【三里河中国経済観察】ベトナムの人手不足が映す「中国圧迫論」の実態
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【9月28日 CNS】ベトナムで働き手が足りなくなっている。
現在のベトナムでは、外国資本の流入が続き、経済が高い成長を遂げる中、各地で工場の新設が相次いでいる。その結果、「人手不足」が多くの工場にとって深刻な問題となっている。
最近の報道によると、ベトナムでは未経験の一般作業員さえ不足しており、設備や製造工程に詳しく、チームをまとめる能力を持つ中国人技能者は特に需要が高く、企業が高待遇で人材獲得を競っているという。
ベトナム政府が最近発表した経済統計からも、その背景がうかがえる。2026年上半期の国内総生産(GDP)は前年同期比8.18%増加した。工業・建設業は9.86%増となり、GDP成長への寄与率は40.35%に達した。製造業が今回の高成長を支える大きな柱となっている。
もっとも、ベトナムは東南アジア市場の一例にすぎない。東南アジア諸国連合(ASEAN)全体を見ても、近年は製造業の成長が加速している。2025年のインドネシアのGDP成長率は5.11%で、製造業が成長をけん引した。マレーシアでは製造業がGDPに占める割合が22.1%に達し、世界平均を上回った。カンボジアでは縫製品の輸出が16.88%増加し、アジアでも高い伸びを記録した。
「グローバルサウス」と呼ばれる新興国・途上国では、工業化の波が広がっている。本来なら歓迎すべき動きだが、西側の一部では異なる見方も出ている。それが、いわゆる「中国圧迫論」だ。中国がグローバルサウス諸国の発展余地を奪い、これらの国々の工業化を妨げているという主張である。
しかし実際のデータを見ると、これらの国々の製造業は縮小するどころか、むしろ拡大している。貿易データを見ると、サプライチェーンの構造はさらに明確になる。ASEANは近年、中国にとって最大の貿易相手としての地位を維持している。直近5年間では、中間財が双方の貿易額の6割以上を占めている。
「中国が中間財を供給し、ASEANで組み立て、世界市場で販売する」という分業構造が形成されている。ベトナムの縫製工場が浙江省(Zhejiang)から生地を調達し、カンボジアでは義烏市(Yiwu)から供給されたファスナーを使用するといった形だ。
こうした国々は、産業チェーンをゼロから構築し、数十年をかけて基盤を整える必要がなく、中国のサプライチェーンと接続することで、生産や受注を早期に始めることができる。一部の海外メディアが問題視する中国の生産能力も、こうした国際分業を支える重要な一角を占めている。
同様の動きはASEANだけでなく、アフリカでも見られる。2025年の中国からアフリカへの輸出額は2250億ドル(約34兆5645億円)に上り、このうち75%を機械設備や部品、化学原料などの中間財と資本財が占めた。
モロッコを例にすると、2025年には中国からニット・かぎ針編み生地や化学繊維の繊維材料を12億3000万ドル(約1889億5260万円)輸入する一方、衣料品の輸出額は39億ドル(約5991億1800万円)に達し、衣料品貿易では33億ドル(約5069億4600万円)の黒字となった。中国から原材料を調達し、モロッコ国内で加工して付加価値を高め、輸出につなげる構造となっている。国際通貨基金(IMF)の研究では、中国とアフリカの貿易がアフリカ経済の成長率を毎年1~2ポイント押し上げ、アフリカ域内での加工率も15%から45%へ上昇したとされている。
こうした国や地域が工業化の初期段階を比較的早く乗り越えられた背景には、中国が上流の産業を支えていることがある。中国との経済関係は、単なる製品の売買にとどまらず、資本や技術、雇用機会の提供にも広がっている。
カンボジアのシアヌークビル経済特区には200社を超える企業が進出し、現地で3万5000人の雇用を生み出した。「一帯一路(Belt and Road)」構想が始まってから10年余りで、世界では30か所を超える職業訓練施設「魯班工房(Luban Workshop)」が設けられ、100以上の専門課程で延べ16万人を超える学生を育成し、現地産業を支える技術人材の育成につなげてきた。
これを「圧迫」と見るのか、それとも「成長を後押しするもの」と見るのか。その評価をめぐっては見方が分かれている。中国国家発展改革委員会の李超報道官は最近の記者会見で、いわゆる「中国圧迫論」について、「ゼロサム思考に基づく中国への新たな攻撃と中傷だ」と批判した。その目的について、自らの覇権を守り、他国の正当な発展の権利を攻撃、さらには否定し、世界的な協力を損なうことにあるとの見方を示した。
海外の一部の研究者からも、「中国圧迫論」は実証的な経済分析ではなく、政治的な主張のための言説にすぎないとの指摘が出ている。米コロンビア大学(Columbia University)の歴史学者アダム・トゥーズ(Adam Tooze)氏も最近のコラムで、「中国圧迫論」は複雑な世界経済や各国の発展をめぐる問題の原因を単純に中国へ求め、中国の工業化を国際世論の中で否定的に描くものだとの見方を示した。
従来の西側主導のグローバル化は、発展途上国を産業チェーンの下流にとどめ、高付加価値分野を先進国が握る構造だった。一方、中国が進める協力は、技術や機会を共有し、相手国自身の産業発展を後押しするものだ。グローバルサウス諸国が従来の一方的な依存関係から脱すれば、これまでの構造も変化することになる。
工場では機械が動き続け、人手不足が問題となっている。その一方で、中国が他国の工業化を圧迫しているとの議論も続く。現実の産業や貿易の動きをどう評価するのかが問われている。(c)CNS-三里河中国経済観察/JCM/AFPBB News