【9月21日 CNS】8月下旬、中国のSNSでは、北京市で開かれた二つのイベントが大きな話題となった。一つは歌手・那英(ナー・イン、Na Ying)のコンサートだ。6種類の価格帯のチケットは発売と同時に完売し、周辺の商業施設も営業時間を延長。多くの人が集まり、周辺の消費も活気づいた。

もう一つは北京・亦荘で開催された世界ロボット大会だ。5日間の会期中に延べ55万7000人が来場し、ロボットや関連するスマート製品の販売数は14万点を超えた。最先端技術の展示だけでなく、来場者が遊び、写真を撮り、ロボットと触れ合い、買い物も楽しめるイベントとなった。

一方は感情に訴え、もう一方は技術を見せる。一見すると無関係な二つのイベントだが、共通する成果があった。消費者を家から外へ呼び出し、楽しい体験に進んでお金を使ってもらうことだ。

ここ数年、中国の多くの都市が消費をめぐって同じ課題に向き合ってきた。どうすれば人びとが外出したくなるのか。そして、外出した人にどうすれば消費してもらえるのか。

北京は今回の「スーパー週末」で、一つの答えを示した。わざわざ足を運び、お金を払うだけの価値があるものを供給することだ。かつて消費といえば、商品を買って持ち帰ることが中心だった。しかし現在、人びとが買っているのは商品だけではない。その場でしか得られない空間や体験、感情も消費の対象となっている。那英のコンサートで数万人が一緒に歌うことで得られるのは、青春時代の記憶だ。目の前でロボットが料理を作る姿を見ることは、好奇心を満たしてくれる。

こうした体験はオンラインでは十分に味わえず、宅配便で自宅に届けることもできない。実際に外へ出て、その場に足を運び、自ら体験する必要がある。2026年に発表された北京市党委員会・北京市政府の都市の質の高い発展に関する実施意見では、「文化、商業、観光、スポーツ、展示会のさらなる融合を進め、新たな消費シーンを創出する」としている。

文化、商業、観光、スポーツ、展示会。この五つをさまざまに組み合わせることで、多様な消費の場を生み出すことができる。北京にはもともと、数多くの史跡や博物館・文化施設がある。年間約6万公演を支える「演芸の都」としての基盤に加え、巨大なハイテク産業も抱えている。

さらに北京は、新たな消費業態・モデル・シーンを育成する中国の試行都市として、資金投入や行政支援を進め、消費の場を広げてきた。頤和園での無形文化遺産をテーマにした手作り体験、首鋼園の没入型SF体験、亮馬河のナイトクルーズなどがその例だ。一つ一つのイベントが人を呼び込む入り口となり、その先に飲食や買い物、観光などの消費がつながる。こうした要素を組み合わせることで、人の流れを消費へと結びつけている。

こうした取り組みは北京だけではない。中国各地の都市が、それぞれの特色を生かして消費を活性化する方法を模索している。天津市(Tianjin)では、「笑いの街」として知られる地域性を生かし、伝統話芸の相声、洋館建築、海河沿岸の景観を組み合わせている。没入型の公演や夜市、各地を巡ってスタンプを集める企画などを通じ、若者の消費スタイルを取り込んでいる。

西安市(Xi'an)では、千年の歴史を持つ文化資源を、実際に体験し消費できる「都市の物語」へと転換。「一つの宴を楽しむために、一つの街を訪れる」と思わせるような観光体験を生み出している。

蘇州市(Suzhou)では豊かな文化資源を生かし、「映画+無形文化遺産」を組み合わせた取り組みを展開。映画やドラマなどのコンテンツを軸に、映画館や街並み、伝統工芸の工房などを結び、体験学習や観光、消費へとつなげている。

こうした都市に共通するのは、従来型のショッピングセンターや店舗での消費だけに頼らず、産業、文化、自然など地域固有の資源を生かし、その街でしか体験できない場をつくっていることだ。「わざわざ訪れる価値のある体験」によって、人びとの消費意欲を引き出している。

もちろん、都市の消費活力が一つの週末や数回のイベントだけで生まれるわけではない。それでも北京の今回の「スーパー週末」は、一つのことを示している。供給する側が、人びとが本当に求めるものを継続的に生み出せば、消費者は最も直接的で、最も熱のこもった形で応えてくれる。(c)CNS-三里河中国経済観察/JCM/AFPBB News