【10月20日 AFP】オーストラリアの無所属議員ヘレン・ヘインズ氏(65)が車で故意にはねられ、夜間に手術を受けたものの、依然として重体となっている。アンソニー・アルバニージー首相が20日、明らかにした。

オーストラリアでは政治的暴力はまれだが、法執行機関の記録によると、近年、議員に対する脅迫や嫌がらせが着実に増加している。

アルバニージー氏は今回の襲撃について、「われわれの品格が試されている」と述べた。政治の透明性向上や汚職撲滅に向けた取り組みで広く評価されているヘインズ氏には、支援の声が相次いでいる。

ヘインズ氏は19日午後3時35分(日本時間同日午後1時35分)ごろ、メルボルンの北東約200キロに位置するワンガラッタの事務所前で、トヨタ自動車の四輪駆動車「ランドクルーザー」にはねられた。

目撃者は公共放送ABCに対し、衝突音が聞こえ、女性が2台の車の間に挟まれているのを目撃したと語った。

アルバニージー氏によると、ヘインズ氏は襲撃された際、自分の車のトランクから荷物を取り出していた。加害車両の運転手はヘインズ氏のそばを通り過ぎた後、Uターンして戻ってきたという。

アルバニージー氏は「故意の行為だったことは明らかだ」と述べた。

ヘインズ氏は重傷を負い、メルボルンのアルフレッド病院に搬送され、19日夜に手術を受けた。

アルバニージー氏は20日、オーストラリアの朝の情報番組「サンライズ」で、「ヘレンは現在も重体で入院している。昨夜、夫のフィルさんと話した。ヘレンは昨夜、手術を受けた」と述べた。

車を運転していた男(43)は、地元の理髪師の男性に取り押さえられ、その後、警察に逮捕された。車内からはナイフが見つかった。

オーストラリアのメディアによると、男は以前から警察に把握されていた人物だった。捜査は現在も続いている。

■「政治的議論が誤った方向に」

襲撃したとされる男の動機は依然として不明で、アルバニージー氏は捜査中であることを理由に、臆測を避けている。

一方、アルバニージー氏は、ここ数年でオーストラリアの政治的な議論が過熱し、個人攻撃に発展するようになったことを嘆き、議員に対する脅迫が大幅に増加していると指摘した。

「民主主義において、意見の相違が認められることは重要だ」と述べた上で、「だからといって、相手の動機や愛国心、人格まで疑う必要はない」と強調。さらに、「最近、政治的な議論が誤った方向に進んでいると思う」と語った。

ヘインズ氏は看護師や助産師として働いた後、2019年に連邦議会議員に初当選。気候変動対策の強化を支持する立場などで知られている。(c)AFP/William WEST