【9月14日 東方新報】一軒の中華料理店と、借金を抱えた料理人。異国の地で生計を立てるだけだった主人公は、戦火が迫る中で「人を救うべきか」という選択を迫られる。中国本土の2026年夏休み映画シーズンの興行収入はすでに112億元(約2663億3824万円)を突破した。その中で、映画『歓迎来龍餐館』は新たな視点から反戦を描き、台湾の観客からも注目を集めている。

『歓迎来龍餐館』は、社会問題を題材にした作品で知られる中国の文牧野(Wen Muye)監督が手がけ、沈騰(Shen Teng)と蔣奇明(Jiang Qiming)が主演する。8月11日の公開以来、口コミの広がりとともに興行収入を伸ばしている。

SNSでは、台湾の観客からも多くの感想が寄せられている。「冷酷な戦争の中で、活気に満ちた厨房とおいしそうな料理ほど人の心を癒やすものはない」「編集、演技、脚本、特殊効果のすべてがそろった、中国語圏の映画では珍しい完成度の高い作品。世界の映画市場でも十分に存在感を示せる」といった声が上がった。

台湾のメディア関係者、張鈞凱(Zhang Junkai)氏は、作品全体を通して中華料理が重要な役割を果たし、戦火と厨房の火を対比させることで、「民は食をもって天となす」という中国の伝統的な価値観を際立たせ、人びとが平和に共存する世界への願いを映し出していると指摘する。

台湾の複数のメディアは、同作品が個人の英雄をたたえるハリウッド映画とは異なる点にも注目している。「梅花新聞網(Meihua Media)」は、『歓迎来龍餐館』が中国本土の映像作品における「人を救う物語」の変化を示しており、普通の人びとを中心とした物語へと移行し、その感情の対象も民族的なアイデンティティーから普遍的な人道主義へと広がっていると報じた。同メディアは、映画の結末で描かれるのは敵を倒すことではなく、子どもが銃を手にしなくなることだと指摘する。これはある意味で「人を救う」という概念を捉え直したものだという。本当の勝利とは相手を打ち負かすことではなく、次の世代が戦争によって暴力の道具にされないようにすることだとしている。

作品の中には、多くの観客の印象に残ったせりふがある。米兵がイラクの子どもを「生まれながらのテロリストだ」と非難すると、主人公が「お前たちがいなければ、テロリストなんて生まれなかった」と言い返す場面だ。

長い間、戦争映画の物語はハリウッドが中心となって描いてきた。台湾の「風傳媒(The Storm Media)」は、『歓迎来龍餐館』の最大の特徴は「第三者の視点」から戦争を見ていることだと指摘する。米軍兵士でも現地の武装勢力でもなく、戦争のただ中にいながら、どちらにも属さない中国の普通の人びとの視点で描かれている。戦争映画は戦争そのものを描くだけではなく、誰を物語の主人公にするかという問題でもある。中国映画が中国人の視点から世界を描くようになったことで、従来とは異なる視点から戦争と平和を問いかけている。

台湾メディアの中には、同作品がイラク戦争を背景とし、深セン市(Shenzhen)出身の劉磊(Liu Lei)さんや帥学軍(Shuai Xuejun)さんらがバグダッドで中華料理店「中国龍」を開いた経験や、陳憲忠(Chen Xianzhong)さんが「宴龍湾」を経営した実話を取り入れており、現実に根差した作品になっていると紹介するところもある。映画の外でも、中国本土はイラクの戦後復興に関わってきた。中国企業はエネルギー、電力、交通など幅広いインフラ整備に参加しており、中国は早い時期から長期間にわたり、多くの分野でイラクの経済復興に関わってきた国の一つとなっている。

映画『給阿嬤的情書(英題:Dear You)』の「人として情と義を大切にしなければならない」というメッセージから、『歓迎来龍餐館』の「きちんと食事をする」まで、中国本土の映画が台湾海峡両岸の観客から共感を集めるケースが増えている。

一部の論評では、中国本土の作品が、中国文化に根差した素朴な価値観を通じ、戦争や難民、子どもの権利といった世界共通の問題を描くようになっていると指摘されている。一方、台湾では中国本土の作品を政治的な意図と結び付けて捉える見方もある。実際、台湾では中国本土の作品に関心を寄せる観客も少なくない。先ごろ『給阿嬤的情書』が桃園映画祭で上映された際には、チケットが発売開始からわずか5分で完売した。『歓迎来龍餐館』は台湾ではまだ正式公開されていないものの、中国本土などで一足先に鑑賞した台湾の観客もいる。

「平和は貴重なもの。みんなが心から大切にしなければならない」「平和があってこそ、安心して食事ができる」「普通の人びとが気にしているのは、政治よりも生活や幸せだ」SNSでは台湾の観客からこうした感想が相次ぎ、自ら作品を薦める投稿も見られる。こうした反響は、「歓迎来龍餐館」が台湾海峡を越えて人びとの心を動かしていることを物語っている。(c)東方新報/AFPBB News