約44%減少し、2026年1~8月も前年同期比19.9%減となった。第14次5か年計画(2021~2025年)期間中には交通関連投資の伸びが大きく鈍化し、都市の公共インフラ投資はマイナス成長となった。2026年1~8月のインフラ投資も4.0%減少した。また、従来型製造業では生産能力の拡大が進んだ結果、設備稼働率が低下し、同期間の製造業投資は2.3%減となった。

従来の成長エンジンを支える投資が減少している根本的な原因は、これまでの投資拡大型の成長モデルが持続しにくくなっていることにある。不動産市場では既存住宅が中心となる時代を迎え、大規模な土地取得や新規着工を繰り返す拡張モデルは終わりを迎えた。従来型インフラも長年の建設によって交通やエネルギーなどの基盤がおおむね整備され、新たな大規模開発の余地が縮小している。地方財政の制約も強まる中、従来型製造業の一部では生産能力が飽和状態に近づき、企業の設備増強意欲も弱まっている。

一方、投資構造には明るい動きも見られる。2026年1~8月のハイテク産業投資は前年同期比5.2%増加し、伸び率は3カ月連続で加速した。このうち情報サービス業への投資は22.7%増加した。知的財産関連製品への投資は9.2%増加し、投資全体に占める割合は前年同期を2.3ポイント上回る15.2%となった。設備・工具・器具の購入投資は9.3%増加し、全体に占める割合は19.5%に上昇した。情報伝送業への投資も28.4%増加している。投資の重点は、規模の拡大から科学技術イノベーションや産業の高度化へと移りつつある。

ただし、新たな成長エンジンの規模は、従来の成長エンジンの縮小を完全に補うには至っていない。ハイテク産業投資が全体に占める割合はまだ11%に満たない一方、不動産投資とインフラ投資を合わせた割合は50%近くに達する。従来型の投資は土地や工場、大規模工事などを中心とするため投資額が大きいが、新たな成長分野では無形資産への投資が多く、事業ごとの投資額は比較的小さい。そのため、新たな成長分野の投資が高い伸び率を示していても、増加額だけでは従来型投資の減少分を埋められない。

また、投資統計の対象や集計方法にも注意が必要だ。従来の固定資産投資統計は有形資産を中心としており、研究開発、ソフトウエア、データなどへの投資は企業の日常的な経営活動に分散しているため、把握が難しい。国レベルでは知的財産関連製品への投資統計が整備されているものの、地域別の統計制度はまだ十分に確立されていない。教育や職業訓練、健康などの人的資本に関する支出も、現在の国民経済計算では大部分が消費として扱われる。こうした統計上の違いによって、新旧の成長エンジンの投資規模の差が、実態以上に大きく見える面もある。

新旧の成長エンジンの関係を考える際には、二つの極端な見方を避ける必要がある。一つは、投資の安定化を不動産や従来型産業への投資拡大と単純に結び付ける考え方だ。もう一つは、従来の成長エンジンをすべて時代遅れとみなし、新しい産業に置き換えるべきだとする考え方である。実際には、新旧の成長エンジンは対立するものではなく、共存し、互いに発展を促す関係にある。その本質は、既存産業の質を高めながら、新たな成長分野を育成することにある。

不動産、従来型インフラ、従来型製造業は、今なお中国の実体経済を支える基盤であり、巨大な産業チェーンやサプライチェーン、多くの雇用を抱えている。従来型インフラ投資は大規模な新規建設から、不足する機能の補完や品質・効率の向上へと重点を移しており、都市再開発、水利事業、防災・減災体制の整備などには、依然として大きな投資余地がある。「六つのネットワーク」の整備も各方面から注目されている。

従来型製造業も、設備更新やデジタル化、環境対応を進めることで、新たな成長エンジンを支える重要な産業へと変わることができる。設備・工具・器具の購入投資が比較的高い伸びを維持していることは、こうした変化を示している。不動産分野でも、重点は開発規模の拡大から、低・中所得者向けの住宅供給や居住環境の改善へと移りつつある。

一方、新たな成長エンジンの育成には時間がかかる。研究開発の成果を実際の産業に応用し、大規模な投資へと発展させるまでには長い期間が必要だ。無形資産への投資は成果が得られるまでの期間が長く、不確実性も高い。すでに技術的な進歩を実現した分野でも、製造工程の改良や市場の育成を続けなければならない。

中国の2025年の社会全体の研究開発費は3兆9000億元(約92兆1562億円)に達し、国内総生産(GDP)に対する割合は2.8%となり、初めて経済協力開発機構(OECD)加盟国の平均水準を上回った。しかし、こうした研究開発投資を大規模な産業投資へと転換し、従来型分野の投資減少を補うには、今後も継続的な取り組みが必要となる。

新旧の成長エンジンは互いに影響を与え合っている。人工知能(AI)、産業用ソフトウエア、ビッグデータなどの新技術は、鉄鋼や化学、機械設備などの従来型産業で活用され、生産工程の改善や効率向上を促している。一方、従来型産業は高度な製造設備や新素材、産業用ソフトウエアにとって重要な応用市場であり、新技術の改良や普及を支えている。現在の新興産業も、将来は高度化が必要な既存産業になる可能性があり、「新」と「旧」は発展段階によって変化する相対的な概念だ。

こうした転換期の課題に対応するには、新たな成長分野の可能性を見据えつつ、従来型投資の減少を過度に悲観せず、長期的な視点で取り組む必要がある。

まず、既存の産業基盤を有効活用し、その質を高めることが重要だ。従来型分野への合理的な投資需要を単純に抑制するのではなく、設備更新やデジタル化、環境対応を支援し、産業の高度化を進める。国家の重要戦略と重点分野の安全保障能力の整備を目的とする「両重」建設を推進し、水利、防災・減災、都市再開発などの事業を継続する。不動産分野では低・中所得者向け住宅の整備や老朽住宅密集地区の再開発を強化し、条件が整った都市では容積率や建築密度の基準を適度に緩和することも検討する。同時に、効率の低い投資や、統計上の数字を押し上げるためだけの無計画な開発を防ぐ必要がある。

次に、新たな成長分野への投資を拡大することだ。地域の実情に応じて、技術革新を中心とする新たな生産力「新質生産力」を発展させ、先進的な設備製造、デジタル経済、グリーン・低炭素産業、将来の成長が期待される産業への投資を支援する。企業による研究開発やソフトウエア、データ資産への投資を促し、政府資金を重要技術の開発やイノベーション基盤の整備に重点的に投入する。

また、無形資産への投資は回収までの期間が長く、リスクも高いため、ベンチャーキャピタルや長期的な投資回収を重視する「ペイシェント・キャピタル(忍耐強い資本)」を育成し、知的財産権を担保とする融資制度を充実させる必要がある。中国の巨大な市場を生かして新技術の実用化を進め、研究成果を産業投資につなげることも重要だ。

さらに、統計や評価制度の改善も欠かせない。知的財産関連製品への投資統計を地方にも広げ、地域別の無形資産投資を把握する仕組みを整備する。固定資産投資の伸び率だけでなく、人的資本の蓄積や無形資産の増加、イノベーション投資なども、質の高い発展を評価する指標に組み込む必要がある。研究開発やイノベーション事業については、建設工事とは異なる審査・評価制度を設け、試行錯誤を認めることも求められる。職業訓練や産学連携、公衆衛生体制の整備を進め、人への投資と設備・施設などへの投資を一体的に推進することが重要だ。

最後に、民間投資を促すための環境整備が必要となる。企業の投資意欲を回復させるため、ビジネス環境の改善や市場参入障壁の撤廃を進め、あらゆる事業者が公平に競争できる環境を整える。財産権や知的財産権の保護を強化し、企業の長期的な経営に対する信頼を高めることで、民間資本が従来型産業の高度化と新興産業の双方に投資できるよう促す必要がある。

経済政策とそれ以外の政策の連携を強化し、個々の政策が合理的でも、組み合わさることで全体として望ましくない結果を招く「合成の誤り」を避けることも重要だ。新旧の成長エンジンの円滑な転換には、安定した経済環境の下で、既存産業の高度化と新産業の育成を着実に進めることが求められる。(c)CNS-三里河中国経済観察/JCM/AFPBB News