9月9日、韓国・忠清南道牙山市の東遠システムズ牙山事業所で働く熟練技術者のチョン・ギソルさん=東遠グループ提供(c)MONEYTODAY
9月9日、韓国・忠清南道牙山市の東遠システムズ牙山事業所で働く熟練技術者のチョン・ギソルさん=東遠グループ提供(c)MONEYTODAY

【10月03日 KOREA WAVE】韓国で定年延長が議論されるなか、定年退職した熟練技術者を再雇用し、長年培った技術や経験を生かす企業がある。一方、定年制度のない中小企業で働く人々が制度改正の恩恵を受けられないという課題も浮上している。

忠清南道牙山市にある東遠システムズの工場では、65歳の熟練技術者チョン・ギソルさんが現在も第一線で働いている。

同工場は、東遠グループや韓国の主要食品メーカーのインスタントラーメン、菓子などに使われる包装材を印刷する生産拠点だ。

1985年に25歳で入社したチョンさんは、勤続42年目を迎えた。飛行機のパイロットになった息子と小学生の孫を持つ現在も、長年培った技術を生かしている。

チョンさんが特に優れているのは、複数のインクを混ぜ合わせて顧客が求める色を再現する調色技術だ。基本の12色に特殊な2色を加えた計14色のインクを使い、微妙な色の違いまで調整する。

「色を見た瞬間に、必要なインクの種類と配合比率が自然に頭に浮かぶ」と話す。

配合データがあっても、デザイナーの細かな要求を正確に反映するのは簡単ではない。作業時間や原材料の無駄を最小限に抑えながら理想の色を作り出す技術について、チョンさんは「AIにはこうした調整作業はできない」と強調した。

機械の異常を音だけで察知する能力も持つ。若手社員が設備の不具合の原因を突き止められない際、チョンさんが解決したことも何度もある。

こうした技術力を評価した会社は、2022年に定年を迎えたチョンさんに再雇用を提案した。給与は以前より低くなったが、現在も毎年契約を更新している。

チョンさんは「定年退職の翌日、慣れ親しんだ職場に出勤したが、新たな出発のように胸が躍った」と振り返る。

現在の役割は若手社員を支え、自身の技術を伝えることだ。後輩が助けを借りずに仕事を終えられるようになると、成長を実感してうれしくなるという。

一方、韓国では法定定年を60歳から65歳へ引き上げる法改正の議論が続いている。

韓国与党「共に民主党」は秋夕連休後、定年延長特別委員会などを通じて議論を再開する方針だ。しかし、労使間の意見の隔たりは大きく、6月に示された調停案も最終合意には至っていない。

特に問題となっているのが、定年制度そのものが存在しない中小企業の労働者だ。

中小ベンチャー企業研究院によると、今後5年間に定年延長の影響を受ける55~59歳の正規労働者176万7000人のうち、148万3000人が中小企業に勤めている。

このうち定年制度のある企業で働く人は85万5000人にとどまり、62万8000人は定年制度のない事業所に勤務している。

定年制度の導入率は従業員1~4人の事業所で13.2%、5~9人の事業所でも30.5%にすぎない。

こうした実態を踏まえ、政府と与党は単純な定年延長だけでなく、再雇用を含めた継続雇用制度の整備を検討している。

政府は職務や労働時間、賃金制度の見直しを伴う「世代共生型定年延長」を掲げている。

韓国与党「共に民主党」が6月に提示した調停案の草案には、定年延長とともに、定年退職者の再雇用対象年齢を2028年の61歳から2035年には65歳まで段階的に引き上げる案が盛り込まれた。

韓国野党「国民の力」も再雇用を含む制度を提案しているが、企業側の選択権をより重視している。

与党関係者からは、現在の議論が定年延長や退職後の再雇用に集中しており、定年制度のない企業の労働者や定年前に離職する中高年層への直接的な支援策が不足しているとの指摘も出ている。

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