【三里河中国経済観察】中国、民間企業経営者の成長を後押し
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【10月20日 CNS】「未来の世界で最も重要な資源は、データ、計算能力、半導体、エネルギー、鉱物資源です」。9月22日、中国のロボットメーカー、宇樹科技(Unitree Robotics)の創業者・王興興(Wang Xingxing)氏が広東省(Guangdong)広州市(Guangzhou)を訪れ、具身型AI(エンボディド・インテリジェンス)の未来について講演した。
聴講したのは、さまざまな業界から集まった数十人の民間企業経営者だ。「新時代民営経済人材育成・能力向上研修」の第8期受講者で、王氏は講師として招かれた主要ゲストの一人だった。
研修は中国国家発展改革委員会が中国共産党中央統一戦線工作部、中華全国工商業連合会と共同で主催している。「新時代民営経済人材育成・能力向上計画」は2024年に始まり、これまで多くの民間企業経営者が参加してきた。
いわば、民間企業経営者を対象とした「集中研修」だ。経済情勢やマクロ政策への理解を深めるとともに、企業が本業を軸にイノベーションを進め、経営・ガバナンス能力を高めることを目的としている。
受講した経営者からは「多くの収穫があった」「自信が深まった」との声が聞かれた。バイオテクノロジー企業、華熙生物科技(BLOOMAGE BIOTECHNOLOGY)の党委員会書記兼副総裁、尹延簫(Yin Yanxiao)氏は、政府各部門の担当者による産業政策の説明に加え、王氏をはじめとする企業経営者が実務経験を共有するなど、研修内容は多岐にわたったと説明。「企業が国家戦略を踏まえて今後の成長を考える上で、大きな参考になった」と話した。
また、「現在の経済情勢と新時代の民間経済の発展に、これまで以上に自信を持つようになった」とし、特に民営経済促進法の施行によって、民間経済を支援する制度的な保障が一段と強化されたとの認識を示した。
生成AI企業、生数科技の創業者兼チーフサイエンティストで、清華大学(Tsinghua University)人工知能研究院副院長の朱軍(Zhu Jun)氏も、研修を通じて自信が深まったという。同社が開発した「Vidu S1」は、AI動画を従来の「オフライン生成」から「リアルタイムでのインタラクティブ生成」へと発展させた。
朱氏は、同社が成長途上のスタートアップとしてマルチモーダル基盤モデルの開発を目指しており、計算資源や高度人材への多額の投資が必要だと説明した。これまで資金調達や計算資源への補助などさまざまな支援を受けており、「こうした支援は企業の成長にとって非常に重要だ」と話した。
研修は経営者の自信を高めるだけでなく、産業の変化を把握し、新たなビジネス機会を見いだす場にもなっている。中国初の上場ソフトウエア企業である東軟集団(Neusoft)も、AI時代にどのように事業を転換していくかという課題に直面している。
研修に参加した同社の党委員会副書記兼デジタル経済研究院院長、史衛国(Shi Weiguo)氏は、「現在の民間経済は、課題よりもチャンスの方が大きい」と指摘する。AIによってソフトウエア産業そのものが再構築されつつあり、企業には利用現場への深い理解や、さまざまな技術・サービスを組み合わせる能力がこれまで以上に求められているという。
ソフトウエアは単なるデジタル化のためのツールではなく、実体経済の高度化を支える「知能化の基盤」になりつつあり、産業分野へのAIの本格導入によって多くの新たな機会が生まれるとの見方を示した。
また、研修を通じて「デジタル中国」や「新質生産力」が具体的なビジネス機会を生み出していることを改めて認識したという。産業の重点は「設備や基盤を整備し、データを集める」段階から、運用と価値創出を重視する段階へと移りつつある。データも静的な「資源」から、流動する「生産力」へと変化していると指摘した。
さらに、一企業だけで取り組むのではなく、産学官などの連携を進め、開かれた産業エコシステムを構築することが、技術の価値をさらに高める上で重要だとした。
中国の民間経済全体に目を向けると、現在はチャンスと課題が併存している。今年1~8月、民間企業の輸出入額は前年同期比17.6%増え、中国全体の56.9%を占め、最大の貿易主体となった。ハイテク企業に占める民間企業の割合は92%を超えている。新エネルギー、大規模AIモデル、ヒューマノイドロボットなどの先端分野でも、多くの民間企業が事業を展開している。
一方、外部環境の変化や国内経済の成長エンジンの転換、供給に比べ需要が弱い状況など、企業を取り巻く課題も少なくない。一部の業界では企業間の業績格差も広がり、多くの企業が成長の難局を乗り越えようとしている。
こうした研修の役割は、政府と企業をつなぐ橋渡しにある。経営者が政策や経済情勢への理解を深め、企業の成長につなげる一方、政府側も市場の最前線から企業の実情や要望を聞く機会となる。
民間企業のイノベーションと成長を促すには、経営者自身が積極的に新たな分野へ挑戦するとともに、行政側による支援や事業環境の整備も欠かせない。国家発展改革委員会は今後、政策の着実な実施やイノベーション環境の改善、企業との意思疎通の強化と実際の経営課題の解決、イノベーションと新質生産力の育成、民間投資の機会拡大などに一段と力を入れる方針を示している。
同委員会は最近、民間企業向けに36件の投資プロジェクトを公開した。総投資額は614億元(約1兆4499億円)を見込み、このうち156億元(約3683億9556万円)を民間資本から呼び込む計画だ。
政府がビジネス環境を改善し、企業活動を妨げる障壁を取り除く一方、企業側もイノベーションを続け、実業を強化し、自主的な技術開発力と競争力を高めていく。こうした取り組みが、中国の民間経済のさらなる活力につながると期待されている。(c)CNS-三里河中国経済観察/JCM/AFPBB News