【10月15日 CNS】中国の今年の国慶節連休(10月1日~7日)では、地域をまたぐ人の移動が延べ21億3000万人に達し、1日平均で約3億人、ピーク時には3億4000万人に上ると見込まれた。鉄道の1日当たりの旅客輸送人数は過去最多の2440万人を超え、連休初日の高速道路の交通量は7100万台に達するなど、今年も休日経済の活況ぶりが鮮明となった。

確かに、多くの人が旅行や外出に出かけた。しかし、こうした数字だけに目を向けていては、今年の国慶節連休に起きた最も大きな変化を見落としてしまう。今年の注目点は、観光客数そのものではなく、旅行者がどこにお金を使ったのかという点にある。

まず、消費の大きな流れの一つが、少人数の旅行ツアーだ。旅行プラットフォームのデータによると、旅行先で短時間参加できる少人数ツアーの検索人気度は前年同期比110%以上上昇し、関連商品の予約も増加した。2026年の夏休み期間には、従来の20人以上の団体ツアーの予約が18%減少した一方、2~6人の家族向け少人数ツアーは132%増加した。

限られた時間で多くの観光地を駆け巡る、いわゆる「特殊部隊式旅行」は次第に過去のものとなりつつある。現在は、飛行機や鉄道などで目的地に到着した後、旅の途中で2~3都市を滞在拠点に選び、周辺の都市へ車で足を延ばす旅行者が増えている。一つの都市での滞在時間が長くなり、より深く地域を楽しむ傾向が見られる。

旅行予約サイトの去哪児(Qunar)のデータによると、10月1日の時点で、旅行者の2割がすでに旅先の2都市目、さらには3都市目のホテルに宿泊していた。こうした旅行商品の細分化は、消費者が実際の支出を通じて自分たちの好みを示していることの表れだ。旅行者はもはや、50人乗りの大型バスに詰め込まれ、観光地から観光地へと次々に移動する旅行を望まなくなっている。

消費のもう一つの大きな流れは、伝統工芸などの体験だ。今年の国慶節連休で特に注目されたのは、観光地で写真を撮るだけでなく、伝統工芸の技術を学ぶことが、新たな観光消費の魅力になっている点だ。連休初日には、「没入型公演」「花火ショー」「ナイトツアー」などのキーワードを含む観光施設の入場券検索数が前年同期比50%以上増加した。例えば、河北省(Hebei)唐山市(Tangshan)の河頭老街では、水上ナイトツアーや実景を生かした公演によって、観光客が絵画の世界に入り込んだような体験を楽しめることから、人気観光地ランキングの上位5位に入った。

北京のショッピング施設「頤堤港」のウィンターガーデンでは、「芸坊新境」をテーマにした展示が開催され、自然や芸術、都市生活を融合させ、未来の水辺の暮らしを表現した。こうした多様な体験型の施設やイベントが、新たな消費需要を生み出している。

河南省(Henan)洛陽市(Luoyang)の古都エリアでは、国慶節連休のピーク時に約5000人のヘアメーク担当者が働いていた。伝統衣装に合わせた髪型には、1人当たり平均7~9本のかんざしが使われ、1日で20万本以上が使用されたという。

こうした変化は、単に「体験型消費」という言葉だけでは説明しきれない。例えば、2000年以降に生まれた若者が地方の小都市に滞在し、半日をかけて無形文化遺産の継承者から伝統的な飾り灯籠の作り方や紫陶と呼ばれる陶器の製作技術を学ぶとすれば、その若者と訪問先の都市との関わり方は大きく変わる。

観光消費は、入場券を購入して観光地を巡るスタイルから、地域に滞在して消費するスタイルへと移行しつつある。一度訪れて記念写真を撮るだけの観光から、その土地の文化に深く触れる体験型観光への変化が進んでいる。

さらに、消費の新たな行き先として注目されているのが、地方の県レベルの都市や地域だ。旅行予約サイトの同程旅行(LY.COM)によると、県域観光の予約人気度は前年同期比42%上昇し、旅行者の県域での平均観光日数は3.2日増加した。

国慶節連休初日には、同サイトの利用者が全国1000以上の県のホテルに宿泊する予定となっていた。四川省(Sichuan)の九寨溝県、広西チワン族自治区(Guangxi Zhuang Autonomous Region)の陽朔県、吉林省(Jilin)の安図県、福建省(Fujian)の平潭県、新疆ウイグル自治区(Xinjiang Uighur Autonomous Region)のブルチン県、江西省(Jiangxi)の婺源県などが、引き続き人気の宿泊先となっている。

かつては高速道路で通り過ぎるだけだった地方の町が、今ではわざわざ旅行を計画し、数日間滞在する価値のある目的地へと変わりつつある。少人数旅行、伝統文化の体験、地方への滞在という三つの消費の流れには、共通する変化がある。それは、旅行者のお金の使い方そのものが変わってきたということだ。

2026年1~8月の中国のサービス小売売上高は前年同期比4.9%増加した一方、商品小売売上高の伸びは1.0%にとどまった。さらに長期的に見ると、2020~2025年の中国住民1人当たりのサービス消費支出は年平均8.5%増加し、1人当たり消費支出全体に占める割合も3.5ポイント上昇して、2025年には46.1%に達した。

国慶節連休に見られた消費の変化は、こうした大きな流れの一端にすぎない。その背景では、観光客数を競う時代から体験の質を競う時代へ、立地の良さを売りにする時代から、提供する体験やサービスの内容で勝負する時代へと、消費のあり方そのものが変わり始めている。

観光サービスを提供する側にとって、これは従来の競争上の優位性が崩れつつあることを意味する。観光施設の入場券を販売するだけでは、もはや十分な競争力にはならない。旅行者が求めているのは、単に「行ったことがある」という実績ではなく、「行ってよかった」と思える体験だからだ。

地方の小さな町にある手工芸の工房が、国家最高ランクの「5A級観光地」で提供される一般的な観光コースよりも、大きな魅力を持つ可能性さえある。休日経済における本当の競争力は、どれだけ多くの観光客を呼び込めるかではなく、訪れた人にどのような体験を提供し、どれだけ長く滞在してもらえるかにある。地域固有の文化を、実際に感じ、参加し、他の人にも伝えたくなるような体験へと変えられるかどうか。それが、次の連休に向けた観光地の競争力を左右することになる。(c)CNS-三里河中国経済観察/JCM/AFPBB News