【三里河中国経済観察】中国西部の風力・太陽光がAIの未来を照らす
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【9月23日 CNS】深度求索(DeepSeek)は6月、500億元(約1兆1428億円)の資金調達を終えると、その資金を内モンゴル自治区(Inner Mongolia Autonomous Region)のある都市に投じ、1ギガワット(GW)級の超大型AIデータセンターを建設する計画を打ち出した。
その都市がウランチャブ市(Ulanqab)だ。ウランチャブに進出するのはDeepSeekだけではない。華為技術(ファーウェイ、Huawei)、阿里巴巴集団(アリババグループ、Alibaba Group)、アップル(Apple)、快手(Kuaishou)、百度(Baidu)、字節跳動(バイトダンス、ByteDance)なども相次いで拠点を構えている。今年6月末までに89件のデータセンタープロジェクトが契約され、総投資額は5000億元(約11兆4285億円)を超えた。
ウランチャブはこれまで、良質なジャガイモの産地として知られてきた。今後は「計算力の都市」として、その名を知られることになりそうだ。米金融界も、米中のAI計算力競争におけるウランチャブの存在に注目している。ゴールドマン・サックス(Goldman Sachs)は中国のデータセンター業界に関する報告書で、「ウランチャブはアジア太平洋地域で最大規模かつ最も成長の速いAI計算力クラスターの一つに成長した」と指摘した。
2026年6月時点で、ウランチャブのデータセンターは稼働中と計画中を合わせた容量が約12.5ギガワットに達する。2025年の稼働規模と比べると、潜在的な拡張余地は10倍を超える。
2026年上半期、内モンゴル自治区全体の計算力は31万5000P(ペタフロップス)に達し、うちAI向けのインテリジェント計算力は29万7000Pとなった。いずれも中国国内で首位だ。ウランチャブと自治区首府のフフホトが、内モンゴルの「全国最大の計算力規模」を支えている。
なぜ内モンゴルが中国最大の計算力拠点となったのか。「AI計算力を突き詰めれば、最後に行き着くのは電力だ」。厦門大学(Xiamen University)中国エネルギー政策研究院の林伯強(Lin Baiqiang)院長は「三里河中国経済観察」の取材にこう語り、「電気がなければ、いくら半導体があっても役には立たない」と指摘した。
大規模言語モデルのパラメーター数が急速に増えるにつれ、AIデータセンターの大量の電力消費が一段と注目されるようになっている。AIとの一回のやり取りの裏側では、数千、数万台のサーバーが高速で稼働し、大量の電力を消費する。
ある試算によると、冷却や照明などの電力を除いても、1万枚のGPUを備えた大型AI計算センターでは、計算モジュールが1時間に消費する電力量が、約300世帯の1日分の電力消費量に相当するという。
内モンゴルの強みは、まさにこの「電力」にある。まず、エネルギー資源が豊富だ。内モンゴルの風力資源の技術的開発可能量は中国全体の約57%、太陽光資源は約21%を占める。自治区内の再生可能エネルギー設備容量は1億7400万キロワットに達している。
次に、電力価格が安い。北京市、上海市、広州市(Guangzhou)、深セン市(Shenzhen)では産業用電力料金が1キロワット時当たり約0.7元(約15円)なのに対し、フフホト市(Hohhot)のホリンゴル新区やウランチャブでは約半分の0.35元まで下がる。また、ウランチャブから北京には2本の光ファイバー回線が直結し、通信遅延は約4.2ミリ秒に抑えられている。
さらに、冷却に必要な電力も少なくて済む。ウランチャブは高原地帯に位置し、年間平均気温はわずか4.3度。年間約10か月にわたって外気を利用した自然冷却が可能で、データセンターの冷却に必要な電力を大幅に削減できる。
内モンゴルでは、中国初のデータセンタークラスター向け「ポイント・ツー・ポイント」再生可能エネルギー直接供給モデル事業もすでに稼働している。太陽光発電所でつくられた電力を専用送電線で計算力拠点へ直接供給する仕組みだ。
「計算力はエネルギーのある場所へ向かう」。内モンゴルは、まさにこの流れに乗っている。一方、米国では電力不足がAI産業の制約となりつつある。モルガン・スタンレー(Morgan Stanley)の最新報告書によると、2026~28年に米国のデータセンターが必要とする電力は68ギガワットに達する一方、既存の電力網で供給できるのは30ギガワットにとどまり、半分以上が不足する可能性があるという。
林氏は、米国の電力供給がAIの発展に追いつかない背景には、二つの問題があると分析する。一つは、データセンター建設に対する住民の反発だ。米世論調査会社ギャラップ(Gallup)によると、米国人の70%以上が居住地域の近くにAIデータセンターを建設することに反対している。
ブルームバーグ(Bloomberg News)によると、データセンターの建設によって地域住民の電気料金は平均約18%上昇している。データセンターが集中する地域では、電力の卸売価格が2020年と比べ267%上昇した。2026年第1四半期には、米国最大の電力市場を運営するPJMインターコネクションの卸売電力価格が前年同期比76%上昇し、新たなデータセンターの建設によって米国の消費者が負担した電気料金は137億ドル(約2兆1004億円)増えたという。
米誌「アトランティック(Atlantic)」は、データセンターへの反対は、現在の米国政治で数少ない超党派の共通認識になり得る問題だと指摘している。もう一つは、電力網の老朽化と分断だ。米国の電力網は東部、西部、テキサス州を中心とする三つの比較的独立した系統で構成され、地域をまたぐ送電網の整備は長年遅れてきた。電源開発や計画の権限も各州に分かれており、全国規模の戦略を進めにくい。
さらに、米国では過去約20年間、電力需要がほとんど増加しなかったため、それに合わせた電力網の拡張も進まず、インフラの老朽化が深刻になっている。新たな高圧送電線の建設には10年以上かかることも珍しくない。林氏は「米国には電力インフラの拡張を待っている時間がない」と指摘する。
どれほど高性能な半導体があっても、電力がなければ動かない。一方、中国には内モンゴル以外にも豊富なエネルギー資源を生かした計算力拠点がある。中国が進める国家プロジェクト「東数西算」は、西部のゴビ砂漠などに豊富に存在する風力や太陽光を、AI時代の計算力を支えるエネルギーへと転換しようとしている。
甘肃省(Gansu)慶陽市(Qingyang)のデータセンタークラスターでは、計算力が21万5000Pに達し、その99%をAI向け計算力が占め、中国全体の約10%に相当する。寧夏回族自治区(Ningxia Hui Autonomous Region)中衛市(Zhongwei)では、中国初の大規模な「計算力・電力連携」型再生可能エネルギー直接供給プロジェクトが導入された。現在、中国西部のAI向け計算力は全国の32.6%を占めている。
こうして見ると、米中のAI計算力競争における次の主戦場は、シリコンバレーでも中関村でもなく、「電力」なのかもしれない。内モンゴルの草原、甘粛省の大地、寧夏のゴビ砂漠には、豊かな風と太陽がある。それらがAI時代の計算力を支える巨大な電力基盤となりつつある。(c)CNS-三里河中国経済観察/JCM/AFPBB News