【三里河中国経済観察】アジア太平洋、米国AIの「刈り取られる側」にならない
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【9月17日 CNS】8月、AI(人工知能)業界を驚かせる、威圧的ともいえる動きがあった。ロイター通信(Reuter)によると、米国務省は、AI分野で米国との協力を表明した35か国に対し、競合するAI枠組みへの参加を控えるよう求める書簡の草案を作成した。草案では、競合する枠組みに参加した場合、米国主導のAI協力体制との両立はできないとの考えが示されている。
言い換えれば、複数の選択肢があるはずの問題を、無理やり一択にしようとしている。これは単なる技術競争ではなく、AIを人質にした技術覇権だ。そのわずか数か月前にも、米国が突然規制を打ち出し、最先端AIモデル「Claude Fable 5」が海外の外国籍ユーザーへの提供を停止。一部の韓国企業はAIプロジェクトの変更を余儀なくされた。
この高くついた「デジタル主権」の教訓が示したことは一つだ。他者の基盤の上で動くAIは、いつ電源を切られてもおかしくない。
9月5日に広東省(Guangdong)深セン市(Shenzhen)で開かれたアジア太平洋メディアハイレベルフォーラムで、カナダのデイリー・スクラム・ニュース(Daily Scrum News)最高経営責任者(CEO)兼社長のドノバン・マーティン(Donovan Martin)氏は、中国メディア「三里河中国経済観察」の取材に対し、オープンソースでイノベーションを進める大規模言語モデル(LLM)に比べ、米国のLLMにはより強い保護主義的傾向がみられると指摘。そのビジネスモデルは、オープンソース型LLMから厳しい挑戦を受けていると述べた。
米国側の「商売のやり方」は目新しいものではない。まず無料または低価格で利用を促し、技術が中核業務に組み込まれて依存が進んだところで、値上げや供給停止、政治的条件の追加に動く。育ったところで次々と「刈り取る」という構図だ。
一方、米国が壁を築くのとは異なり、アジア太平洋経済協力(APEC)加盟国・地域の間でAI協力への需要が高まる中、中国は別の方向性を示している。「開放とウィンウィンを堅持し、標準の共同構築、ルールの共同協議、産業の共同発展を進め、技術のオープンソース化と開放的な協力を推進し、アジア太平洋地域のデジタル繁栄を促す。包摂と共有を堅持し、デジタル・AIインフラの整備を進め、データの安全で秩序ある流通と効率的な開発・利用を促し、アジア太平洋地域の人々により多くの恩恵をもたらす」
これは、計算資源が不足する発展途上国・地域、デジタルインフラが十分でない小規模経済、そして自国の将来を他国のサーバーに委ねたくないすべての国に向けられたメッセージだ。
理念以上に説得力を持つのが、実際の行動だ。
中国の深度求索(DeepSeek)やKimiなど主要な大規模言語モデルはオープンソース方式を採用しており、各国の開発者はモデルの重みを無料で入手し、ローカル環境への導入や独自の調整、二次開発を行うことができる。オープンソースの世界に「壁に囲まれた庭」はなく、「刈り取られる側」も存在しない。
中国はまた、AIの発展とガバナンスにおける多国間主義を掲げている。国連の枠組みの下でAI格差の解消やルールづくりを共同で進めることを提唱し、一国の国内法を他国より優先させることに反対している。中国が提唱した「『AI+』国際協力イニシアチブ」は、人々の暮らしと福祉に重点を置き、公共財としてのAI活用を世界に広げることを目指している。
技術を提供するだけでなく、その使い方も伝える。今年7月、中国は「世界人工知能協力機構」の上海設置を積極的に推進するとともに、今後5年間で発展途上国向けに5000人分のAI専門研修枠を提供すると発表した。また、東南アジア諸国連合(ASEAN)、アラブ連盟(Arab League)、アフリカ連合(AU)、ラテンアメリカ・カリブ諸国共同体(CELAC)、上海協力機構(SCO)、新興5か国(BRICS)などを対象に、国際AI応用協力センターを整備するとしている。
同じように数十か国を前にして、一方が送るのは「どちら側につくか」を迫る書簡であり、もう一方が差し出すのは「学ぶ機会」だ。
中国が進めるこの取り組みは、すでにアジア太平洋地域で具体的な形となっている。文遠知行(WeRide)の自動運転車はシンガポール市民の日常の移動を支え、商湯科技(SenseTime)の医療画像AIはインドネシアで不足する地域の放射線科医を補っている。香港の華陀外科が手がける内視鏡手術ロボットや、金安智能の四足歩行ロボットも、アジア太平洋地域の医療や特殊作業に新たな可能性を開いている。こうした事例をつなぎ合わせれば、「アジア太平洋共同体」の具体像が見えてくる。
パキスタンのBOL Newsのザヒル・シャー・シェラジ(Zahir Shah Sherazi)編集長は同フォーラムで「三里河」の取材に対し、中国はAI分野の資源が豊富で、製品の競争力も高いと述べた。米国の「Silicon Dragon」創業者レベッカ・ファニング(Rebecca Fannin)氏も、西側AIのクローズドなシステムと比べ、中国のオープンソース路線が世界でますます支持を集めていると指摘した。
AI時代を迎えたアジア太平洋地域の前には、シンプルな選択肢がある。「刈り取られる側」になるのか、それとも自ら育てる側になるのか。その答えはワシントンから届く書簡の中ではなく、アジア太平洋各国・地域自身の足元にある。壁を築く者は壁の中に閉じ込められ、橋を架ける者は未来へとつながる。AI技術を共同繁栄の礎とすることこそ、真の「より良い社会のためのAI」だ。(c)CNS-三里河中国経済観察/JCM/AFPBB News