【9月9日 東方新報】「鳥たちは私たちの期待に応えてくれました。私たちもこの山を裏切ってはいません」。広西チワン族自治区(Guangxi Zhuang Autonomous Region)竜州県弄崗村の集落・隴亨屯で、森林保護員と野鳥観察ガイドを務める農兆強(Nong Zhaoqiang)さんは、幾重にも連なるカルストの山林を眺めながら、地元住民が取り組む山林保護についてこう語った。

隴亨屯は、広西弄崗国家級自然保護区(以下、弄崗保護区)に隣接している。かつて山林は村民の生活を支える「飯の種」で、多くの人が木を伐採したり、野生動物を捕獲したりして生計を立てていた。

2008年、広西大学(Guangxi University)の鳥類学教授、周放(Zhou Fang)氏率いる調査チームが弄崗保護区で、中国の研究者が独自に命名した新中国成立後初の鳥類の新種「弄崗穂鶥」を発見した。このニュースは野鳥観察愛好家の間で大きな話題となり、多くの専門家や写真愛好家が相次いで現地を訪れるようになった。

「周教授はかつて、『鳥をしっかり守り、村民が野鳥を見に来る人たちを案内すれば、収入を得られる』と話していました」。弄崗保護区管理センターの副主任、梁海峰(Liang Haifeng)氏によると、この言葉が村民の従来の考え方を変え、隴亨屯の人びとの暮らしを大きく変えるきっかけになったという。

農偉宏(Nong Weihong)さんと盧栄(Lu Rong)さんは、当時調査チームを案内した村民で、村で最初に野鳥観察を収入につなげた人たちでもある。山林を熟知している強みを生かし、野鳥が集まる場所や観察ポイントを整備し、ミールワームを餌として置いて鳥を呼び寄せ、調査や撮影に訪れるグループを案内してサービス料を得るようになった。

2013年、農偉宏さんは柳州野鳥観察協会から10万元(約236万5360円)の支援を受け、自宅の平屋に上階を増築し、村で初めてとなる民宿「印支緑鵲客桟」を開業した。2016年には息子の農兆強さんが技術学校を卒業して故郷に戻り、民宿を運営する一方、研修を受けて野鳥観察ガイドとなった。正式に民宿を引き継いだ後は、「野鳥観察+」の新たなサービス開拓に取り組んだ。

「若者は、ただ道案内をして鳥を見せるだけではいけません」。農兆強さんは弄崗の山林や野鳥にまつわる話をショート動画に編集し、抖音(Douyin)や小紅書(Red)などのSNSに投稿。さらにオンラインコミュニティーをつくり、各地の野鳥愛好家に一人ひとりの希望に合わせた観察サービスを提供した。こうした新たな取り組みにより、民宿の年間収入は以前より2万~3万元(約47万3072〜70万9608円)増えた。

農兆強さんはその後、自ら森林保護員に応募し、民宿を経営しながら山林のパトロールにも取り組んでいる。長年山林に親しんできた経験から、鳴き声だけで120種以上の鳥を識別でき、鳥の鳴き声をまねて野鳥を呼び寄せることもできるという。

盧栄さんの息子、盧海恒(Lu Haiheng)さんも2015年に深セン市(Shenzhen)から故郷に戻り、古い家を改装して民宿「弄崗穂鶥客桟」を開いた。「開業最初の1か月だけで、北京市、上海市、広州市(Guangzhou)など各地からお客さんが訪れ、3万元余りの収入がありました」。現在、盧海恒さんの微信(ウィーチャット、WeChat)には1000人を超える野鳥愛好家が登録され、フランス、英国、パキスタンなど海外の愛好家も少なくない。

「以前は私も鳥を捕ったことがあります。でも今は鳥に愛着があります。鳥を捕っている人を見かければ、必ず止めます」。この仕事を始めて11年になる盧海恒さんは、故郷の変化を強く感じている。かつて鳥を捕って生計を立てていた村民たちは、今では自主的に野鳥保護のパトロール隊を結成し、密猟や違法捕獲を防いでいる。盧海恒さん自身も自然学習を手がける会社を設立し、野鳥観察や生態系について学ぶ活動を展開している。

こうした取り組みは個々の家庭から村全体へと広がった。近年では、野鳥観察ガイド、民宿や食事、送迎、特産品販売、撮影機材の運搬など、さまざまなサービスが次々と生まれている。隴亨屯を起点とする12の野鳥観察ルートは、周辺の10集落にまで広がっている。

竜州県当局の指導のもと、地元では過度な価格競争を避けるため統一料金を設定。政府も数千万元(数億円)を投じて野鳥観察拠点や農村インフラを整備したほか、野鳥を大切にし、保護するための村のルールも制定した。40人以上の村民が技能研修を受け、野鳥観察ガイドの専門資格を取得している。農兆強さんの高齢の祖母も、日常的に水場へ水を補充したり、餌となる虫をまいたりすることで収入を得ている。

8月の隴亨屯では、山間部にまだ夏の暑さが残っている。民宿では、遠方から訪れた観光客が子どもたちと昆虫や野鳥を観察・記録し、楽しそうな声が山林に響く。カルストの山々の麓では、人と自然がともに恩恵を受ける取り組みが今も続いている。

「以前、父親たちの世代は木を切り、鳥を捕って暮らしていました。今年8月には、環境汚染の防止や生態系保護、グリーン・低炭素発展などに関する法制度を体系化した『中華人民共和国生態環境法典』が施行されました。私たちが山や森林を守るための法的な支えもできました。鳥を守り、野鳥観察を生かして豊かな暮らしを目指せるようになり、ますますやる気が出ています」と農兆強さんは話した。(c)東方新報/AFPBB News