■「限界点」

デモに参加したグラフィックデザイナーのエンリケ・オルテガ・デ・ミゲルさん(38)は、「絶望的な状況だ」とし、「手が届く物件を見つけることは難しく、見つけた後も、追いだされる恐怖に怯えながら生活することになる」と語った。ミゲルさんは現在、母親と同居しているという。

また、エンジニアのアイリーン・ロペスさん(33)は、状況が「維持不可能」になっていると述べた。「都市部で生活費を払えない人々がおり、家賃は給与水準とかけ離れている」と指摘し、アバスカルさんの強制退去は「限界点だった」と語った。

アバスカルさんと同じく年金生活者のマリカルメン・アルネドさん(76)は、高齢者が自宅から追い出される一方で「若者は実家を出ることができない」と話し、「住宅価格と家賃が下がることを望んでいる。53歳になる息子の下着を洗うのにはもううんざりだ」と付け加えた。

アバスカルさんの強制退去以降、社会労働党(PSOE)のペドロ・サンチェス首相は全土で定期的な抗議運動に直面している。

政府は次の閣議で、賃貸契約の自動更新や強制退去をめぐり、貸し手側に強い規制をかける通称「マリカルメン令」と呼ばれる包括的対策を承認する見通しだ。しかし、サンチェス政権が与党過半数を確保していない議会で、この法案が可決されるかは不透明となっている。

今年前半にも同様の法案が否決されたが、アバスカルさんの事案を受けて各政党に対する圧力は強まっている。

スペイン銀行(中央銀行)の推計によると、人口約5000万人の同国では、需要と新築住宅供給の不均衡から、約70万戸の住宅不足が起きている。専門家らは、公営住宅が少ない上、観光需要の増加や移民増加に伴う人口増加が家賃を押し上げる要因になっていると指摘している。(c)AFP/Daniel SILVA