【9月17日 東方新報】中国・山東省(Shangdong)の淄博陶磁琉璃博物館(Zibo Ceramic and Glass Museum)の4階には、決して枯れることのない「花園」がある。レンギョウやシャクヤク、菊などが咲き誇っているが、そのすべてが1400度の高温で作られたガラス細工だ。

この技法は「琉璃灯工」と呼ばれる。職人がバーナーでガラス棒を熱して溶かし、炎から取り出して形を整えていく。淄博市(Zibo)のガラス工芸職人、孫啓燁(Sun Qiye)さんによると、炎から取り出したガラスを成形できる時間はわずか5秒ほど。少しでも遅れると固まってしまう。形を調整するには再び炎に入れ、何度も加熱し直さなければならない。その過程でガラスが突然割れることもあり、それまでの作業が一瞬で無駄になることもある。

孫さんによると、特に難しいのがボタンと菊だ。ボタンは花びらが複雑で、少なくとも30回、多い場合には100回ほど炎に入れて成形する。菊はさらに難しく、200~300本もの細い花びらを一本ずつ成形してつなぎ合わせる。接合部分も繰り返し加熱するため、少しのミスで花全体が割れてしまう。

「3、4日かけて作っても、割れたらすべてやり直しです」孫さんの腕には、やけどの痕が残っている。「制作にどれだけ時間がかかるかに関係なく、30年、40年と続けてきたベテラン職人でも、古い傷の上に新しい傷が増えていきます。それでも私たちは淄博のガラス工芸が好きで、この土地を愛しています」と話す。

淄博のガラス工芸が生み出すのは、花だけではない。孫さんの代表作の一つが、ガラスで再現した「鳳冠」だ。モデルとなったのは、中国国家博物館(National Museum of China)が所蔵する明代の孝端皇后の「九龍九鳳冠」。2025年夏には、淄博のガラス工芸品とともに中国国家博物館で展示され、注目を集めた。

ガラス製の鳳冠は高さ50センチ、長さ65センチ、重さ4キロ。4800粒ものガラス製の真珠が使われ、最も小さいものはわずか3ミリしかない。孫さんによると、4人のチームが68日をかけ、7種類の新たな技法を考案して完成させた。

伝統的な鳳冠には金や銀、カワセミの羽を使った装飾などが施される。一方、ガラスは割れやすく、伸ばしたり曲げたりする加工にも限界があるため、大型作品の制作は非常に難しい。「この鳳冠を作る前は、私たちにも十分な経験がありませんでした。一つ一つの工程が挑戦でした。山を一つ越えたと思ったら、また次の山が現れるようなものでした」と孫さんは振り返る。それでも、難題を一つ克服するたびに技術も一歩向上していったという。

孫さんは「中国の美には、その根底に流れる精神があります」と語る。「ガラスの花を作る時も、宋代の生け花や唐代の花の表現を参考にします。ガラスを焼いて作る作品であっても、その精神を表現したい。私たち職人の努力を通じて、より多くの人に淄博のガラス工芸を知ってもらい、炎と光によって磨き上げられた東洋の工芸美を感じてもらいたいです」

淄博市伝統産業発展センターの孫耀祖(Sun Yaozu)主任によると、淄博のガラス工芸の歴史は漢代までさかのぼる。近年は産業規模も拡大しており、今年上半期のアートガラス業界の売上高は1億元(約23億7740万円)に迫り、前年同期比9%増となった。

千年以上にわたって窯の火を守り続けてきた淄博では今、伝統の「手仕事」を新たなビジネスへ、「継承」を産業の成長へとつなげる取り組みが進んでいる。(c)東方新報/AFPBB News