北朝鮮のキム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党総書記と握手するトランプ米大統領(c)Reuters/news1
北朝鮮のキム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党総書記と握手するトランプ米大統領(c)Reuters/news1

【09月07日 KOREA WAVE】トランプ米大統領は、忘れた頃になると過去に北朝鮮のキム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党総書記と一緒に撮った写真を自身のSNSに掲載し、関心を集めてきた。先月15日(以下、現地時間)にも、2019年6月に板門店でキム総書記と並んで立って撮った写真を投稿し、個人的な親交を示した。

今回は少し違っていた。写真を公開した翌日、韓米合同演習「乙支フリーダム・シールド(UFS)」の縮小を電撃的に指示し、17日にはホワイトハウスの大統領執務室(オーバルオフィス)で記者団と会い、「キム・ジョンウンが応答した」として、「キム・ジョンウンは常に私を非常に尊重してくれた」と北朝鮮側との意思疎通があった事実を明らかにした。単に写真を掲載してキム総書記との親交を誇示することを超え、北朝鮮が最も敏感に反応してきた合同演習を縮小するという「友好的なシグナル」を送り、北朝鮮側との意思疎通がすでに進んでいるという点を強調したのだ。

トランプ大統領とキム総書記の間で意思疎通があったとの事実が伝えられると、18日、米経済紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は、トランプ大統領が11月に中国・深圳で開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議を含む次回のアジア歴訪期間中に、キム総書記と対面する案を非公開で協議したと報じた。続いてトランプ大統領は19日、米朝首脳会談が年内に開かれる可能性について問われ、再び「そうだ。そうなるだろう」と答えた。そして24日には、キム総書記と一緒に撮った写真3枚を再び掲載した。

トランプ大統領の対北朝鮮ジェスチャーが続くと、韓国政府も期待感を示した。統一省は、トランプ大統領による韓米合同演習縮小の措置を、朝鮮半島の平和体制構築に向けた「大胆な決断」だと評価し、北朝鮮が米朝対話の再開に応じることを期待すると明らかにした。外務省も「米朝対話再開の可能性を排除することはできない」と評価した。

しかし北朝鮮は、トランプ大統領との意思疎通があったとの事実を直ちに否定した。北朝鮮で対外問題を担当するキム・ヨジョン(金与正)朝鮮労働党中央委員会部長は19日夜遅くに発表した談話で、トランプ大統領がキム総書記と「意思疎通」したと主張したことについて、「私はまったく知らないことだ」とし、「おそらく、わが最高指導部の対外政策に関連して、私が知らない唯一の事案なのだろう」と述べた。遠回しにトランプ大統領の主張を「事実無根」だと反論した格好だ。

北朝鮮側の反応をめぐっては、トランプ大統領の「公の発言」が米朝間の非公式接触など水面下の意思疎通に基づくものではないことを示しているとの分析と、北朝鮮が米朝対話を念頭に置き、主導権を握るために示した反応だとの、相反する分析が出た。

米国と北朝鮮の間に水面下の接触はあったのだろうか。

2025年、トランプ大統領はキム総書記に何度も親書を届けようとしたものの、「ニューヨーク・チャンネル」の北朝鮮外交官らが受け取りを拒否したとされている。トランプ大統領の最近の発言を額面通りに受け取れば、北朝鮮側が立場を変えてトランプ大統領の親書を受け取り、それに対して肯定的に「応答」したとみることができる。

しかし、米朝間に直接的な意思疎通があったという点について、大多数の北朝鮮専門家の反応は懐疑的だ。北朝鮮が依然としてキム総書記とトランプ大統領との親交に言及していることを根拠に、トランプ大統領が特有の「誇張した話法」を用いたのだという分析だ。たとえトランプ大統領の親書が北朝鮮側に伝えられたとしても、それに対してキム総書記が親書で応じた可能性は低いとみられている。

何よりも、年内に米朝首脳会談が開かれる場合、有力視されているトランプ大統領のAPEC首脳会議歴訪期間中に、キム総書記が中国に出てくる可能性はまったくない。トランプ大統領がキム総書記との親交を活用して会談するためには、さまざまな政治的、外交的リスクを負いながら平壌を訪問するほかないとみられる。首脳会談の手続きや議題を分析するより先に、トランプ大統領の平壌行きが可能な状況なのかを検討しなければならないということだ。

2018年6月12日のトランプ大統領とキム総書記による首脳会談を通じ、北朝鮮と米国は、新たな朝米関係の樹立、朝鮮半島における恒久的かつ強固な平和体制の構築、朝鮮半島の完全な非核化などで合意した。過去2年余り、米国はこうした合意に基づき、「前提条件のない対話」に開かれているとの立場を表明してきた。

しかし北朝鮮はこれを拒否し、第3項の「完全な非核化」は議論の対象にはなり得ないとの立場を維持している。トランプ大統領が「希望」する米朝首脳会談を実現するためには、「完全な非核化」を放棄するか後回しにし、米朝関係の正常化と平和体制の構築を議題とすべきだというのが、北朝鮮の現在の立場だ。

こうした北朝鮮の立場を考慮したのか、トランプ大統領は先月19日、記者団から「あなたの目標は今も非核化なのか。1期目では成功できなかったが、今は成功できると思うか」と問われ、「その問題については話したくない」と即答を避けた。

米朝首脳会談のためにトランプ政権の朝鮮半島非核化政策が後退するのではないかとの懸念が出ると、米国務省当局者は先月26日、「北朝鮮の非核化」を追求する対北朝鮮政策に変化はないと答えた。

トランプ大統領が言及した米朝首脳会談が交渉の開始なのか、単に一度きりの会談なのかは、依然として曖昧だ。こうした米国の整理されていない対北朝鮮メッセージは、キム総書記がトランプ大統領との首脳会談に臨む上で障害となっている。北朝鮮の国防省や外務省でも、米朝首脳会談に対する反対は決して弱くないからだ。

米朝首脳会談に対するトランプ大統領の意志が「中間選挙向け」なのか、自身の政治的・外交的業績を残すためなのかは不確かだが、実務協議と議題合意を経る通常の方式による「年内の会談」は、事実上不可能な状況だとみられる。北朝鮮は、成果が不透明な米朝対話よりも、ロシア、中国との戦略的交流と協力に集中すると予想される。短期的に見れば、北朝鮮はロシアとつながる豆満江の自動車用橋梁の開通式を9月中に開催し、中国とつながる鴨緑江の新鴨緑江大橋の開通式を10月中に開く可能性が高い。

ただし、この二つの行事を終えた後も、トランプ大統領が北朝鮮との新たな関係を掲げて平壌行きを模索するのであれば、北朝鮮もこれを積極的に検討する可能性は残されている。韓国との事前協議なしに電撃的に韓米合同演習の縮小を指示したように、トランプ大統領は政権内部や議会の反対ムードの中で、「交渉ではなく会うこと」を目的とした平壌行きを推進できるのだろうか。決して容易な決断にはならないだろう。【チョン・チャンヒョン(平和経済研究所長)】

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