【9月18日 CNS】口座に住宅積立金がたまっていても、必要な時に引き出せない――。これまで多くの人が抱えてきたこうした問題が、新制度によって改善されることになった。10兆元(約228兆6970億円)を超える積立金の活用を促す。

中国国務院はこのほど、改正した「住宅積立金管理条例」を公布した。9月20日から施行する。今回の改正は全20条で、積立金の引き出し・利用範囲の拡大、管理・サービスの効率化、リスク管理の強化、制度の対象拡大など、20年以上運用されてきた制度を幅広く見直した。

データによると、2024年末時点で中国全土の住宅積立金の残高は10兆9300億元(約249兆9658億円)に達している。一方、積み立てた資金を必要な住宅関連支出に十分活用できないケースもあり、制度の利便性向上が課題となっていた。

今回の改正で大きく変わるのが、積立金を引き出せる用途だ。これまでは住宅購入や住宅ローン返済、退職などを中心とする6つのケースに限られていた。しかし、住宅をめぐる需要が「住宅を持つこと」から「より良い住環境を確保すること」へ変化する中、リフォームや管理費なども対象に加えた。

引き出しが認められるケースは6種類から9種類に拡大され、自宅のリフォーム、自宅の管理費の支払い、国務院が認めるその他の住宅関連消費が新たに加わった。

賃貸住宅についても条件が緩和された。従来は家賃が世帯の給与収入に占める割合について一定の条件が設けられていたが、今回の改正でこの制限を撤廃した。これにより、住宅積立金は賃貸、住宅購入、住宅ローン返済、リフォーム、管理費など、住宅にかかわる幅広い支出に利用できるようになる。

制度を利用できる人の範囲も広がる。中国では、フードデリバリーの配達員や配車サービスのドライバー、ネット配信者など、企業と一般的な雇用契約を結ばない「柔軟就業者」が増えている。これまで住宅積立金制度は主に企業や団体に勤務する従業員を対象とし、柔軟就業者が加入できる地域は一部の試行都市に限られていた。

改正条例では、個人事業主やパートタイム労働者、その他の柔軟就業者も任意で住宅積立金に加入し、規定に基づく支援を受けられることを明確にした。フードデリバリーの配達員や配車サービスのドライバー、フリーランスのデザイナーなども、自ら加入して住宅資金を積み立てられるようになる。

手続きの簡素化も進める。これまでは省をまたいで転職した場合、住宅積立金を新しい勤務地へ移す際に、証明書の取得や審査など複数の手続きが必要になるケースがあった。

新制度では引き出し手続きを簡素化するとともに、住宅積立金を利用した融資の審査期間を15日から10日に短縮する。地域をまたぐ積立金の移管や住宅ローンの手続きも効率化し、積立記録を全国で相互に確認・承認できる仕組みを整える。

例えば北京から深圳へ転職したり、出身地に戻って住宅を購入したりする場合でも、それまでの積立記録を引き継ぎやすくなる。都市間を移動して働く人にとって、制度の利便性が高まることになる。

今回の改正は、住宅をめぐるニーズや働き方の変化に対応するための制度見直しとなる。利用できる用途と対象者を広げ、手続きを簡素化することで、10兆元を超える住宅積立金を、住宅購入だけでなく賃貸やリフォーム、住宅維持などにも活用しやすくする狙いだ。(c)CNS-三里河中国経済観察/JCM/AFPBB News