【10月13日 CNS】「借金は全部、前任者が作ったものだ。なぜ私が返さなければならないのか」

中国共産党中央紀律検査委員会弁公庁と財政部弁公庁は9月中旬、地方政府の「隠れ債務」を巡り、責任を問われた6件の典型事例を公表した。その中で、貴州省(Guizhou)委員会常務委員、畢節市(Bijie)党委員会書記を務めた呉勝華(Wu Shenghua)氏のこの発言が通報に記され、注目を集めた。

しかも、この発言は私的な場での愚痴ではなく、公開の場で何度も口にしていたという。こうした考えから、呉氏は2022~2025年に畢節市党委員会書記を務めていた間、債務削減への対応を怠り、規定に反した債務処理などを放置し、債務リスクの拡大を招いた。

通報によると、呉氏の在任中、畢節市の債務残高は減るどころか増加。2024年の隠れ債務削減目標の達成率はわずか20%で、貴州省内で最下位だった。呉氏にはこのほかにも重大な規律・法律違反があり、党籍剥奪と公職追放の処分を受け、犯罪の疑いについては検察機関に送致され、起訴に向けた審査が行われている。

「なぜ私が返さなければならないのか」という短い一言から浮かび上がるのは、いわゆる「新任者は前任者が残した問題には関わらない」という考え方だ。そこには、行政トップとして何を成果とみなすかという認識の大きなずれが表れている。

一部の幹部は、過去の債務を前任者が残した問題と考え、自らの任期中の実績とは関係ないと捉えている。債務処理は時間と労力がかかる一方、目に見える成果になりにくいため、責任を避けて放置する。さらには新たな借金を重ね、大規模な事業を次々と始めるケースさえある。こうした目先の実績を優先する姿勢がもたらす弊害は大きい。

注意すべきなのは、このような考えを持つ幹部が一人だけではないことだ。これは本質的に、個々の幹部の任期上の責任と地方政府が継続して負う公共的責任を混同し、短期的な実績を求める姿勢を、地域の長期的な発展や財政の健全性より優先するものだ。

地方政府の債務は、特定の任期の幹部だけに帰属する「個人の借金」ではなく、政府が負う公的な債務だ。担当する幹部が交代しても政府の信用と責任は続く。人事異動を理由に行政の責任を切り離すことはできず、「責任を問うべきなのは前任者だ」として、債務処理を拒む理由にすることもできない。

誰もが責任を次の担当者に押し付け、ある任期で問題を残し、次の任期でも放置するようになれば、債務リスクは積み重なり、やがて地域の発展を脅かす問題となる。中国中央政府はこれまで、発展と安全の両立を図り、地方政府の債務リスクを効果的に防止・解消するよう繰り返し求めてきた。

一方では、「前任者が負の遺産を残す」ことを防ぐ必要がある。十分な検討をせずに意思決定し、強引に事業を進めた末にその職を離れ、多額の負債だけを残しながら責任を負わない幹部については、長期にわたって責任を追及し、無計画な借り入れを根本から抑える必要がある。

他方、新たに就任した幹部も「前任者が作った借金だから自分には関係ない」という姿勢で、中央政府の重要な方針を十分に実行しなかったり、都合よく変更したりすれば、職責を果たしていないことになり、責任を問われるべきだ。

中国共産党の「紀律処分条例」には、こうした「新任者が前任者の残した問題に対応しない」ケースについて明確な規定がある。党員である指導幹部が、就任前から存在し、自らの職責の範囲にある問題に対して消極的な態度を取り、責任を回避した結果、重大な損害や悪影響をもたらした場合、相応の処分を科すとしている。制度によって、前任者から引き継いだ問題への対応を明確な責務としている形だ。

現在、中国各地では債務処理の状況を幹部の業績評価に組み込み、「過去から引き継いだ問題を解決することも実績である」という考え方を打ち出している。幹部の実績とは、新規プロジェクトや新たな建設事業といった目に見える成果だけではない。過去からの負担を解消し、リスクの拡大を防ぐといった、表には見えにくい成果も含まれる。債務問題に主体的かつ着実に取り組む幹部を適切に評価することで、前任者から引き継いだ問題への対応を促していく必要がある。

今回の事例公表は、問題を次の担当者へ先送りできると考えたり、責任を回避しようとしたりする幹部への警告となった。行政を担う以上、目先の成果だけにとらわれず、新たな取り組みを進めると同時に、過去から引き継いだ問題にも責任を持って向き合う必要がある。それが地域の安定した長期的な発展につながる。(c)CNS-三里河中国経済観察/JCM/AFPBB News