四川とは違う? 秦嶺ジャイアントパンダの独自の特徴
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【10月14日 東方新報】ジャイアントパンダと聞くと、多くの人が思い浮かべるのは、四川省(Sichuan)に生息する丸々とした白黒のパンダだろう。しかし、陝西省(Shaanxi)の秦嶺山脈の奥深くには、ジャイアントパンダの独立した亜種「秦嶺ジャイアントパンダ」が生息している。
四川のジャイアントパンダが比較的細長い頭部と突き出た鼻先を持ち、クマらしい顔立ちをしているのに対し、秦嶺ジャイアントパンダは頭部が丸く、鼻先が短く、ふっくらとした顔立ちが特徴だ。その柔らかな表情から、より猫を思わせるともいわれ、「国宝の中の美人」と呼ばれることもある。
動物分類学上、ジャイアントパンダは四川亜種と秦嶺亜種の二つの亜種に分けられる。遺伝子研究によると、両者は地理的な隔たりによって約1万年前に分化し、その後、野生下ではほとんど遺伝的な交流がないまま、それぞれ独自に進化してきた。秦嶺ジャイアントパンダはより古い遺伝的特徴を残しており、ジャイアントパンダの中でも貴重な系統とされている。
秦嶺山脈から岷山山脈、邛崍山脈にかけて、四川、陝西、甘粛の3省にまたがるジャイアントパンダ国家公園は、中国で初めて単一の動物種の名を冠した国立公園だ。約2万2000平方キロに及ぶ区域には、現在、約1400頭の野生ジャイアントパンダが生息している。
四川省の各山系に比べると、秦嶺ジャイアントパンダの個体数は少ないものの、生息密度は高く、比較的良好な状態を保つ個体群とされる。主に秦嶺山脈中部の南斜面に位置する仏坪県、洋県、周至県、寧陝県、太白県などに分布し、複数の種類の竹を食べている。
二つの亜種を科学的に区別する主な手掛かりとなるのが、頭骨や歯、毛色の違いだ。研究による測定では、秦嶺ジャイアントパンダは頭骨が比較的小さく、臼歯が大きいのに対し、四川のジャイアントパンダは頭骨が比較的大きく、臼歯が小さい。
外見にも違いがある。秦嶺ジャイアントパンダは丸い頭と短い鼻先、小さく丸みを帯びた耳を持つ。一方、四川のジャイアントパンダは頭部がやや細長く、鼻先が前に出ており、全体的によりクマらしい輪郭をしている。
毛色にも特徴がある。四川のジャイアントパンダは胸部の黒い毛がはっきりしており、腹部は白い。一方、秦嶺ジャイアントパンダでは胸部が暗褐色を帯びることが多く、腹部の毛にも黄褐色が見られる。これは汚れによるものではなく、亜種が持つ遺伝的な特徴だという。
こうした秦嶺ジャイアントパンダの特徴は、「七仔(チーザイ、Qi Zai)」「珠珠(ジュージュー、Zhu Zhu)」「党生(ダンション、Dang Sheng)」などの個体にも見て取れる。七仔は、現在飼育されている個体として世界で唯一の褐色の秦嶺ジャイアントパンダだ。2009年に仏坪自然保護区の野生環境で保護された。丸い顔と短い鼻先という秦嶺亜種の典型的な特徴を持つほか、珍しい褐色の毛色でも知られ、世界的に注目を集めている。
珠珠は秦嶺ジャイアントパンダ繁殖研究施設で多くの子を産んできた雌で、その子どもたちにも丸い顔や短い鼻先といった秦嶺亜種の特徴が見られる。飼育下での繁殖を支える重要な個体の一頭となっている。
党生は、野生復帰の取り組みを代表する個体だ。野外でのモニタリングを通じ、研究者らが秦嶺ジャイアントパンダの生態や野生環境での行動を調べている。ただし、秦嶺ジャイアントパンダが外見上「猫のように見える」といっても、分類上はあくまでクマ科の動物だ。「猫顔」という表現は、丸みを帯びた顔立ちや頭骨の形を分かりやすく表したものにすぎない。
現在、秦嶺ジャイアントパンダの飼育個体群では4世代にわたる繁殖に成功し、陝西省は世界有数のジャイアントパンダ繁殖拠点となっている。一方、秦嶺ジャイアントパンダは個体数が依然として限られ、遺伝的多様性の低さや生息地の分断といった課題も抱えている。研究者らは、生息地をつなぐ「生態回廊」の整備を進め、小規模な個体群同士の行き来を可能にすることで、長い進化の過程で形成された独自の遺伝的特徴を守ろうとしている。
同じジャイアントパンダでありながら、なぜ異なる特徴を持つようになったのか。その背景には秦嶺山脈という地理的な障壁がある。高い山々によって個体群同士の移動や交流が妨げられ、長い年月をかけて、秦嶺ジャイアントパンダは丸い頭や短い鼻先、大きな臼歯などの特徴を持つようになったと考えられている。
秦嶺山脈にはジャイアントパンダだけでなく、キンシコウやターキン、トキなど多くの希少動物も生息している。秦嶺ジャイアントパンダを保護することは、一つの希少動物を守るだけでなく、秦嶺山脈の生態系全体を守ることにもつながる。
長い進化の過程で生まれた秦嶺ジャイアントパンダの独特な姿は、生物の多様性と、それを守り続けることの大切さを伝えている。(c)東方新報/AFPBB News