【三里河中国経済観察】「中国のスマート製造」が変える日本のカメラ市場
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【9月22日 CNS】「発売5時間前から場所取り」「数百キロを車で走って買いに来る」「炎天下で行列」――。限定スニーカーを買い求める光景ではない。目当ては中国ブランドのカメラだ。
8月、東京・浅草寺周辺では、気温30度を超える暑さの中、多くの日本人客が長い列を作った。中国のカメラメーカー、インスタ360(Insta360)が日本初の店舗をオープンするのを待つためだ。列の中には、キャノン(Canon)やパナソニック(Panasonic)など日本メーカーのカメラを持った人の姿もあった。
日本で中国製カメラを求めて行列ができる光景は、7月にも東京・秋葉原で見られた。大疆創新科技(DJI)の「Osmo Pocket 4」が再入荷した際には、未明から折り畳み椅子を持参して並ぶ人も多く、待ち時間は最長で約9時間に及んだ。用意された450枚の入場券は、開店からわずか30分でなくなった。
新製品を求めて行列ができること自体は珍しくない。しかし、それが「カメラ王国」と呼ばれてきた日本で、中国ブランドのカメラを巡って起きている点は興味深い。
長年、キヤノンやソニー(Sony)、富士フイルム(FujiFilm)などの日本メーカーは、光学技術の蓄積や精密な製造技術、豊富な交換レンズ群を強みに、世界のプロ向けカメラ市場で大きなシェアを占め、映像業界をリードしてきた。かつて中国人観光客にとって、日本旅行で日系ブランドのカメラを購入することは定番の一つでもあった。
しかし今、その流れに変化が起きている。DJIやInsta360など中国ブランドの台頭に伴い、日本の映像機器市場にも大きな変化が生まれている。日本の調査会社BCNのデータによると、DJIの「Osmo Pocket 3」は2023年11月以降、日本のビデオカメラ市場で急速にシェアを拡大。2024年のシリーズ別販売台数では41.5%のシェアで首位となり、DJIもメーカー別販売台数で初の年間首位を獲得した。
中国ブランドは、なぜ日本のカメラ市場で存在感を高めているのか。一つは、消費者がカメラに求めるものの変化を捉えたことだ。従来型のカメラは高画質を実現できる一方、大型で操作が複雑なものも多く、プロや本格的な撮影に適している。これに対し、ショート動画やVlogが広く普及した現在、多くの消費者が求めているのは「最も本格的に撮れるカメラ」ではなく、「より手軽にきれいな映像を撮れる機器」だ。
市場データにも変化が表れている。2025年、世界のデジタルカメラ(アクションカメラや360度カメラなどの小型カメラを除く)の出荷台数は約944万台で、前年比11.2%増だった。一方、ハンドヘルド型スマートカメラの出荷台数は1665万台に達し、前年比83%増となった。成長率には6倍以上の差がある。
もう一つは、中国企業が充実した家電・電子機器のサプライチェーンを背景に、スマート技術やAIアルゴリズムを組み合わせ、この新しい市場で先行していることだ。ジンバルによる手ぶれ補正から360度撮影、AIを活用した自動追尾、自動構図、ワンタッチ編集まで、中国メーカーのスマートカメラは、かつて専門知識を必要とした動画撮影のハードルを下げ、世界で新たな需要を生み出している。
2025年には、DJIが世界のハンドヘルド型スマートカメラ市場で6割を超えるシェアを占めたほか、Insta360も小型・着脱式カメラの分野で高い競争力を維持した。中国製のアクションカメラは、中国を訪れる外国人観光客にも人気の商品となりつつある。
中国ブランドは、新たな消費ニーズを捉え、技術革新を進めることで、従来とは異なる市場で急速に存在感を高めているといえる。こうした動きはカメラに限らない。バッテリーから自動車、家電、スマートフォンまで、中国ブランドはさまざまな分野で競争力を高め、世界の消費者に新たな選択肢を提供している。
2025年には、中国自動車メーカーの世界販売台数が初めて日本メーカーを上回った。スマートフォンや家電などでも中国ブランドの存在感が世界市場で高まっている。
日本の消費者が「中国製」を求めて列を作る――。10年前には想像しにくかった光景かもしれない。しかし、中国の製造業が単なる「ものづくり」から、技術やアイデアを生かした「スマート製造」へと進化する中、中国ブランドに対する世界の消費者の見方や選択にも変化が生まれている。
中国ブランドや中国製品への関心が世界で高まる今、日本で生まれた行列は、「中国のスマート製造」に対する新たな期待を映し出しているともいえそうだ。(c)CNS-三里河中国経済観察/JCM/AFPBB News