【9月29日 東方新報】中国・海南省(Hainan)屯昌県新興鎮の坡陳村は、地元で広く知られる「武術村」だ。村では近年、文化・観光会社を設立し、伝統武術を国内外の舞台で披露している。かつて村民が体を鍛え、身を守るために習っていた「大馬五形樁」は、100年以上にわたって受け継がれ、現在では観光や教育などにも活用され、村民の新たな収入源となっている。

坡陳村の「大馬五形樁」は南派少林拳の一種で、龍、虎、猿、亀、鶴という5種類の動物の動きをもとに技を構成する。下半身を安定させた構えを特徴とすることから「五形樁」と呼ばれる。2023年には海南省の第6次省級無形文化遺産代表リストに登録され、2025年には「中華体育文化優秀民俗・民間プロジェクト」に選ばれた。

第6代伝承者の許宇煥(Xu Yuhuan)さんによると、かつて許氏一族の一部が屯昌県の坡陳村に移り住んだが、人数が少なく、他村との争いから身を守るため、村民が武術を習うようになったという。清朝の咸豊年間、現在の海南省文昌市(Wenchang)出身の許楽華(Xu Lehua)という武術家が村を訪れ、鶴の爪や龍拳、虎の動きを取り入れた拳法を披露した。村民は許氏を師範として招き、道場を開いて指導を受けたことから、「五形樁」が村に根付いた。

現在、坡陳村には500人余りが暮らし、その8~9割が武術を身につけているという。他村から嫁いできた女性たちも武術を習うようになっている。その一人が顔慧柳(Yan Huiliu)さんだ。「馬歩(腰を落とした基本姿勢)が安定しなければ、武術をいくら練習しても身につかない」と話す。家事や子育ての合間に師範から習い始め、当初は1~2分しか保てなかった姿勢も、やがて30分間維持できるようになったという。

2024年5月、坡陳村は「海南坡陳五形樁文化旅游発展有限責任公司」を設立し、顔さんが経営を担うことになった。村内の18歳以上の武術経験者を集めて専門の演武チームを結成。観光イベントや企業研修、祝祭行事などで演武を披露するほか、国内外の武術大会にも参加し、賞金や出演料を得ている。

夏休みには武術キャンプも開催し、数百人の小中学生が参加。武術の指導や体験型プログラムを提供している。顔さんによると、坡陳五形樁は動きが多彩で見応えがあり、舞台での演武にも適している。素手による型だけでなく、槍や三叉槍などの武器を使った技もある。また、技を繰り出す際には「ヘイ」「ハッ」「ヤッ」といった掛け声を動作に合わせるため、迫力のある演武になるという。

坡陳五形樁の演武チームは近年、国内外の大会で実績を重ねている。2013年の海南省第1回武術選手権では団体種目1等賞、2014年の第1回全国武術運動大会では特色拳法演武1等賞を獲得。2019年の第16回全国「武術の郷」武術套路大会では金メダル4個、銀12個、銅13個を獲得し、2024年の第4回海南国際武術大会でも団体1等賞1件と個人1等賞8件を獲得した。

海外でもシンガポールを2度訪れて交流を行ったほか、香港返還20周年記念の演武大会にも出演した。2025年には第6代伝承者の許宇煥さんが中国代表として四川省(Sichuan)峨眉山で開かれた第10回世界伝統武術選手権に出場し、男子徒手套路の部門で優勝した。

「もっと多くの村民が武術で収入を得られるようにしたい」と顔さんは話す。坡陳五形樁は現在、屯昌県の新興中心小学校や新興中学校など複数の学校で定期的に指導されている。

夏休みの武術キャンプにも数百人の小中学生が参加しており、将来の演武チームを担う人材の育成につながるだけでなく、体験学習やキャンプを通じた収入にもなっている。100年以上続く伝統拳法を次世代へ受け継ぐ新たな取り組みが、村で広がっている。(c)東方新報/AFPBB News