―5万人超のデータから、低栄養や栄養評価が十分に記録されていない患者において予後不良との関連が明らかに―



全国DPCデータベースを用い、ICUに入室した成人51,580例のGLIM栄養評価の記録状況を検討しました。分類可能なGLIM栄養状態が記録されていたのは27,613例(53.5%)でした。
分類可能な患者では、記録された低栄養は非低栄養と比べ、入院後30日以内の院内死亡、全入院期間の院内死亡、および生存退院者の在院日数延長と関連しました。
低栄養、非低栄養、未評価、記録なしの4分類を比較した追加解析では、未評価と記録なしも非低栄養より30日以内院内死亡が高く、評価・記録の実装上の課題が示されました。





【概要】
 三重大学および横浜市立大学などの研究グループは、全国規模のDiagnosis Procedure Combination(DPC)データベースを用いて、集中治療室(ICU)に入室した成人におけるGlobal Leadership Initiative on Malnutrition(GLIM)栄養評価の記録状況と臨床転帰との関連を検討しました。2024年6月~2025年9月の51,580例のうち、分類可能なGLIM栄養状態が記録されていたのは27,613例(53.5%)で、その10.2%が低栄養でした。分類可能な患者では、記録された低栄養は非低栄養と比べ、入院後30日以内の院内死亡(調整ハザード比1.23、95%信頼区間1.08~1.41)、全入院期間の院内死亡(調整オッズ比1.47、1.28~1.68)、および生存退院者の在院日数延長(平均差2.27日、1.44~3.10)と関連しました。未評価と記録なしも高い死亡と関連しましたが、観察研究であり因果関係は示せません。

【背景】
 重症患者では代謝亢進や筋異化により低栄養が生じやすく、死亡、入院長期化、機能回復不良との関連が知られています。GLIM基準は、体重減少、低BMI、筋肉量減少などの表現型基準と、食事摂取・吸収低下、疾患負荷・炎症などの病因基準を組み合わせて低栄養を診断する国際的な枠組みです。日本では2024年6月から急性期病院のDPC制度下でGLIM栄養評価が推奨されています。一方、ICUの日常診療で評価結果がどの程度記録され、分類可能であるか、また記録された栄養状態が転帰とどのように関連するかは十分に明らかではありませんでした。


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【研究内容】
 全国のDPCデータベースを用いた後ろ向きコホート研究として、2024年6月~2025年9月に入院し、入院後24時間以内にICUへ入室した18歳以上の患者を対象としました。最終解析対象は51,580例でした。DPCに記録された総合的なGLIM栄養状態を、①低栄養、②非低栄養、③未評価(総合判定が評価不能と記録)、④記録なし(総合判定および5つの構成項目のいずれも記録されていない)の4分類として扱いました。主要解析は分類可能な27,613例を対象に、低栄養と非低栄養の入院後30日以内の院内死亡を多変量Cox回帰で比較しました。副次評価項目は全入院期間の院内死亡と、生存退院者の在院日数でした。
 分類可能な患者のうち2,807例(10.2%)が低栄養でした。30日以内院内死亡は非低栄養群5.2%、低栄養群11.3%で、調整後も低栄養は高い死亡と関連しました(調整ハザード比1.23、95%信頼区間1.08~1.41)。全入院期間の院内死亡(調整オッズ比1.47、1.28~1.68)と、生存退院者の在院日数(平均2.27日延長、1.44~3.10)にも関連しました。全51,580例を4分類で比較した追加解析では、非低栄養を基準として、低栄養(調整ハザード比1.20)、未評価(1.48)、記録なし(1.20)は、いずれも30日以内院内死亡が高い結果でした。

【今後の展望】
 分類可能なGLIM栄養状態が記録されていたのは53.5%にとどまり、ICUでの評価・記録を支援する余地が示されました。今後は、標準化したベッドサイド評価とDPC記録を結び付け、患者の状態により評価できない場合と、施設での導入、診療体制、記録・提出過程による違いを区別する研究が必要です。本研究は日常診療で記録されたGLIM栄養状態の予後との関連を示したもので、標準化された方法に対する診断精度や因果関係を示すものではありません。

【用語解説】

GLIM基準:Global Leadership Initiative on Malnutritionが提唱した低栄養診断の国際的枠組み。少なくとも1つの表現型基準と1つの病因基準を組み合わせて判定します。
DPC:Diagnosis Procedure Combination。日本の急性期入院医療で用いられる診断群分類に基づく包括評価制度で、全国規模の診療情報が収集されます。
未評価/記録なし:本研究では、総合判定が評価不能と記録された状態を「未評価」、総合判定と5構成項目のいずれもDPCに記録されていない状態を「記録なし」としました。



【論文情報】
掲載誌:Clinical Nutrition
掲載日:2026/8/20
DOI:https://doi.org/10.1016/j.clnu.2026.106765
論文タイトル:Real-world implementation, documentation, and prognostic implications of routinely recorded nutritional assessment based on the Global Leadership Initiative on Malnutrition criteria in critically ill patients: A nationwide retrospective cohort study
著者:清水 昭雄(三重大学/横浜市立大学(大学院生)/神奈川県立保健福祉大学)、吉田 稔(横浜市立大学/国立病院機構本部)、遠又 靖丈(神奈川県立保健福祉大学)、百崎 良(三重大学)、清水 沙友里(横浜市立大学)






【謝辞】
 研究は、JSPS科研費23K16799、22K19669および日本栄養治療学会研究助成(2025-TL003)の支援を受けて実施しました。資金提供者は、研究デザイン、データ収集、解析、結果の解釈、原稿作成に関与していません。