【三里河中国経済観察】中国の大学、世界の研究力ランキングで存在感
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【10月14日 CNS】オランダ・ライデン大学(Leiden University)科学技術研究センターが発表する「ライデン・ランキング」では、2006~2009年の研究成果を対象とした世界の科学的影響力上位10大学のうち、7校を米国の大学が占め、ハーバード大学(Harvard University)が首位だった。中国から上位25校に入ったのは浙江大学(Zhejiang University)だけだった。
ところが、今年初めに発表された最新版では浙江大学が首位となり、上位10校のうち8校を中国の大学が占めた。米国から入ったのは3位のハーバード大学のみだった。
世界の大学の研究成果を論文などの計量指標で評価するこのランキングは、20年近くの間に大きく様変わりした。変化はライデン・ランキングだけではない。研究機関の自然科学分野における研究力を示す「ネイチャー・インデックス(Nature Index)」が9月14日に更新したランキングでは、世界上位10大学のうち9校が中国の大学だった。また、「世界大学学術ランキング(ARWU)」では、中国本土から234校がランク入りし、米国の187校を上回った。
英教育専門誌「タイムズ・ハイヤー・エデュケーション(Times Higher Education)」のグローバル・アフェアーズ責任者、フィル・ベイティ(Phil Baty)氏は、「世界の高等教育と研究をめぐる主導的な地位は大きく変化しており、新たな世界秩序が生まれつつある」と指摘する。
ただ、米国の大学の研究成果そのものが減少したわけではない。ライデン・ランキングのデータによると、2000年代に世界トップ10に入っていたミシガン大学(University of Michigan)、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(University of California, Los Angeles)、ジョンズ・ホプキンス大学(Johns Hopkins University)など米国の有力6大学は、いずれも20年前より論文数を大幅に増やしている。
つまり、米国の大学の研究力が低下したというより、成長のスピードに大きな差が生じている。中国の大学の伸びが米国を大きく上回っているということだ。中国・昆山デューク大学(Kunshan Duke University)で常務副学長を務めた米国人研究者、デニス・サイモン(Denis Simon)氏は、中国の大学がランキングを急速に上げたのは偶然ではなく、中国が30年にわたり研究開発へ継続的かつ重点的に投資してきた結果だとみている。
中国の研究開発(R&D)費は1995年には約349億元(約8242億7169万円)だったが、2020年には2兆4393億元(約57兆6116億円)に達した。国内総生産(GDP)に占める研究開発費の割合も、1995年の0.57%から上昇を続け、2013年以降は2%以上を維持している。
2025年には社会全体の研究開発費が3兆9200億元(約92兆5829億円)を超え、GDP比は2.8%に達し、初めて経済協力開発機構(OECD)加盟国の平均を上回った。基礎研究への投資も2800億元(約6兆6130億円)近くに達し、研究開発費全体に占める割合は過去最高の7.08%と、初めて7%を超えた。
学術出版社シュプリンガー・ネイチャー(Springer Nature)の大中華圏責任者、アルナウト・ヤコブス(Arnout Jacobs)氏は、多くの国では景気が良い時に研究費の拡充を打ち出しても、数年後には継続されなくなることがある一方、中国は研究開発への投資を継続的に拡大してきたと指摘する。
一方、中国の大学が急速に順位を上げる中、米国では研究資金の削減が進んでいる。研究助成金の動向をまとめる「Grant Witness」の報告によると、2025年には米国立衛生研究所(NIH)と米国立科学財団(NSF)で、承認済みの研究費30億ドル(約4750億5000万円)以上が凍結または削減された。英科学誌「ネイチャー(Nature)」の集計では、今年2月までに7800件を超える研究助成が取り消しまたは停止され、このうちNIHが5844件、NSFが1996件だった。
米ブレナン・センター・フォー・ジャスティス(Brennan Center for Justice)の試算では、凍結された30億ドルだけでも、今後30年間の経済成長を最大375億ドル(約5兆9381億円)押し下げる可能性がある。また、米政府が2026会計年度予算で提案した科学研究費440億ドル(約6兆9674億円)の削減が実施された場合、将来の経済活動が5000億ドル(約79兆1750億円)規模で縮小する可能性があるとしている。
さらに大きな影響が懸念されているのが研究人材だ。アメリカ大学協会(AAU)によると、加盟55大学では2026年秋学期の博士課程への入学者数が前年同期比15%減少した。カリフォルニア工科大学(California Institute of Technology)では新入大学院生が約40%、マサチューセッツ工科大学(MIT)では約20%減少する見通しだという。
米紙「ボストン・グローブ(Boston Globe)」の調査では、マサチューセッツ州でNIHの助成を受ける研究者のうち、回答者の3分の2以上が学生に研究者としての道を勧めないと回答した。また、多くの研究者が研究室での新規採用を延期していると答えた。仮に研究資金が今後回復したとしても、研究者として最初の助成を得られなかった若手が、すでに研究の道を離れてしまう可能性もある。こうした状況から浮かび上がるのは、質の高い研究成果を生み出すには、どのような研究環境が必要なのかという問いだ。
研究者が短期的な成果だけを求められることなく、数年にわたって一つの研究に腰を据えて取り組める環境をどこまで確保できるのか。それが、世界の大学研究力ランキングが大きく変化している背景の一つといえそうだ。(c)CNS-三里河中国経済観察/JCM/AFPBB News