【9月16日 CNS】2026年の中国資本市場で最も注目を集めている話題の一つが、メモリー半導体大手の長鑫科技(CXMT)による科創板(上海証券取引所の新興企業向け市場)への上場だ。

同社の時価総額は最近、4兆元(約95兆1040億円)を突破した。安徽省(Anhui)合肥市(Hefei)と同市傘下の区などの国有資本が直接・間接に保有する株式の時価は、合計で1兆元(約23兆7760億円)を超える。合肥市の2025年の財政収入は977億元(約2兆3229億円)にすぎず、国有資本が保有する株式の含み益は、その約10倍に相当する規模となった。

最近では、人型ロボットなどを手がける宇樹科技(Unitree Robotics)が公開した目論見書でも、北京市、深セン市(Shenzhen)、上海市など各地の国有資本が株主として名を連ねた。

こうした動きを背景に、株式保有や投資収益を地方財政に生かす「エクイティー財政(股権財政)」が、学術的な概念から各地が実践を目指すモデルへと急速に変わりつつある。

「2025中国M&A市場年次報告」によると、2025年は地方政府系の国有資本によるM&Aが活発化し、国有資本が上場企業を買収した事例は年間40件、取引総額は545億7400万元(約1兆2975億円)に達した。

地方政府系資本が相次いで株式投資に乗り出す背景には、土地売却収入の減少に伴う財政への危機感があるとの見方もある。公開資料によると、中国全国の国有地使用権譲渡収入は2021年の8兆7100億元(約207兆889億円)から2025年には4兆1500億元(約98兆6704億円)まで減少した。地方財政では収支に余裕のない状態が常態化している。

こうした中、合肥市の成功は一つの事例を超える意味を持つようになった。地方政府が「土地の経営者」から「産業の株主」へ転換し、投資先企業からの配当や株式売却などを財源に生かす「エクイティー財政」に大きな期待が寄せられている。

しかし、すべての地方が「合肥モデル」を再現できるわけではない。合肥市の国有資本による投資は、10年以上にわたる経験の蓄積と、成長分野を見極める専門性の上に成り立っている。ディスプレー大手の京東方科技集団(BOE)から電気自動車(EV)の上海蔚来汽車(NIO)、そして長鑫科技まで、合肥市は中核企業を誘致し、関連企業を集積させ、産業クラスターを形成するという一貫した産業政策を進めてきた。

ところが、各地が合肥モデルを模倣する際には、「投資」だけをまねし、その前提となる「調査・研究」が十分に行われていないケースも少なくない。専門家は、「合肥モデル」で本当に学ぶべきなのは巨額の投資や含み益ではなく、地域の実情に合わせ、専門的かつ慎重に長期的な視点で判断する仕組みと制度だと指摘する。

失敗例もある。中国共産党中央規律検査委員会は今年4月、江西省(Jiangxi)新余市(Xinyu)の国有資本によるM&Aの失敗事例を公表した。同市は企業上場を増やす計画を進めるため、わずか3か月余りで10億元(約237億7600万円)以上を投じ、奇信股份の経営権を取得した。しかし買収後、同社が8年間にわたって組織的な粉飾決算を行っていたことが判明した。

買収の問題が表面化するのを避けようと、新余市側はその後も同社に繰り返し資金を貸し付けたが、2023年7月に同社は最終的に上場廃止となった。資金回収などを進めたものの、市側には大きな損失が残った。

江西省宜春市(Yichun)や広西チワン族自治区(Guangxi Zhuang Autonomous Region)南寧市(Nanning)によるEVメーカー、哪吒汽車(Neta)への投資も別の典型例とされる。地域の産業基盤との整合性を十分に考えず、成長分野を追いかけたケースだ。

中国中央電視台(CCTV)の番組「焦点訪談」によると、EVブームの中、宜春市は約20億元を出資し、さらに工場建設や賃料、販売補助などでも支援した。南寧市も「市場型ファンド」を通じ、国有企業の借り入れや債券発行などで24億元を投入した。

しかし、哪吒汽車は生産能力を急速に拡大した後、累計183億元(約4351億80万円)の巨額赤字を抱えて経営破綻し、再建手続きに入った。両市が投じた巨額の公的資金の回収は難しくなっている。

このほか、江蘇省(Jiangsu)蘇州市(Suzhou)呉中区の政府系資本が経営権を取得した環境関連企業、中晟高科(Jiangsu Gaoke Petrochemical)の経営権を取得した後、同社は3年連続で赤字となった。山東高速による東興証券への9年間の投資でも、6億9000万元(約164億544万円)の減損処理が行われた。

成功すれば「合肥モデル」、失敗すれば「授業料を払った」で済ませるわけにはいかない。地方財政にそれほどの余裕はない。2026年6月、中国国務院弁公庁は「監督管理の強化、リスク防止、私募投資基金の質の高い発展促進に関する指導意見」を公表し、地方政府系資本による投資の拡大に一定の歯止めをかけた。

具体的には、政府系投資ファンドの新設を厳しく管理し、県・区レベルでは原則として新設を認めないほか、形式上は出資でも実態は融資となるような運用を厳しく禁止。出資主体や商品の種類などに応じて、それぞれに適した監督管理を行う方針を示した。

この政策が地方政府系投資に与える影響は大きい。近年の「投資を通じた企業誘致」では、ファンド運営や投資案件を見極める能力、投資後の管理や資金回収の仕組みが十分でない地方まで、企業誘致や地域間競争を背景にファンド設立へ動くケースがみられたからだ。

名目上は「政府誘導基金」でも、実際には財政資金の出資に加え、地方政府系企業による資金調達などが複雑に組み合わされ、最終的に地方政府による支援が期待される構造となるケースもある。

地方政府系資本による投資では、ブームになれば一斉に参入し、潮目が変われば一斉に撤退するような動きを警戒する必要がある。成長分野としての人気だけに目を奪われ、企業の経営実態や地域の産業基盤との相性を無視してはならない。

すべての地方が合肥になれるわけではない。次の長鑫科技を見つけることを夢見る前に、まず考えるべきことがある。自らの財政には、投資の失敗という「授業料」を何度まで支払える余裕があるのか、ということだ。(c)CNS-三里河中国経済観察/JCM/AFPBB News