韓国京畿道坡州市の烏頭山統一展望台から、北朝鮮・黄海北道開豊郡の国境地域にある金日成史跡館が見えている(c)news1
韓国京畿道坡州市の烏頭山統一展望台から、北朝鮮・黄海北道開豊郡の国境地域にある金日成史跡館が見えている(c)news1

【09月29日 KOREA WAVE】ロシアに派兵され、ウクライナ軍と対峙する前線に投入された後、2025年1月に生け捕りにされた北朝鮮軍兵士2人が、1年8カ月を経て韓国の地を踏んだ。ところが、この事実を最初に明らかにしたのは韓国政府ではなく、ウクライナのゼレンスキー大統領だった。

野党陣営はすぐさま「北朝鮮の顔色をうかがっている」として政府を追及した。政府がまず2人の入国の事実を国民に知らせるべきだったのに、北朝鮮の反発を懸念して「隠した」という主張を提起したためだ。

しかし、この主張が成り立つためには、韓国に来た2人の兵士が政府による発表に同意していたのかどうかを、まず確認しなければならない。2人は本当に、自分たちが韓国に来たことを世界中に広く知られることを望んでいたのだろうか。

2人はウクライナに滞在している間、一貫して韓国に行きたいとの意思を示してきた。しかし、韓国行きを望んだことと、その事実が知られることを望んだことは別だ。自ら国境を越えたにせよ、捕虜の身分で来たにせよ、「脱北者」となった人には、安全のため本人の意思が確認されるまで身辺を保護される権利がある。

身辺保護とは、すべてが知られた後に実施される「身体に対する警護」だけではない。この2人の兵士が、いつ、どのような経路で入国し、どこに滞在しているのかといった情報が、本人の意思に反して公表されないことこそ、本当の「保護」だ。

政府がこれを守れなかった前例もある。2016年4月、政府は中国の柳京食堂の従業員らによる集団脱北と韓国入国の事実を、彼らが入国した翌日に発表した。第20代総選挙を5日後に控えた時期だった。

彼らが政府の発表に「同意」したとする同意書は作成されたという。しかし3年後、国家人権委員会は、政府が脱北した従業員らに公開の目的を十分に説明しないまま同意書を受け取っていたことが確認されたと明らかにした。現在の政府に対し、2人の兵士の韓国入国を公表しなかったと指摘することは、もしかすると10年前の過ちを繰り返せと求めることと何ら変わらない。

2人の置かれた状況は危うい。彼らの顔や声は、生け捕りにされた直後に公開された尋問映像や相次ぐメディアのインタビューによって、すでに広く知られている。「敵」に捕まったら自爆せよという「党の指示」も実行できなかった。彼らの立場からすれば、自らの意思とは関係なく、誰かが自分たちの韓国入国の事実を公表すること自体が、命への脅威と受け止められる可能性もある。

2人の話をいつ、どこまで明らかにするのかは、政治的な打算ではなく、当事者の意思と安全に基づいて決めるべきだ。このような状況にある2人について、入国を広報しなかったとして政府を非難するのは妥当ではない。

ウクライナ側の公表の仕方についても検討する必要がある。ウクライナは負傷した2人を治療し、最終的に韓国へ送った。しかし、大統領自らが2人の顔が映った尋問映像をSNSで公開し、ロシアに拘束されている自国の捕虜との交換材料とし、さらには韓国からの武器支援を得るための交渉材料にもしたという点から見れば、ウクライナが本当に2人を人道的観点だけから扱っていたのか、疑問も残る。

「戦争捕虜の待遇に関する条約」であるジュネーブ第3条約は、捕虜を「公衆の好奇心」から保護するよう定めている。赤十字国際委員会(ICRC)は、捕虜の写真や映像、尋問の録画物、身元を特定できる個人情報を公開することは、この条項に反する可能性があると解釈している。

エリザベス・サルモン国連北朝鮮人権特別報告者も2025年7月、2人の兵士の身元が分かる写真や映像が拡散されることは、捕虜保護の原則に反すると指摘した。

2人の兵士の韓国行きをめぐって、政治的な争いより先に考慮すべきなのは、新たな人生を始める2人と、北朝鮮に残された家族の安全だ。私たちが、人道的な問題を適切に扱えない恥ずかしい国にならないことを願う。【news1 ハン・サンヒ記者】

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